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筒井康隆「美藝公」

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映画産業はわが国最大の産業であり、その頂点にたつスター第一人者が美藝公である。映画産業はなやかなりし頃の夢とロマンにみちた"大活動写真"を描く異色長篇
(「BOOK」データベースより)

日本のSF御三家といえば、星新一・小松左京・筒井康隆。
いやー読んだ読んだ。さくらの小学校~中学校時代はエスエフ全盛期でしたから(年がバレる)日本の御三家だけでなくアシモフやハインライン、クラークなどなど、本棚は宇宙と異世界とロボットに占領されておりました。
懐かしやあの時代。平成の今、どうしたエスエフ。どこにいったエスエフ。
 

かくいう私 さくらもエスエフからは遠く離れて、幾度かの引越しの度に、本棚のSF本がどんどん減っていきました。
今、自宅に残っている筒井康隆の書籍は、数えてみたら5冊のみ。そして残っているのもエスエフじゃないのばかり。
ちなみに題名を列挙すると『美藝公』『残像に口紅を』『富豪刑事』『パプリカ』『フェミニズム殺人事件』このうちSFのジャンルに入るのは『パプリカ』くらいですかね?
 

どうしたエスエフ~!どこにいったエスエフ~!
どこにいった、私の筒井康隆本~!!!
 

スペースと床の強度に負けて手放した本を惜しみ、思い返して唇を噛むのは本の虫の業なるかな。
 

さて、数多の引越しにも耐えた、さくらが愛してやまない再読ローテ書「美藝公」。

架空の日本というか、“もし第二次世界大戦後、映画が日本の基幹産業となっていたら?”というパラレルワールドの小説なので、これもSFと言っちゃあSFジャンルです。
しかしながら、その中に描かれている世界は、うっとりするほど優美で華やかな「キネマの時代」。

この小説はもう小説じゃありませんね。活字で構成された“映画産業という社会を舞台にした映画”です。
 

筒井康隆はこの本、書いていて心地よかったんだろうな~。「美藝公」の中では、筒井康隆は“映画産業の脚本第一人者”という役を演じています。もちろん筒井康隆という名前ではありませんが、主人公の『おれ』は、かつて役者を志していた筒井康隆と非常にダブる。
そしてヒーロー美藝公の100%なパーフェクトっぷり。あまりにもパーフェクトすぎてマネキンのよう。ブレーン達の揃いも揃った切れ者っぷり。
映画のように人工的。暗い観客席から見上げる、輝くスクリーンの世界のようです。
 

書物と同じくらいに古い映画も大好きなさくらとしては「美藝公」は、一冊で小説と映画の二種類を楽しめる、ひとつぶで二度おいしいグリコアーモンドキャラメル状態。
 

カメラの眼に映る 仮初めの恋にさえ
青春燃ゆる 生命は踊る キネマの天地♪

 

この小説がエスエフであろうとなかろうと、どっちで良いんです私は。
銀幕に映るローレンス・オリヴィエに恋焦がれる乙女のように、美藝公に胸を焦がすのです。ああ、美しき哉キネマの時代よ。

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