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筒井康隆「ベトナム観光公社」

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新婚旅行には誰もが土星へ行く時代、装甲遊覧車に乗ってベトナム観光公社主催の戦争大スペクタクルを見物に出かけた―現代社会と戦争を徹底的に戯画化する表題作ほか、名作の香り高い「火星のツァラトゥストラ」「トラブル」「最高級有機質肥料」「マグロマル」など初期傑作集。
(「BOOK」データベースより)

この「ベトナム観光公社」は、かつて直木賞候補になったことがあります。

散々な酷評を浴び、結局は受賞できなかったらしいですが、さもありなん。

大体ねえ、これを直木賞の候補に挙げた推薦委員ってどこのどいつよ。そいつの頭がおっかしーんじゃないの?

…と、申し上げるのは、なにも「ベトナム観光公社」が面白くないからというつもりは毛頭ありません。いやすっごい面白いよ。たまらなく面白いよ。

でも、あえて申し上げましょう。

この書籍は直木賞を獲ってはいけない。

いやそもそも、この書籍を、読んではいけない。

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上記の暴言は、なにも私個人の発言ではありません。

何よりもこの短編集の収録作品「最高級有機質肥料」の中で、作者本人が言ってます。

ここでお断わりしなくてはならないが、読者諸君の中で汚い話を聞くと気分の悪くなる人は、どうかここから先を読まないでいただきたい。とにかくこれは実際に起こった話なので、私は書かぬわけにはいかない。だから前もって諸君にそれをお断わりしておくのが、筆者のせめてもの良心である。

ほら、作者もこう言っている。

読めない本を直木賞の受賞本にする訳にもいかないでしょ?

納得いかない諸君のために「最高級有機質肥料」のご紹介。もうね、凄いよ、たまらないよ、きゃああああああああだよ。

「最高級有機質肥料」の主人公は、惑星ミトラヴァルナへの駐在員の任を命ぜられました。

この惑星ミトラヴァルナ、何故か地球からの大使が居付かない。地球人が快適に滞在できる惑星環境でもあり、植物から進化した原住民も知的かつ温厚、地球人に対しても友好的なのに。

だけどミトラヴァルナから帰還した前任者は、皆精神に異常をきたして還ってくる。しかも栄養失調。充分な食料があるというのに。何故?

謎と危険に満ちた惑星、ミトラヴァルナ。そこに到着した主人公を待っていたのは、原住民の大いなる歓迎でした。

歓迎パーティで提供される地球人向けのご馳走、大使宿舎には専任の従者とコック。下にも置かないもてなしぶり。

こんな快適な環境で、どうして前任者が居付かなかったんだろう?

その答えは、滞在二日後にわかりました。

目を輝かせながら大使館に訪問した、惑星ミトラヴァルナの首相たちの言葉によって。

…いいかい?この先を書いて、本当にいいかい?

後悔したって、知らないよ?

「大使、あなたの排泄物を頂戴しました。今日はそのお礼に伺ったのです」

惑星ミトラヴァルナの住人は、植物から進化した生物です。

彼等が栄養にしている食物は、地球人にとっては植物を育てる肥料にあたります。よって、地球人の排泄物は、彼等にとっては“最高級の有機質肥料”

主人公が惑星ミトラヴァルナに来てからトイレで排泄したブツ(大小問わず)、洟をかんだちり紙、ほじった鼻クソ、痰壷のタン(きゃあああ)を、上級官僚の役得として美味しく食した喜びを伝えに来たとのこと。

しかも現地の慣例として、食べたものが如何に美味であったのかを懇切丁寧に詳しく表現して会話をするのが、食事の提供者に対する礼儀だと。

つまり、つまりつまりつまり。

主人公の排泄物がどのような状態であったのか、どのように美味しく頂いたのかというミトラヴァルナの感想が、懇切丁寧に詳しく描写される訳なのです。

きゃ、きゃ、きゃあああああああああ。

その描写を延々と聞かされた主人公がたまらずにその場で嘔吐すると、ミトラヴァルナの首相や外務大臣、大蔵大臣と文部大臣が先を争って床に撒かれた吐瀉物をペロペロとゴクゴクと…きゃああああああああ。

…直木賞の選考委員は、正しかったと思わざるを得ません。

賞の品格が、とか、PTA的に、とか、そういう意味じゃないけど、この書籍は直木賞を獲ってはいけない。

いやそもそも、この書籍を、読んではいけない。

ダチョウ倶楽部の上島が「押すなよ!絶対に押すなよ!」と言うように、私も言ってみようかな。

「読むなよ!絶対に読むなよ!」

きゃああああああああになったって、知らないよ?

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