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浅田次郎「天切り松闇がたり〈第2巻〉残侠」

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ある日、目細の安吉一家に客分として現れた、時代がかった老侠客。その名も山本政五郎―すなわち幕末から生き延びた、清水の次郎長の子分・小政だというのだが…。表題作「残侠」など、天下の夜盗「天切り松」が六尺四方にしか聞こえぬ闇がたりの声音で物語る、義賊一家の縦横無尽の大活躍八編。粋でいなせな怪盗たちが大正モダンの大東京を駆け抜ける、感動の傑作シリーズ第二弾。
(「BOOK」データベースより)

前回の「天切り松闇がたり〈第1巻〉闇の花道」に続き、今回もまたまた天切り松。

第二弾も相変わらず、粋でいなせでドキドキワクワクですが、本日の記事では天切り松シリーズに出てくる実在の人物について言及をば。

いや別に、第二弾の「残侠」が面白くないからって訳じゃないよ。いやたまらんよ。安吉親分が燕尾服に真っ白い絹のマフラーをなびかせて、ダンスホールでワルツを踊る様なんて、世のダンディ好き女子はこぞってメロメロ。

松蔵の兄貴分の“黄不動の栄治”を中心とした「第六夜 黄不動見参」ときたら、一話分読むだけで妊娠しそうな勢いだ。せっかくなのでちょっと、天切り松が栄治兄ィのありし日の姿を語る台詞でご想像頂きましょうか。

女なんて不定なもの、色恋沙汰なんてまっぴらごめんこうむりやすと、ダグラス・フェアバンクスそこのけのツラに書えてあるんだから、女にとっちゃそういう男はたまらねえ。しかもその正体は、週にいっぺん州崎女郎の五人ころがし極楽往生だってんだから、六尺の体から言わでもたちのぼる男の色気は並じゃあねえ。田舎からぽっと出の、十九はたちの女中ならば、あらいい男と見とれるぐれえだろうが、女ざかりの奥方にとっちゃまるで闇討ちにでも出食わしたようなもんさ。さあて——

黄不動~っ!!闇討ちして~っ!!!

ハアハア。話を戻して、天切り松の人物紹介。

天切り松シリーズはフィクションですが、結構な頻度で明治~大正~昭和初期に実在した人物が登場してまいります。

この本の中で言えば、例えば「第一夜 残侠」に登場する清水の小政。あの、清水の次郎長の子分ね。あーもしかすると清水の次郎長自体を知らない人も多いのかしら。森の石松って言っても、ガッツ石松になっちゃうかしら。

安吉一家の面々と親しいお付き合いをしている準レギュラーの“永井先生”は、永井荷風のことです。

「闇の花道」の中で、おこん姐さんが最期を看取るのは山県元帥(!)だったり、天切り松シリーズ全体では、他にも伊藤博文やら森鴎外やら竹久夢二やらの有名人が安吉一家に関わってくるのですが…今日どうしても話しておきたいのは、安吉一家の大親分、仕立屋銀次についてでございます。

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仕立屋銀次って人はですね。明治時代に名を馳せたスリの大親分の通り名です。元々和服の仕立屋職人だったのが、まあ色々あって盗人稼業にリクルート。

「箱師」という、列車内でのスリが主な稼業で、手下を何百人も従えて巨大な犯罪組織を築く、日本のアル・カポネみたいな人。

松蔵が世話になっている“目細の安”こと安吉親分は、もともとは仕立屋銀次の子分にあたります。

実際にも仕立屋銀次さん、えらいこと格好良いお方だったらしいですわ。男気があって、お洒落で、腕も達者ならば口も達者。さすが目細の安が親と仰ぐ人!

で、この本「残侠」では、残念ながら銀次さん網走監獄に入っておられます。その経緯と、監獄での銀次については、第一弾「闇の花道」と第三弾「初湯千両」に詳しいところですので、それぞれの本をお読みになってください。

ではどうして、仕立屋銀次ネタが登場しない第二弾「残侠」にて、わざわざ銀次さんのことをお話するのかというと…

聞いてよーーー!こないだ桃鉄やったら、スリの銀次に4000億円も掏られたのーーー!

桃太郎電鉄というTVゲームをやったことがある人ならば、突然あらわれて財布の金を盗っていく“スリの銀次”を当然ご存知でしょう。

あの“スリの銀次”は、仕立屋銀次がモデルなんですよ。

財布に金が貯まったころに突然やってくる銀次!盗られた現金、およそ4000億円!

どうして財布に4000億円も入っているんだという疑問はあれど、銀次の鮮やかな掏摸の技で、さくら社長の財布はスッカラカン。

銀次、恨むわ~。天切り松も安吉一家も愛してやまないけれど、仕立屋銀次親分だけは、今だけは、愛せない私です。ああ4000億円…。

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