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柳原慧「パーフェクト・プラン」

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代理母で生計を立てている小田桐良江は、かつて出産した子供、三輪俊成が母親・咲子に虐待されていることを知り、発作的に俊成を三輪家から連れ出してしまう。そのことを知ったかつての愛人・田代幸司と兄貴分でアングラ・カジノの店長・赤星サトルは張龍生に事態の収拾を委ねる。龍生は、悪夢のような仕手戦に破れた株屋。そんな龍生がとてつもない誘拐計画を思いつく。龍生の父のボケ老人・泰生も加わり、風変わりだが結束の固いチームが前代未聞の計画をスタートさせる。ネット・トレーディング、ハッカー、代理母、胎児細胞、瞬間像記憶…今日的アイテムをふんだんに盛り込んだノンストップ誘拐ミステリー。第2回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
(「BOOK」データベースより)

作者の柳原慧曰く『マンガみたいな小説、展開が早く、するする読めて、途中でやめられなくなるような』小説として書いたのが「パーフェクト・プラン」だそうです。
 

確かにね、帯の「身代金ゼロ! せしめるお金は5億円!」のキャッチコピーからギュっとつかんで、不妊治療、児童虐待、ネットトレード、株価操作、学習障害、プチ整形、ES細胞エトセトラエトセトラ。
どんがらがっしゃんとてんこ盛り。キャバ嬢の盛り髪よりもグリグリに盛ってます。
 

おかげで展開が早くスルスル読めて、ページを繰る手は止まらない。
難を言えばあまりにもてんこ盛りすぎて『あれれ一体何の話だったっけ?』と、読み手が小説のスピードに追いついていけなくなることくらいでしょうか。
あまりのスピード展開に、本の登場人物ですらついて行けない感がw
 

だって後半でようやく登場した鈴村馨(刑事)なんて、もし秦建日子の「アンフェア」だったらシリーズ10冊はいけるでしょ。
小説が進むにつれて崩れっぷりがはなはだしい三輪咲子(母)をとっても、貴志祐介の「黒い家」なら丸々ひとつの小説に。
 

…って、ほんのむしを書いている間にさくらは気付いた。
もしかして、色んな小説や時事問題や話題のネタを、ひとまとめにしてこねこね捏ねたら「パーフェクト・プラン」いっちょ出来上がり?
 

作者の柳原慧には失礼な物言いかもしれませんので、ひとつお断りをば。

音楽について、よく言われる話があります。
これから創られる音楽は、どんな曲であっても、過去の何らかのフレーズに似た曲になると。
ドレミファソラシドの音階しかないから、その組み合わせはもう出尽くしちゃったって事なのかしら。
 

ミステリについても然り。
よくミステリ界では『全てのトリックは出尽くした』と言われていますよね。
「モルグ街の殺人」からはじまり、脈々と伝わるミステリ・ロードで、ゴールドラッシュの黄金はもう掘り尽くしたと。
 

確かにね。ミステリを読んでいても『これって○○じゃん』ってトリックの話はよくあります。
『結局○○の焼き直しだよね』『○○の二番煎じ』とか、ミステリ通のアッタマイー方々はよく鼻でお笑いなさる。
 

でもさあ!ミステリって、トリックだけじゃないよね?
トリックも、キャラクターも、台詞も、場面も全部ひっくるめて小説だよね?
 

どんがらがっしゃんと皿の上にてんこ盛りの料理を並べられたら、固いこと言わずに料理を楽しめば良いのですよ。
ジェットコースターに乗ったら頭まっ白にして叫んだ方が気持ち良いでしょう?
「パーフェクト・プラン」も、頭まっ白にしてそのスピードを楽しむのが最適解、という気がします。
 

音楽も、ジェットコースターも、小説も、楽しんだもの勝ちよ。
こわばった脳みそのシワを伸ばして、わめいて、叫んで、人生を楽しむのだ。

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