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奥田英朗「空中ブランコ」

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伊良部総合病院地下の神経科には、跳べなくなったサーカスの空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のやくざなど、今日も悩める患者たちが訪れる。だが色白でデブの担当医・伊良部一郎には妙な性癖が…。この男、泣く子も黙るトンデモ精神科医か、はたまた病める者は癒やされる名医か!?直木賞受賞、絶好調の大人気シリーズ第2弾。
(「BOOK」データベースより)

第131回(平成16年度上半期) 直木賞受賞作
 

どんなビョーキもたちまち改善の伊良部総合病院神経科に「いらっしゃーい」
「イン・ザ・プール」に続く伊良部センセーシリーズの第二冊目です。
チビデブ不潔のキモオタ伊良部先生と、ミニスカナースが注射器持って、待ってます♪

有無を言わさず看護婦に注射を打たれる。くわえたばこのまま。
「痛たたた」思わず声をあげる。伊良部は興奮した面持ちで、針が皮膚を通る瞬間を凝視していた。
こいつ、本当に医者?愛子は口が利けないでいた。

「こいつ、本当に医者?」
「なんだこいつ。もしかして変態か—」
「東京の医療はこうなのか?」

伊良部病院の神経科に来診する患者さんは全員、同じような感想を抱きますが、大丈夫。
安心召されよ。何故か、治る。
安心して、伊良部先生の治療に身を委ね…られねーよなぁ。

表題作の「空中ブランコ」も、サーカスの空中ブランコにチャレンジする伊良部先生の姿が妙にキュート(キモカワ)だったりして好きな短編ですが、やはりこの本の中では一番笑えるのが「義父のヅラ」です。
題名からして…話の想像がちょっとつきそうでしょ?
そう、聡明なあなたならばお分かりのとおり「義父のヅラ」は
 

「ああっ!義父のヅラをひっぺがしたくってしょうがない!」
 

という禁断の誘惑に苦しむ娘婿が主人公です。
 

大手病院(伊良部総合病院とは別ね)に勤務し、院長の娘婿として将来が約束されている池山達郎さん。
彼は苦しんでいました。
パーティ会場で美しく陳列された瀟洒なシャンパングラスをなぎ倒したくなる衝動に。
非常ベルを押したくなる衝動に。
病棟の廊下を欽ちゃん走りで駆け抜けたくなる衝動に。
そして、一番蠱惑的で、一番ヤバい衝動に。

達郎は襲い来る衝動と戦っていた。油断すると壇上に行ってしまいそうだった。今度はシャンパングラスではない。義父の野村は、一目でわかるカツラを頭に載せていた。自分がそれを剥いでしまいそうなのだ。
野村を見かけるたびに、カツラを剥ぎたくなった。病院の廊下で、大学の教室で、妻の実家で。今夜はとくにひどかった。なぜなら、人目が多いほど衝動が強く出るからだ。

大学の同期である伊良部クンに相談したところ、破壊衝動を抑えるためには羽目を外して『不謹慎な』代償行為とする事を推奨されました。
で、その代償行為というのが。
東京は渋谷区にある金王神社前の歩道橋に書いてある交差点名『金王神社前交差点』
その一箇所に、点をイタズラ書きをすること。
 

『金王』の『王』に点をつけると…いや、こんなところで言えないわ、ワタシ!

笑いがこみ上げてきた。「ははははは」ガスを抜くように軽く笑ってみた。こんなに爽快なことは、いったいいつ以来だろう。
しばらく「金玉神社前」という文字を眺めていた。汗ばんだ肌に夜風が心地よかった。

で、まあ、金○神社はタチの悪いイタズラなんですぐに消されちゃうんですけどね。
でも東京には他にも、点いっこつけるだけでグッとくる地名は他にもありますし。
『王子税務署前』の『王』とかね。『大井一丁目』は『大』に棒線、『井』に点とかね。どこに追加するかは、ご想像なさって。
 

代償行為でガス抜きをした達郎さんではありますが、それでもやっぱり解消しきれない根源の問題がありまして。
禁煙パイポをくわえても愛煙家が満足できないのと同じ。
ブランド好きがパッチモンで満足できないのと同じ。
 

目には目を、歯には歯を。
ヅラにはやはり、ヅラでなくては。
 

彼等が如何にして『義父ヅラ剥ぎ取り作戦』に挑んだか。それは本を読んで頂くとして。
私としてはお義父様には、ハゲをカツラでごまかすんじゃなくて、是非ワタシが提唱するハギワラ理論をおすすめしたいという気持ちがありますわね。
 

さあ皆さんご一緒に!

「ハゲを隠すにはボウズです!」
「ハゲを隠すにはボウズです!」
「ハゲを隠すにはボウズです!」

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