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夢野久作「ドグラ・マグラ」

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「ドグラ・マグラ」は、昭和10年1500枚の書き下ろし作品として出版され、読者界の大きな話題を呼んだが、常人の頭では考えられぬ、余りに奇抜な内容のため、毀誉褒貶が相半ばし、今日にいたるも変わらない。
<これを書くために生きてきた>と著者みずから語り、10余年の歳月をかけた推敲によって完成された内容は、著者の思想、知識を集大成する。これを読む者は一度は精神に異常をきたすと伝えられる、一大奇書。
(角川文庫 巻末内容紹介より)

………ブウウ———ンンン———ンンンン………。
 

以前このブログで「家畜人ヤプー」をとりあげた後、読者Sさんより以下のご指摘を頂きました。
『ヤプーの記事を読んでから、どの本の話を読んでも頭に入らない。どうしてくれる』
 

た、確かに。絵本や恋愛小説も遡上に取り上げるブログにおいて、ヤプーを同列に並べるのは刺激的に過ぎたようです。
ごめんねSさん。
 

そこで、Sさんの脳から家畜人ヤプーを引き剥がすべく、ヤプーと並び称される昭和の奇書をご紹介しましょう。
ほら『毒をもって毒を制す』と言うでしょ?

どうしてわざわざ角川文庫の上下巻をリンクしたのかというと、表紙絵がグッといかしてるからです。
趣味です。

そして、なんというか「ドグラ・マグラ」のあらすじを紹介するのは非常に困難なのですが。
精神病院で目覚めた記憶喪失の青年が、自分が犯したという大量殺人事件の謎を解明する為に、彼を診察した教授の文献や映像資料を使って心理事件を行う、という、どうやら探偵小説、らしい。
作者の夢野久作が自分で<日本探偵小説界の最高峰>と言ってるし。
探偵小説、なのかな、うん。かなあ。
 

ちなみにですね。この本が出版された時の惹句では<日本一幻魔怪奇の本格探偵小説><日本探偵小説界の最高峰><幻怪、妖麗、グロテスク、エロティシズムの極>と、きらびやかに謳われています。
しかしこれって自費出版なんですよね。つまりこのアオり文句は、夢野久作ご本人が自作を賛美したもの。
アオるねえ!盛るねえ!キャバ嬢の盛り髪くらいグリングリンに盛ってるねえ久作くん!
 

そしてドグラ・マグラに関して有名なのが『これを読む者は一度は精神に異常をきたす』という噂ですが。
これに関しては、つい最近「ドグラ・マグラ」を読みかけて挫折した我が娘の感想に代表されることでしょう。
 

『これって、ワケわっかんねーっ!ってアッタマおかしくなっちゃったんじゃないの?』
 

娘が「ドグラ・マグラ」を読もうとしたきっかけのアニメ「文豪ストレイドックス」で夢野久作が登場する役柄は、相手を発狂させる超能力を持った敵役だそうですが。
一体どうやって発狂させるのかどうかが気になる私。キチガイ坊主がチャカポコチャカポコするのか…ちょっとおめでてーな。

……どうせキチガイの書いたものなら結局無意味なものにきまっている。「百科全書の丸暗記」と「カチューシャ可愛や」と「火星征伐」をゴッチャにした程度のシロモノに過ぎないのであろう。……現在の私が直面しているドグラ・マグラだけでもたいへんなのに、他人のドグラ・マグラまでも背負い込まされて、この上にヘンテコな気持ちにでもなっては大変だ……こんな話はもう、これっきり忘れてしまうに限る……

実際に『精神に異常をきたす』かどうかは、読了したことのあるワタクシが今現在、至極クリーンでクリアーな精神を持ってこのブログを綴っていることで誤りの実証となることでしょう。
え?至極クリーンでクリアーかって?そう思っているだけではないかって?いやそんな、全方向360度どこから見ても至極真っ当。自分で言うんだから間違いないって。何の覚えもないって。

思い出されないことを思い出させ、考えられないことを考えさせ、見えないものを見させようとしているではないか……消え失せた過去の記憶を求めさせ、自分でない自分の身の上を考えさせ、ありもしない事件の真相を無理やりに探させつつ、迷わせ、狂わせ、泣かせ、笑わせているではないか……。
キチガイ地獄以上のキチガイ地獄の中にノタ打ち廻らせているではないか……。

……けれども……。
……けれども……。

けれども、自らの精神が脆弱な土台に乗っている可能性など、見なければそれも真実。
不安な時はチャカポコチャカポコ。坊主と一緒にチャカポコすれば、めでたさに狂気も忘れる饗宴かな。
 

…ってことで、Sさん。
家畜人ヤプーの呪縛を引き剥がすことは叶いましたでしょうか?
あっちの沼から抜け出たら、今度はこっちの沼が待っているけど。
『毒をもって毒を制す』どちらにしても抜けられない、毒の沼。
 

………ブウウ———ンンン———ンンンン………。

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