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堂場瞬一「チームII」

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マラソン日本記録を持ち「陸上界の至宝」といわれる山城悟は、怪我と所属チームの解散危機で、引退の瀬戸際にいた。傲慢な山城に、かつて箱根駅伝を学連選抜チームとして共に走った仲間がサポートを申し出るが、彼は再起できるのか?熱き男たちの友情、葛藤、そして手に汗握る駅伝レースの行方は?スポーツ小説の金字塔『チーム』7年後の物語。
(「BOOK」データベースより)

これから「チームII」を読もうという人に予めお伝え申し上げます。
 

この「チームII」は、箱根駅伝学連選抜チームを描いた堂場瞬一「チーム」の3作目です。「Ⅱ(2)」ってあるけど2作目じゃないのよ。
1作目と3作目の間には、箱根ではなくマラソン大会を題材にした「ヒート」が存在します。
登場人物もストーリーも、シリーズ3作が密接に関係しているので、是非ぜひ「チーム」→「ヒート」→「チームII」の順番でお読みあそばせ。
 

ところでこの本を読んでいたら、家人に『まだ3月だよ?!』と言われました。
私の箱根駅伝好きは家族も認めるところですが、それにしたって“箱根モノ”で気持ちを盛り上げるにはまだ早すぎる。かといって、2018年の箱根駅伝を反芻するにも引っ張りすぎ。
 

「いや、違うし!これ箱根駅伝が題材じゃなくて、実業団駅伝だし!」
 

と、「チームII」の表紙(表紙写真のランナーは山城くんの所属する企業TAKITAの社名入りゼッケンをさりげなく付けてます)を見せると『コイツとうとう実業団駅伝にまで手を出しやがった…』と、さらに視線は絶対零度。
ちがうの~、ちがうのよ~。

さあ、俺には次がある。この記録を踏み台にして、世界に爪をひっかけてやる。
山城は係員に誘導されるまま、歩き出した。その瞬間、左膝に小さく鋭い痛みが走る。
今まで経験したことのない種類の痛みだった。

「チームII」は、前作「ヒート」のレース終了直後からはじまります。
東海道マラソンの無理な走りがたたって、膝を故障した天才ランナー・山城くん。
 

リハビリしてレースには復帰したものの、故障前の走りを取り戻すことが出来ない。「引退」という単語がちらりほらりと脳裏をよぎります。
 

そこで立ち上がったのが、箱根駅伝の学連選抜でチームを組んだ仲間たち。
キャプテンの浦くんは、自身が率いる箱根駅伝学生連合チームの指揮のかたわら、個人的に「チーム山城」を立ち上げて、山城くん復帰に向けたプロジェクトを開始します。
 

ああそういえば箱根駅伝って、「学連選抜」から「学生連合」に変わってたんですね。忘れてましたよ私。
 

かつては学連選抜が箱根で10位以内に入れば、翌年の予選会枠が1校増えるというので、来年に向けた自校のチャンスを拡大する目的も持てましたが、現在はオープン参加なので予選会枠の変動はなし。
また、個人で走った区間記録は公式に残っていたのが、現在は参考記録のみ。
学生連合で走る選手のモチベーションも、否応なしに下がるのは必定。
「チームII」では、浦さんが率いる学生連合チームの難しさについても描かれています。……ってやっぱり箱根駅伝も出てくるんじゃん、って?そうなのよ。だって外せないのよ。
 

「チーム山城」そして山城悟本人に話を戻しますが。
不調だと誰しも弱気になるんですかね?それとも年食うと丸くなるってこと?
“ビッグマウス山城”も然り。「チーム山城なんざ不要」と言いながらも、ついつい心が昔の仲間たちに寄り添ってしまいます。

「そういう緩いのは、好きじゃないんだ」
「緩くなかったぞ、あの学連選抜は」青木が反論する。「あの時お前、命を賭けなかったか?死んでもいいと思って走らなかったか?それは、自分のためじゃなかっただろう。誰かのために走る気持ち、間違いなくあったはずだぜ」
山城は腕組みをし、扉に背を預けた。何も言いたくない。それを認めると、今まで築き上げてきたものが、全て崩壊してしまうような気がしていた。

ここらへんの彼の心中は、まるで少女マンガの主人公が胸のトキメキにとまどうが如し。「私…どうして彼のことが気になってしまうの?あんなヤツ、なんとも思ってないはずなのに!」
おまえは女子高生かー。いや、中2かー。
 

だがしかし。私たちの注目は、山城くんじゃない。
はい、女子の皆さんお待たせしました!「彼」が、帰ってきたよー!

「チーム」で私、こんなことを言いました。

女子の皆さん、新たな押しメンの登場よ!

箱根の学連選抜で5区を快走した門脇くん。
飄々としながらもその実誰よりも心は熱い、銀河英雄伝説のオリビエ・ポプランを彷彿とさせるキャラクターです。
 

「ヒート」では彼、長野県の高校教諭という説明はさせていたものの、実際の登場はなりませんでした。
そっれっが!「チームII」後半からは再登場よ。しかも、良い役回りなんだなぁ~これが。
 

「山城?なんであんなヤツのために俺たちが動かなきゃいけないんだよ。大体アイツが他の人間に助けを求めるタマか?」なーんて言いながら、ページを繰る毎に増して行く包容力。
山城くんが絶不調に陥ったときの、蕎麦旅館のシーンが良いのよぉ~。くっそう門脇~。惚れてまうやろ~。

門脇が近づいて来る。
「たまげたね」と第一声を発した。「あいつにも、あんなに弱いところがあったのか」
「山城だって人間だよ」
「そうなるとだな……」門脇が顎を撫でた。「何とかしてやろうっていう気にもなるから不思議だ」
「強力してくれるのか?」
「傲慢なクソ野郎だったら、放っておくけどな」門脇がにやりと笑う。「今のあいつは弱い。そんな奴を放っておけないだろうが」

きゃーーーーー!門脇くーーーーーん!
 

「チーム」でオリビエ・門脇・ポプランの魅力にハマった貴女。
正直、数は少ないかもしれないが、貴女と私は心の友だ。
さあ一緒に「チームII」で門脇ポプランに胸キュンキュンときめかせて、熱く彼らのロードを見守ろうじゃないか。

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