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堂場瞬一「チーム」

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箱根駅伝出場を逃がした大学のなかから、予選で好タイムを出した選手が選ばれる混成チーム「学連選抜」。究極のチームスポーツといわれる駅伝で、いわば“敗者の寄せ集め”の選抜メンバーは、何のために襷をつなぐのか。東京~箱根間往復217.9kmの勝負の行方は―選手たちの葛藤と激走を描ききったスポーツ小説の金字塔。
(「BOOK」データベースより)

前回の「風が強く吹いている」は、ひとつのオンボロアパート住人による寄せ集めチームの箱根駅伝。
では、もうひとつの寄せ集めチームの話など。

とはいえ箱根駅伝が日本全国でどの程度認知されているのか、私にはイマイチ分からない。
どうやらテレビ放送はされているようですが、関東圏ほどには熱き情熱は抱かれていないかもしれないですねえ。
えっ、関東在住だからって、箱根駅伝に熱き情熱を抱いているのは さくら家くらいなもんだって?その可能性もアリか。
 

とりあえず、話を進めよう。
「チーム」に出てくる学連選抜というのは、箱根駅伝のシード外10校の枠を争う予選会で、出場できなかった大学の走者上位10名で作るオフィシャルな寄せ集めチームです。
 

この学連選抜、昔から不思議だったんですよ。
学連選抜に選ばれる人って、すっごい脚が速い人たちな訳でしょ?予選会の上位10名なんだから。
ひとつの大学に集まった10人よりも、個々の脚力は粒揃いだと思うんですよ。全部の区間に粒揃いの10人を配置したら、普通の出場校よりもブッちぎりで速く走れるんじゃないの?
だけど、何故か粒揃いの学連選抜は、本番ではいつも優勝争いにかむ事もなく、シード圏にも入れるかどうかという成績で終わっています。
不思議だよなあ。どうしてだろうなあ。『それが駅伝だ』って言っちゃあそうなのかもしれないけど、やっぱり分からん。
 

監督を含め彼らは、全員属している大学はバラバラ。これまで自校のチームで努力してきた団結もなく、陸上にかける思いもバラバラ。
その寄せ集めチームで、目指すは優勝。
言葉だけの目標じゃなくて、マジで学連選抜が箱根駅伝の優勝を目指す。
「風が強く吹いている」に負けず劣らずの、無謀な挑戦?ファンタジー?

もともと陸上は個人競技ですし、そもそも寄せ集めチームの学連選抜。そりゃ大会にかける温度差も選手ごとに異なりますよねえ。
特に天才の誉れ名高い山城くん。北島康介的ビッグマウスで、チョー気持いい…じゃなくって最初の内はチョーイライラさせます。

「別に、自分の区間だけちゃんと走ればいいだろう。他の連中も同じだよ。他人のことなんか気にしてたってしょうがない」
「それじゃ駅伝にならない」
「あのな、お前は精神的なものがどうこう言うけど、そんなの関係ないんだ。勝つとか言ってるのは勝手だけど、皆で仲良しクラブをやってたって意味ないんだぜ。簡単な話だよ。全員が区間賞を出せば勝てる」

前年の大ブレーキに泣いたチームリーダーの浦くん。委員長タイプの彼は、ビッグマウス山城やら飄々監督の吉池やらに挟まれて、チームをまとめるのに苦労します。
堂場瞬一のスポーツ物って、必ずひとりはワリ食う苦労人が出てくるよなあ。浦くんはきっと山羊座だな。
 

堂場スポーツ小説は、結構どのスポーツでも山城タイプ(ビッグマウス)浦タイプ(ワリ食う委員長)吉池タイプ(飄々おじさん)朝倉タイプ(子リス)など、お決まりのキャラクターが登場して、それはそれで心地よいお約束感が味わえるのですが…「チーム」はまた違うキャラ登場よ!女子の皆さん、新たな押しメンの登場よ!

「一人いますよ」
いきなり響いた第三者の声。吉池が顔を上げた。浦も振り返る。ドアが開き、門脇が監督室の中を覗きこんできた。二人の視線が同時に突き刺さってくるのを見て照れ臭そうな表情を浮かべ、飄々とした口調で申し出た。
「俺が走りましょうか?」

学連選抜の補欠だった門脇くん。
5区エントリー予定の選手が練習中に故障して、急遽エントリーされました。
 

彼が、良いのよぉ~(うっとり)
「どうせ補欠だから、箱根は思い出作りだね」なんて気のないそぶりしながら、何かとチームリーダーの浦くんをカバーする良いヤツ。
見た目チャラくて不真面目な感じなのに、実は心の中では誰よりも熱い思いを持っていて。軽さと情熱を併せ持つ、貴方ってポプランですか?銀英伝のオリビエ・ポプランですか?!
彼が5区を走るシーンが一番好きです。門脇くん快走よ。女子の皆さん、ここ要チェックよ。
 

まあそれ以外にもね。ビッグマウス山城の気持ちが変化した転機はどこか、とか。
本番当日に膝を痛めた浦の走りは、とか。
果たして学連選抜の優勝はなるか、とか。
寄せ集めチームは、ひとつのチームとしてまとまることができたのか、とか。
 

言いたいことはすごく沢山あるのだけど。
私はもう、二日間も箱根駅伝のことばっかり考えていたら、すっかり頭が正月気分になってしまって困ったもんです。鬼が笑うわ。
早く来い来いお正月。いいぞう、箱根駅伝。

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