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五十嵐貴久「年下の男の子」

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銘和乳業勤務のわたし(川村晶子)は37歳にしてマンションを購入。契約翌日、新製品の健康ドリンクの宣伝用フリーペーパーをめぐってトラブルが発生。価格欄が空白のまま刷り上がってしまったのだ。これは、徹夜で空白部分にシール貼りをするしかない。担当者のわたしは、ピーアール会社の23歳の契約社員・児島くんと夜を徹してのシール貼り作業を敢行。なぜか二人は話が合って…。
(「BOOK」データベースより)

「五十嵐貴久ってどんな本書いてるの?」と、どうか私に聞かないでください。
それは、私には答えられません。
 

殆どの小説家には、自分が得意とする一定のジャンルがあるかと思われます。
東野圭吾はミステリーとかね。浅田次郎は人情モノとかね。星新一はSFとかね。稀に別ジャンルの作品を出すにしても、コアとなるジャンルはそれぞれある、筈。
しかしながら。五十嵐貴久にはコアとなるジャンルが存在しない。
サイコホラー書いてみたり、青春モノ書いてみたり、時代小説書いてみたり、刑事モノ書いてみたり。節操ないっつっちゃ節操ないことこの上もない。またそれがそれぞれに面白いもんだから「五十嵐貴久はこれ!」と、ひとつのジャンルに決められないのです。困ったもんです。
 

で、その節操ない五十嵐クンが、恋愛モノにも手を出した。
これがまたオトナ女子心をきゅんきゅん言わせやがって…こんちくしょー!節操ないなぁ、五十嵐ぃ!(←八つ当たり)

ボタンの取れてるポケット/汚れて丸めたハンカチ/あいつはあいつは可愛い/年下の男の子♪
(Song by キャンディーズ)

読む度に上記の歌をつい口ずさんでしまう「年下の男の子」は、の主人公の晶子が37歳にして“おひとりさま向け”の新築マンションを購入するシーンからはじまります。
独身女30代後半が、マンションを購入する覚悟。いや覚悟というよりも、女がマンションを購入することによる対外的なイメージというのは、男性の場合とは大きく異なります。
率直に言えば『さらに縁遠くなる』というイメージですね。
これを男性に置き換えるならば、独身男性が親との二世帯住宅を建てちゃうイメージに通じますかね?こっちは『家も用意したから、あとは嫁が来るだけだ』という前向きな投資ですが。
それが嫁候補の女性を一歩も二歩も後ずさりさせる措置であることを、その男性のみ知らない。
 

さてさて。マンション買ってある種の覚悟を決めつつも、やっぱりそれはやべーなと揺れ動くのも乙女心。
そんな時に現れたのが、取引先の営業マンの児島くん。ピッカピッカの23歳。
筋肉質の山男、でもお顔はすっきりジャニーズ系、気配りもできて仕事は有能。女性をお洒落レストランにエスコートする技術も有。
時給換算の契約社員という不安定さはありますが、一般的に見て非常にお買い得物件であります。次男というのも釣り書き的には文句なしでしょう。
世の独身女性が鼻の穴広げて襲い掛かってきそうな有料物件の児島くん。
なぜか、なぜかなぜかなぜか、14歳年上の晶子さんに猛アピールをはじめます。

「だけど…やっぱり…その…」鼻の辺りをこすっていた彼が顔を上げた。「川村さん……オレじゃだめですか。やっぱ年下は対象外ですか」

「ひとつ歳上の女房は金のワラジを履いても探せ」とは言われますが、14歳上の女房は、ダイヤモンドのワラジでも履かなくちゃ駄目?

五十嵐貴久という作者名を知らずに「年下の男の子」を読んだとしたら、きっと私は、作者を女性だと信じて疑わなかったことでしょう。
四十路間近の女性の気持ちを、どこでどうやって作者の五十嵐さんは知ったのかしら?不思議~。
一番私が『あるある~』と思ったのは、晶子さんが児島くんと最初の一晩を過ごすシーン。

シャワーを浴びている間、わたしが考えていたのはひとつだけだった。
(どうするんだっけ)
キスも四年二ヶ月ぶりだが、それはエッチも同じだ。情けない話だけれど、四年のブランクがあると、いったいどういうふうにすればいいのか、もう全然覚えていないことに気付いた。
・・・(中略)・・・だいたい、シャワーを浴びてバスルームを出る時、下着はつけ直すべきなのか、それとも外しておいた方がいいのか。それさえ、わからなくなっていた。昔はどうしていただろう。

で、どうするのかと言うとですね。
晶子さんはシャワーの後、下着はもちろん洋服もストッキングも全てきちんと着直してからバスルームを出たのでした。
いや、笑っちゃったよ晶子さん。ストッキングまで履き直しちゃったんだよね。だってコンサバなワンピース着て生脚ってのも変だもんね。気持ちわかるけど笑っちゃったよ。
 

年下の彼からの猛プッシュに押されて始まった歳の差レンアイですが、晶子さんの『ずっと俺のターン!』はまだ続きます。
上司である部長からも、上品かつなかなか情熱的に結婚前提の交際を申し込まれたりして、女40手前にしてモテ期到来!
部長は将来の社長候補とも噂される逸材で、安定性としたら児島くんよりも遥かに点数が高い。しかもこちらもジェントルでイケメンダンディ。奥さんそっちのジャガイモも良いけどこっちの大根もお買い得だよ、の、午後4時からの八百屋のタイムセール状態。
お買い得物件2つに挟まれる晶子さんのリンダ困っちゃう的シチュエーションは、オトナ女子読者の妄想を、ああ刺激する。
 

ひととおり妄想劇場をお楽しみ頂いたところで、さて、晶子さんがジャガイモと大根の、どちらを選んだのかというと。
それは、実際に読んでお確かめください。
ああ、ちなみに「年下の男の子」シリーズはあと2冊あるからね。晶子さんがもし部長を選んでいたとしたら、シリーズ続編はあり得ないかと考えると…どっちを選んだのか?さあて、どっちでしょうねえ?

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