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メアリ・H・クラーク「誰かが見ている」

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二年半前に最愛の妻ニーナを殺されたスティーヴは、今また一人息子と恋人を誘拐された。犯人はフォクシーと名のる正体不明の男で、二人はニューヨーク・グランド・セントラル駅地下の一室に閉じ込められて爆死する運命にあった。爆弾セット時刻は故意か偶然か、ニーナ殺害犯の処刑時刻と一致している……。恐怖と悪夢の数日をスリリングに描いて近来出色の大型サスペンス。
(巻末内容紹介より)

「誰かが見ている」をネットで検索すると、宮西真冬作の「誰かが見ている」が真っ先に出てきてクラーク版が見つからないという昨今の書籍事情なり。

もし宮西真冬さんの小説をお探しで「ほんのむし」に飛んで来られた方がいらしたらごめんなさい。こっち、全然違うアメリカのサスペンス小説です。

当ブログではメアリ・H・クラーク作品を「子供たちはどこにいる」および「揺りかごが落ちる」と、今回の「誰かが見ている」で、これでクラーク主要三作品揃い踏みとなります。

世の中の評価では、これ以外のクラーク小説はワンパターンで読むに値しないというのが定説なようで。まあ、他の作品をどう評価するかというのは、読者それぞれの心のままにおまかせすれば宜しいですが、確かに、まあ、世間の評価は当たらずとも遠からじ。

逆に言えば、上記の三作品は間違いなく、すっげー面白い!ということではないでしょうか。

連続殺人鬼。誘拐。ターミナル駅に仕掛けられた爆弾。冤罪の死刑執行直前。脅迫。隠れ潜む浮浪者。母が殺害された瞬間を目撃した子供。心臓病の発作。盗まれた車。残された指輪。

ねっ?道具立てを並べてみれば、ワクワクドキドキてんこ盛りってのが納得できるでしょ?

「シャロン」ニールはかすれたぜいぜいいう息の合い間に一生懸命しゃべろうとした。その声はくぐもってしゃがれていた。
「なあに、ニール。ここにいるわよ」
「シャロン、あの男、ぼくたちを縛った悪者ね……」
「ええ、こわがらなくても大丈夫、ちゃんと守ってあげますからね」
「シャロン、あいつがママを殺した男だよ」

サスペンスフルな設定も勿論ですが、登場人物もTVメディア露出多数の雑誌編集長とコラムニストなど、ギョーカイちっくな華やかさがキラッキラしています。

対する犯人フォクシーも、類型的とも言えるほどに底辺層として描かれ、善と悪、光と闇がきっぱり二分。非常に映像的です。

そういえば他のクラーク作品「子供たちはどこにいる」「揺りかごが落ちる」では、犯人役の教授やら医者やらのアッパー層が、実は異常性格者!という内容でしたが、今回の犯人役フォクシーはちょっと違いますね。

貧乏な労働者階級(自動車修理工)が暇つぶしに女性を殺しまくるという、意外性がないというかそのまんまというか。フォクシーと同じ職業の方にははなはだ失礼な言い回しですね。クラークの描き方の問題です。何卒ご容赦のほどを。

シャロンはとても情愛のこまやかな女なのだ、とフォクシーは思った、だからたぶん坊主にもやさしくしようとしているだけなのだ。いますぐにでも坊主は片付けてしまって、彼女にはこのおれにあんなふうにやさしくする機会を与えたほうがいいのかもしれないな。シャロンがいろいろとやさしくしてくれるさまを思い浮かべて、彼の目の表情が変り、唇のあたりにかすかな微笑がただよった。期待に彼の全身が暖かくほてる。気がついてみると、シャロンはいま彼をじっと見つめ、少年を抱いている腕に力がこもった。あの腕をおれの身体にまわしてほしいのだ。

そんでまあ、ねえ。連続レイプ殺人犯フォクシーが、ほぼスティーブへのいやがらせを目的に、スティーブの息子ニールと恋人シャロンを誘拐いたしまして。

もちろんお金も欲しいので、身代金を要求。でも身代金を得ても、二人を無事に帰すつもりなんてさらっさらありません。

ニューヨーク中心地のグランド・セントラル地下室に二人を閉じ込めて、爆弾をしかけて二人もろとも駅全体をブッ飛ばす算段。えーなに爆弾ってそんなに簡単に作れるの。

自動車修理工って器用だね。そういえばウチの食洗機がこないだ故障したんですけど我が夫が内部を調べて自分で修理しちゃいまして。すげーなおい食洗機まで直すのか。我が夫だったらきっと爆弾作れるなレッツDIY。全然関係ない話ですねすみません。

身代金をまんまと奪い取られてからは、んもう怒涛の展開で話が進んでいきます。フォクシーからの連絡では、二人はニューヨーク“州”の主要交通拠点にて11時30分に爆死すると。

その連絡と前後するように、フォクシーの正体も判明します。でもどこにいるのか所在はわからない。

そしてシャロンとニールの居所!あまりにも広い広いニューヨーク州。どこから探せば良いのか、どこに手をつければ良いのか。

ストーリーはさらにジェットコースターのスピードで進み、フォクシーは一旦手にした身代金を失ってヤケっぱち。爆発前にシャロンを殺そうとグランド・セントラル駅に再び向かいます。

警察も主要交通拠点のひとつとして、グランド・セントラル駅を捜索。その中にはスティーブも。

地下室ではひとりの女性がフォクシーに刺され、そのおかげで息子ニールは地下室を脱出することが可能に。

でも、爆発まではあと3分!

 

ティーブの目は駅のなかをくまなく見渡す。拡声機はなりをひそめ、広い区域が静まりかえり、その押し殺した静寂が彼をあざけるかのようだ。時計。彼の目は案内所の頭上の時計を探す。情容赦なく針は動きつづける、11時12分…11時17分…11時24分…その針を押し戻したかった。すべてのプラットフォーム、すべての待合室、すべての小部屋を駆けまわりたかった。彼らの名前を叫びたかった、シャロン! ニール!
—(中略)—
拡声機がしゃべりだした。「十一時二十七分です。すべての捜査官はただちにいちばん近い出口に向かってください。即刻駅から退去。くり返します、即刻駅から退去」
「だめだ!」スティーブはヒューの肩を掴み、彼をくるりと振り向かせた。「だめだ!」
「ピータスンさん、分別を持ってください。爆弾が破裂したら、みんな殺られるかもしれないのです。たとえシャロンとニールがここにいても、助ける手だてはありません」

…で、結局最後はどうなったか、っていうのは、特にここでは明かしませんが。

クラークの小説だからラストはハッピーエンドでしょ、というのは誰もが予想する通りだと思いますので、ここで結末を書かなくても言わずもがなという所ですね。

ジェットコースターは、乗っている間にどんなにハラハラドキドキキャーキャーしても、最後には無事に停止するでしょ?

それと同じ。

サスペンスの女王クラークがご用意するジェットコースターも、乗っている間は、ハラハラ、ドキドキ、キャーキャーさせますよ。約束されたスリルを堪能したい方は、クラークでどうぞ存分にハラハラドキドキをお楽しみなさいませ!

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