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ドロシー・ギルマン「おばちゃまはイスタンブール」

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ミセス・ポリファックスはちょっとした行きちがいからCIAに採用されてしまったボランティア・スパイ。一度かぎりと思った初仕事で大手柄をたてたために、またも任務がまわってきた。行き先はイスタンブール。東側から脱出してきたダブル・スパイの救出が今回の使命だ。なんとか合流はできたものの、女二人てんやわんやの逃走劇が始まった。どこかおかしくたっぷり愉快なポリファックス・シリーズ第2弾。
(「BOOK」データベースより)

飛んでイスタ~ンブ~ル~♪
恨まないのがル~ル~♪

 

“イスタンブール”という地名を聞く度に上記の歌を口ずさんでしまうのは40over年代。
はい、私もその内の一人。この本を読んでいる間にずっとずっと、庄野真代が脳裏に浮かんで離れない。
 

さて。
「おばちゃまは飛び入りスパイ」で、素人CIAスパイとして華々しい活躍をみせたミセス・ポリファックス。通称“おばちゃま”
おばちゃまは人生ただ一度きりの大冒険のつもりでしたが、そうはどっこい問屋が卸さない(小売しか不可ってことですか?)
前回のスパイ大作戦からおよそ一年が経過し、すっかり平穏な日常生活に戻ったミセスの元に、再び1本の電話がかかって参りました。
 

平穏な日常…とはいえ、刺激的な冒険で人生の活力を得たミセス・ポリファックス。昔のようにしおたれた老婦人ではございません。
ガーデニングの趣味や読み聞かせボランティアは継続しつつも、空手のレッスンなんぞ始めたりしちゃってます。
か、空手。すげーなマダム。シルバー世代の女性が空手はじめたら、おばちゃまシリーズじゃなくて尾崎んちのババア(byまりちゃんず)になっちゃうわ。
 

CIAから再び電話がかかってきてから、迎えの車が到着するまできっかり30分。
慌てて荷造りをして、新聞と牛乳配達の停止をして、ガーデンクラブと空手レッスンのお休み連絡をして、ランチのお皿まで洗い終えたら、
さあ、再び、冒険の世界へ!

まあすてき、こんなスピード、久しぶり。
車はものすごい勢いでカーブをまがり、ちょうど通りかかった教区の牧師のすぐそばを走りぬけた。
「セ・ラ・ヴィ!」
これこそ人生よ。彼女は牧師に手を振りながら、大声で叫んだ。

ミセス・ポリファックスの今回の旅の目的地は、トルコ。
現地で身を隠している女性スパイを、安全に国外へ逃がす為の手助けを行う役目です。
とはいってもね。おばちゃま素人スパイですので、さすがにミッション・インポッシブル的な重要任務ではありません。観光客としてトルコに滞在し、途中で荷物を相手に渡すだけの簡単な仕事。
『どう見てもスパイには見えない上品な老婦人』でも出来る、簡単な任務。
 

の、筈だった。
 

…って流れは、貴方にも想像できるでしょ?

「アヘン、ねえ。ついに、ギャングの仲間入りね。人生って、驚きの連続だわ!」

“簡単な任務”が、どこをどう間違って大トラブルにまで発展してしまったのか、くだくだしい事は申しません。
おばちゃまシリーズってのは、そういうものです。
 

前回のスパイ任務からはさらに激しくなって、拉致はされるわ見張り役は殺されるわ殴られるわ変装してジプシーの集落に紛れ込むわ、と、007もかくやの盛り沢山な冒険活劇。
途中では、偶然知り合った若者の成長譚や、件の女性スパイの恋物語などのヒューマンストーリーも取り混ぜて、んもうごっちゃりエンタメ感。
エンタメですしシリーズ物なので、主人公のおばちゃまが死なないことはお約束ではありますが、それにしたってこんなに忙しくっちゃ、寄る年波で、疲労がキツいぜ。

イスラム教の祈りの声が響きわたっている。ミセス・ポリファックスは、この瞬間をおぼえておこう、いつか、きっとまたこの国にきて、ちゃんと見たいものだと思った。
しかし、今度戻ってくるときは、きっとすっかり違うものになるだろうという確信もあった。この気持ち、この、生きていることを喜ぶこの気持ちは、すべてが当たり前のときには、味わえないものなのだ。危険のあとの安心、空腹のあとの食べ物、疲労のあとの休み、見知らぬ人が友達になって助けてくれる。こんな、予期せぬことが、喜びをもたらすのだ。それだけではない。まわり全部が安全と思っているとき、突然、真実がむき出しにされる。人を寄せつけない壁、幻想、欺瞞。これらを知って、はじめて味わえる喜びなのだ。

ミセス・ポリファックスのスパイ大作戦第二弾は、危機、また危機を乗り越えて、最後には万事解決してハッピーエンディングを迎えるのもお約束ではありますが。
彼女が再びトルコに足を踏み入れるのは、ちょっとまだ先になりそうですね。
まだまだまだまだ、素人CIAのおばちゃまの任務は続きますからね。ちなみにこのシリーズ、トルコの次は東欧ブルガリア。トルコは近いがちょっと寄れない。んもうこんなに忙しくっちゃ、寄る年波で、疲労がキツいぜ。

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