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アイザック・アシモフ「われはロボット」

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西暦二〇五〇年、人間自身より強く信頼がおけ、しかも人間に絶対服従する、すぐれた種族として読心ロボットが誕生する。しかしロボットが人間に近づけば近づくほど、人間はロボットに危惧の念を抱いていく――いつしか世界政治の主役はロボットにとって代わられるのでは? 巨匠アシモフがおくる、人間とロボットの織りなす連作短編集。
(Amazon「わたしはロボット」内容紹介より)

みんなー!

おまたせー!

“ロボット工学三原則”はっじまーるよー!
 

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が第一条に反する場合は、この限りではない。

第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのない限り、自己を守らなければならない。

世の中でロボットを主題に据えたフィクション(小説・マンガ・映画・ドラマ等々)を描く上で、避けては通れないのが上記の“ロボット工学三原則”です。
いやフィクションに限らず、リアル社会でも人間型ロボットを開発する開発者の頭の中には、この三原則が浮かんでいるはず。
三原則を遵守するにしても、反発して三原則を回避した道を辿るにしても、アフター・アシモフのロボット関係者は、なべてこの三原則の呪縛からは逃れられない運命なのです。
 

カレル・チャペックの戯曲『ロボット』と同じ1920年に生まれた、つまりはロボットと同い年のアイザック・驚き桃の木・アシモフさん。
これを偉大な功績と呼ぶか、未来への足枷と呼ぶか、果たしてどちらでしょうねえ?

「なぜならば、ちょっとお考えになればおわかりのはずですが、ロボット工学三原則は、世界の倫理体系の大多数の基本的指導原則だからです。むろん、人間だれしも自己保存の本能は有していると考えられています。それは、ロボットにとっては原則の第三条にあてはまります。また、社会的良心や責任感をもつ“善良なる”人間はだれしも、正当なる権威には従うものです。医者、上司、政府、精神分析医、同僚などの言葉に耳を傾けます、法律に従い、規則にのっとり、習慣に準じます——たとえそれらが、安楽や安全を脅かす時でさえも。それは、ロボットにとっては第二条にあてはまるものです。また、“善良なる”人間は、自分と同様に他者を愛し、仲間を守り、おのれの生命を賭してひとを救うものです。これは、ロボットにとっては第一条にあたります。要するに——もしバイアリイがロボット工学の原則の全てに従う場合、彼はロボットであるかもしれないし、また単にきわめて善良な人間であるかもしれないのです」

「われはロボット」は、USロボット社所属のロボ心理学者であるスーザン・キャルヴィン女史の回顧録インタビューという形式でまとめられた短編集です。
ちなみにインタビューしているのは2057年。この頃の世界は、最後の(第三次?)世界大戦を経て国家というくくりは廃止され、地球上は4つの自治区になっています。ロボットも現在のペッパー君からは著しい成長振り、最高級ヒューマノイド型ロボットでは、見た目ではロボットなのか人間なのか、判別がつかないくらいの精度。
 

電子頭脳技術の向上により、ロボット自身が自ら考えもし、ある種の感情をも持つようになった二十一世紀。陽電子頭脳に三原則を埋め込まれたロボットならではの、種種様々な事件・トラブル・謎が生まれます。
スーザン・キャルヴィン博士は『ロボ心理学』の観点から、謎解きをしたり、事件の解決を図ったりします。
うん。この本はね、SFではあるんだけど、ミステリーでもあるんだよ。

種種様々な事件…のなかで、一番お気に入りはというと。収録短編の『うそつき』をご紹介。
時代は2020年。スーザン・キャルヴィン博士38歳。
その頃、USロボット社は陽電子頭脳にテレパシー能力を与えて、人の心が読めるロボットRB34号、名称ハービィを開発しました。
公開前のチェック段階で、ハービィは研究所の面々にいくつかの話をします。
 

スーザン女史には『ミルトン・アッシュはあなたを愛しています』
ボガード氏には『ラニング所長は辞任したいと考えています』
 

ですが、これ。ぜーんぶ嘘っぱちでした。
ハービィはどうしてそんな嘘をついたのか?これもまた、ロボット工学三原則に基づいた謎解きミステリーです。
 

ハービイの嘘と三原則に、どんな関わりがあると思います?
未読の方にヒントをお出ししましょう。関わりがあるのは三原則の内、第一条。

「ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない」
「お見事です」キャルヴィンは冷笑した。「では危害とはどんな種類のものをさすのでしょう?」

読心できるハービィが、嘘をついて回避しようとした「危害」とは、果たしてなんでしょう?
 

「うそつき」は謎解きも面白いですが、スーザン・キャルヴィン博士がハービィにくだした罰もまた、面白い。
“ロボットよりもロボット”なスーザン女史の人間味が、ちょっと切ない一話でした。
 

ロボットの知性と人間の知性が、時に丁々発止の攻防戦にもなる「われはロボット」
あまりにも面白いもんだから、アシモフ以降は三原則から逃れられないんだよなあ。罪な奴だぜアシモフさん。

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