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モンゴメリ「アンの夢の家」

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アンはついにギルバートと結ばれた。グリン・ゲイブルス初の花嫁は、海辺の小さな「夢の家」で新家庭を持った。男嫌いだが親切なミス・コーネリア、目をみはるほど美しいが、どこが寂しげなレスリー、天賦の話術師ジム船長などの隣人たちに囲まれて、甘い新婚生活を送る幸せな二人に、やがてさらにすばらしい授かりものが…。すべての人に熱愛されるアン・シリーズ第六巻。
(「BOOK」データベースより)

柚木麻子「本屋さんのダイアナ」の中で、主人公ふたりがアン・シリーズについて語り合う場面が出てきます。

<そうそう、『赤毛のアン』とかってシリーズ後半になると、ぐだぐだだもんね。>

ちょっと待てや、われぇ~。(←菅原文太イメージ)

赤毛のアンは、アンが大人になってからこそが佳境!と信じる私は「本屋さんのダイアナ」のヒロイン達には同意いたしかねます。…って言いながらも、「本屋さんのダイアナ」のふたりも、ずっとその感想を持ち続ける訳ではないのですけれど。まあ別本の話はおいといて。

不肖ワタクシめが思う、赤毛のアン・シリーズ堂々No.1はなんといっても、この「アンの夢の家」

もうきゅんきゅんのきゅんきゅん。大人になったアンと周囲のきゅんきゅんドラマを満喫できるのは、ええ、大人ならではですとも。

ちょっとあまりにも好きすぎて筆が滑りそうな予感がひしひしとする「アンの夢の家」
駆け足で内容を紹介しましょう。

“赤毛のアン”も大人になって、同郷のギルバートとめでたく結婚いたしました。

アンとギルバートが構えた岬町フォア・ウィンズの新居「夢の家」が、この本の舞台です。
あまーくラブラブな新婚生活…でも「夢の家」は、アンの平穏な新婚生活を綴るだけの、小説じゃあ、ない。

「夢の家」では、むしろアンよりもキャラが立っているのが、ご近所の人物達です。

まずは灯台守りのジム船長。若かりし頃は七つの海を駆け巡っていた船乗りさんでした。
普段は温和な面持ちでも、例えば街で悪さをする愚連隊を見つけたら「三匹のおっさん」のごとく叩きのめしちゃう強さも兼ね備えています。

船の事故で生死不明になった婚約者を未だに待ち続けているロマンチックな海の男。さ、さぶちゃん!

グリーン・ゲイブルズのリンド夫人にイメージが重なるお隣さんのミス・コーネリアは、単なるオールド・ミスかと思いきや、実は実はのどんでん返し!が最後に待っていたりして、地味ながらも捨て置くには惜しいキャラですね。

しかし!「アンの夢の家」の一番の主要キャラクターは、近くの農場に住む絶世の美女レスリー!

「アンの夢の家」はレスリーを置いて語れません。

類稀なる美貌と引き換えに、神様が幸せを奪い取ったのか、レスリーの生い立ちは苦悩に満ちています。

貧乏な少女時代に、花摘みから帰宅したレスリーが発見した、首をくくって自殺した父親。

目の前で滑車に巻き込まれて死んだ弟。

母が作った借金のカタとして強いられた結婚。

粗暴で傲慢な夫。辛い結婚生活。

もう耐えられない!別れよう!と思った矢先に、夫が仕事先の事故で脳に障害を負ったとの連絡。

子供にかえった夫を介護しながら、女手ひとつで働いて今に至る10年の月日。いや、もう、大変よ。神様も上前をはねすぎじゃなかろうか。

そしてー、だ!

レスリーと新妻アンが深い友情を築いた夏、静養と執筆活動のため到来した新進作家のオーエン・フォード!

若い独身、そしてイケメン。対するは薄幸の美女レスリー。

はい、世の奥様方お待たせ致しました。ここからお昼のメロドラマ、平日13時半からのよろめき劇場がはじまります!

「先生がおられないほうがかえってありがたいのです」オーエンはゆっくりと言った。「僕は奥さん、あなた一人にお会いしたかっったんです。どうしてもだれかに聞いてもらわなくてはならないことがあるのです。そうしないと、僕は気が狂うかもしれません—(中略)—奥さん、僕はレスリーを愛しているのです。愛している!そんな言葉では弱すぎます!」
突然、オーエンの声は言葉にほとばしる抑えられた熱情のため途切れた。オーエンは顔をそむけると、腕に顔を押しあててかくした。彼の全身は打ち震えていた。アンは真っ青になり、呆気にとられて眺めるばかりだった。思いもよらないことだった!

少女時代の「赤毛のアン」からは想像もつかないくらい情熱的じゃありませんか。

現代だったらこのままTVドラマ「昼顔」の世界に飛び込んでしまいそうですが、そこは二十世紀初頭の少女小説。不倫の描写はアンタッチャブルでございます。

夏が終わり、互いの恋情を押し隠したまま別れたオーエン先生とレスリー。

このまま心の傷を癒して欲しいと願うアン・ブライス夫人ではありますが、それで終っちゃ話がつまらない。

外科医ギルバート・ブライス先生が、最新法の脳外科手術を行えば、レスリーの夫の知能と記憶が回復するのではないかと言い出しました。

アンは大反対。粗暴なDV夫よりはまだしも現在の知恵遅れの状態の方がマシなんじゃないか、と。

レスリーにこれ以上の苦労をさせてどうする?と、アンとギルバートも夫婦喧嘩。

はてさてどうする、アンとギルバート?

はてさてどうなる?レスリーと夫、そしてオーエン?

「本屋さんのダイアナ」のダイアナと彩子に、私は熱く語りたい。

アンが大人になってからのシリーズはつまらないって?そんなそんな、何を寝言をおっしゃているのか。

赤毛のアン・シリーズ堂々No.1はなんといっても、この「アンの夢の家」に間違いありません。

もうきゅんきゅんのきゅんきゅん。大人になったアンと周囲のきゅんきゅんドラマを満喫できるのは、ええ、大人ならではですとも。

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