中村圭子「命みじかし恋せよ乙女_大正恋愛事件簿」

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平塚らいてうの運命の出会い、松井須磨子の後追い自殺、佐藤春夫の「魔女事件」、藤原義江をミラノに追った藤原あき、岡田嘉子が決行した雪の国境越えと銃殺された恋人等。「マツオヒロミ大正恋愛幻想」描き下ろしイラスト3点掲載!!
(「BOOK」データベースより)

つづけざまに天切り松シリーズをブログに書いたら、頭の中が大正浪漫でいっぱいになってしまったさくらさん。
そのまま図書館に行ったら、図書館入り口の『話題の本』コーナーにこの一冊が!そうよそうなの極私的には話題なの。他の人はどうだかわからないけど。

先に申し上げておきましょう。
現在、東京都文京区の弥生美術館では、「命短し恋せよ乙女」 ~マツオヒロミ×大正恋愛事件簿~
という企画展が開催されています。マツオヒロミという方は、この本の表紙絵も描いているイラストレーターの方ね。
どうやらこの本も、その企画にあわせて発刊された一冊のようです。
東京近くにお住まいの方は、美術館情報もあわせてチェケラ。

さて本題。
「命みじかし恋せよ乙女_大正恋愛事件簿」は、大正時代~昭和初期にかけて発生した、主に著名人たちの恋愛騒動をまとめた一冊です。つまりは大正セレブのゴシップ誌(違う?)
今も昔も有名人ゴシップは庶民の大好物ですが、今と昔の日本じゃ、ちょっと意味合いが違うところもございます。

明治から大正にかけての時代(1900年~1910年代)恋愛による結婚は「野合(やごう)」と呼ばれており、良家の子女がすべきことではなかった。家と家とのつながりを重視する旧来の結婚観が色濃く残っていたからであるが、これに立ち向かったのが平塚らいてう等『青鞜』の新しい女たちであった。

『野合』というと、いまじゃ政党の理念ない合併(ありますねえ)という意味でも使われる単語ですが、元々の意味は『正当でない男女の結びつき・私通・不倫』的なものだそうです。
しかし凄い字面の言葉使いますよね。野合ですよ野合。原始人かケモノ扱いのような印象の恋愛結婚。すげーな大正。

そんな時代に、あえて恋情に身を投げた女性たち。
通常の恋愛すら許されない時代だからこそ、極端から極端に走るのか。彼女達の恋愛事件簿は、今よりももっと情熱的で、もっと過激であります。
ゲス不倫だの、松井棒ユーチューバーだの、AKB総選挙の結婚発表だの、そんな小粒のネタじゃ、ありませんぜ。

この一冊、かなり豊富に当時の写真や手紙、新聞記事などが掲載されていますので、パラパラ見て大正浪漫の雰囲気を感じるだけでも充分楽しめます。
でもまあやっぱり、皆さんゴシップ好きでしょ?私も好きよ。
という訳で、ここでは「命みじかし恋せよ乙女_大正恋愛事件簿」の中でもNo.1、パリス・ヒルトン並のゴシップガールをご紹介いたしましょう。

男女の心中未遂。しかも女性は当時女子の最高学府の一つ日本女子大学校、男性は東京帝国大学卒業の文学士という高学歴者どうしの事件であることが世間の目をことさらひきつけた。心中を決意するほどの仲であれば、当然男女の関係にあったのだろうと世間は思ったが、真相は違った。

『元始女性は太陽であった』の平塚らいてうさん、本名平塚明子(はるこ)さん。
22歳のときに塩原事件という心中騒ぎを起こしているのですが、この心中、何がどうしてどういう理由で死に赴くことになったのがが全くわからない。
一体どうして心中しようとしたのかというと、つまるところ、それは『ノリで』が、正しいのかなあ。

お相手の森田草平さんの方は、目的が明確です。心中しようそうしようと文学士チックに熱く語ってはみたものの、実際のところらいてうほどに肝は据わってません。
道行の途中では『ねーいーだろー?一回くらいいーだろー?どうせ死ぬんだからいーだろー?』と、タナトスよりもエロスが主目的。
いざ雪山では、せっせと死に場所を求めて動き回るらいてうの横で『やっぱり死ぬのやだー』と、懐剣を投げ捨てていちぬーけた。なおかつ疲れて動けなくなって、遭難しかけたところをらいてうに助けられています。チッ、だから青白い文学士様はよう…。

心中が失敗して東京に戻ってからのらいてうさん。『このスキャンダルを収めるためには森田と結婚を』と、かの夏目漱石先生がはからってくれるのを、歯牙にもかけず一蹴。ああ、でもらいてうさん、その方が正しいよ。だって相手があの森田だもんねえ。

この心中事件、森田の方は私小説に仕立てて雑誌に発表。対するらいてうさんも雑誌に手記を発表。さらにスキャンダルは過熱。
あれですか、あれですね。最近話題のアノ人のブログとYouTubeのノリですかね。

次に出逢った“運命の人”奥村博史。彼をめぐっては友人との恋の鞘当てで、ひとりの男を取りあってまあ色々と。
一年がかりで恋を成就させるまでには、らいてう公私ともどもスキャンダラスな活動をいたしております。あ、ちなみによく“若いツバメ”と言いますけど、この言葉は奥村博史さんが由来なんですよ。

無事恋が成就して、さて一緒になりましょうという運びになってもらいてうさん、旧来の結婚制度に反発するために籍は入れず事実婚を選択します。

非難の中心点は、奥村がわたくしよりも五つも年下であるということ、恋愛から入った自由結婚で、不道徳で、野合というものではないかということ、そのうえ、法律を無視し、同棲しながら結婚届を出すのを拒んでいる——つまり合法的な結婚ではないということでした。
—(中略)—
ここでわたくしが結婚届を出すことは、現行のこの結婚制度を、認めることにほかならないのです。法律結婚をしないことが、この時代として可能な、唯一の抵抗だと考えたわたくしは、最初から既成観念のともなう「結婚」という言葉を使うことすら避け、とくに「共同生活」といって、はっきりそれと区別していたのでした。

頑なだなあ、らいてうちゃん。
ここで男っぷりが上がるのが、お相手の奥村さんですね。懐ふかいわー。結婚ならぬ共同生活を始めてからも、らいてうさんの過激な活動は収まりませんが、ハリネズミみたいにトゲを逆立てたらいてうさんに優しく従う姿は、情けなさよりも包容力を感じます。マジ懐ふかいわー。

平塚らいてうさんだけでもまあ大変ですが、「命みじかし恋せよ乙女_大正恋愛事件簿」の中ではそれ以外のお方も、恋の逃避行、夫と子を棄てて出奔、後追い自殺、駆け落ち等々、ゴシップてんこ盛りよー。
「PEAPLE」「Star magazine」等々、海外ゴシップ誌にグッと来る御仁は、是非とも「命みじかし恋せよ乙女_大正恋愛事件簿」をお読みあそばせ。
パリス・ヒルトンよりも、リンジー・ローハンよりも、ブリトニー・スピアーズよりも過激な、大正のお騒がせセレブたちが待ってます。英語じゃなくても、読めるしね。

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レビュアー: さくら
さくら
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