V.C.アンドリュース「屋根裏部屋の花たち」

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1950年代のアメリカ。「私」、キャシー・ドーランギャンガーはなにひとつ不自由のない、しあわせな少女時代を送っていた。「私にとって、人生とはすばらしい真夏の一日のようなものだった。」私には優しい兄クリス、双子の弟と妹、そして誰よりも素敵なパパとママがいた。ところがある日、思いもかけない不幸が私たち一家を襲う。交通事故で最愛のパパを失ってしまったのだ―。その日を境として、あとに残されたママと4人の子供たちの運命は一変した。着の身着のまま、母の実家のヴァージニアに向けて出発した5人だったが、過去の過ちで勘当されていた母のために、私たち4人は壮大な屋敷の屋根裏部屋に閉じ込められてしまった。この屋根裏部屋から出られる日はすぐに来ると信じながら―。全米女性に熱狂的な支持を受けた『屋根裏部屋の花たち』シリーズ第1部。
(「BOOK」データベースより)

現代に甦ったゴシック・ロマン。
いまから見れば“現代”でもないかな。いやフランス革命あたりの本家本元ゴシック・ロマンからすれば充分現代かと。

160815

こないだインターネットで『後味の悪い話』まとめサイトを見ていたら「屋根裏部屋の花たち」のエピソードが紹介されていたのを発見しました。
父親の死後に母の実家に行った子供達が、屋根裏部屋に押し込められて、母の手によって砒素入りの食物を食べさせられていたと。

節子、それドロップやない。小説や。

確かに『後味の悪い話』といったら文句なしの後味の悪さではあるのですが。間違いはないんですけどねえ。どうなんでしょうねえ。

舞台は1950年代のアメリカ。戦後のピッカピッカのアメリカですね。「奥様は魔女」とか「パパはなんでも知っている」の世界をご想像くださいまし。
ハンサムで有能なビジネスマンのパパ。美しく上品で子供思いのママ。金髪碧眼の、聡明で愛らしい4人の子供たち。
幸せを絵に描いたような生活は、パパの突然の交通事故死で一変します。

豪勢な生活は借金によるもの。浪費家で我慢ができず、自ら働くスキルも気概もないママ。
家と財産を没収され、5人の家族は母の実家に身を寄せるしか術がありませんでした。
だってママの実家って、もんの凄い豪邸なんですもの。ママの両親って、もんの凄い金持ちなんですもの。

「ママの家に帰ったら、あなたたちは王族のような暮らしができるわ♪」というママの言葉を信じていた4人の子供たちでしたが、いざ行ってみたら歓迎どころか、使用人の目に触れないように真夜中に部屋に押し込められる4人。
実は、ママがパパと結婚したことで祖父の怒りをかい、ママは勘当の身の上でした。
祖父の怒りが冷めるまで、4人も子供がいることがバレてはいけないと。朝になったら事情を話して、部屋から出してあげるから。

一晩の筈が、3日。3日の筈が、一週間。一週間の筈が、数ヶ月。
最終的に3年5ヶ月もの間、4人は小部屋と、小部屋から登れる屋根裏部屋での生活をするハメになります。

この小説は近親相姦を扱っているということで話題になったことがありました。V.C.アンドリュースは好きなんだようそーいうの。
ママとパパも叔父と姪の関係(当時のアメリカでは法律で不可)だったために親から勘当されて、屋根裏部屋の4人の内のふたり、主人公のキャシーと兄のクリスも、監禁中に許されざる関係を結びます。
ただ、キャシーとクリスの関係に関しては、已む無しと同情すべき点多し。『男の子と女の子が一緒にバスルームに入ってはいけない』の戒めの意味すらわからない年頃から、一部屋に閉じ込められる生活をしていたのだから。

4人が屋根裏部屋に幽閉されている間、いったいママは何してたのかというと。

このママがねえ。ホントにねえ。馬鹿っ母っぷりが甚だしいですわ。
「私だって被害者なの、悲しいのよヨヨ」と泣きぬれつつも、子供には我慢を強いるだけで自分は旨い食事と綺麗なドレスと楽しくパーティ三昧。
ヨット遊びをした後の日焼けした肌で「私だって頑張ってるのよ」と言われても。頑張るって、何を?

子供たちが屋根裏部屋で過ごす月日が長くなるにつれ、ママが部屋を訪れる間隔も長くなります。
毎日来ていたのが、数日おきに。やがて一週間に。毎日の訪問者は、食事を運ぶためと子供を監視するためにやって来る、狂信的で厳格な、子供たちの祖母のみ。
ある日ママが、10日ぶりに部屋に来て言った言葉。

「ダーリン、私のために喜んでほしいの!私、とても幸せなのよ!」母は笑いながらくるりとまわり、自分の胸をぎゅっと抱きしめた。私には母が自分の身体を何より愛しているように見えた。「何が起こったのか考えてみて——さあ、あててごらんなさい!」
—(中略)—
母は私の必死の皮肉に気づかないふりをした。「私が長いこと留守にして、説明するのがむずかしいと言った原因よ——私、すてきな人と結婚したの。バート・ウィンスロウという弁護士よ。きっとあなたたちも好きになるわ。彼もあなたたちを好きになるでしょう」

当然のことながらママは再婚相手に子供たちの存在を打ち明けてはいないので“彼があなたたちを好きになる”ことはありません。
再婚後、ママの気持ちはますます子供たちから離れ、ママにとって子供の存在は邪魔となってきます。

3年以上もの月日を薄暗い屋内で過ごした結果、小さい双子たちは成長が止まり、健康を害してきました。
キャシーとクリスも段々と病気がちに。
このままじゃいけない、このまま祖父が死ぬのを待っていても何にもならないと考えたキャシーとクリス。なんとかしてこの部屋を脱出する手立てはないものかと検討を始めます。

様々な努力を重ねている間にも、双子の片割れコーリイの体調はどんどん悪化し、ついには帰らぬ人に。
病院にも行けず、祖母と母の手で空き地に埋められました。

コーリイの死を契機に、ついに脱出を決意した3人の子供たち。
脱出後の生活のために、金目のものをできるだけ盗み出して行こうと階下に降りていったら…。

母の私室は、家具も衣類も、なーんにもないがらんどう。
そして祖父の病室も、使われなくなって久しい空き部屋に。

祖父は1年以上前に、既に死去していたのです。
「おじいちゃんが死んだら財産が私のものになるから、そうしたら部屋から出してあげるわ」と言っていたママは、再婚相手と一緒に転居。残された子供たちには何も告げずに。

使用人たちの軽口を盗み聞いたことから、さらに衝撃の事実が。

屋根裏部屋のネズミを殺すためにと、大量の砒素を入手していた母。
屋根裏部屋にいるネズミって?
砒素は、白い粉。いつからか毎日差し入れられるようになったドーナツにかかっていたパウダーシュガー。
残っていたドーナツを、ペットとして飼っていた鼠のミッキーに与えた結果…。

近くにあった屑箱に紙袋を投げ入れた。ミッキーにさよならを言い、私たちのしたことを許してくれるように祈った。
「おいで、キャシー」クリスが私のほうへ手を差し伸べた。「すんだことはすんだことさ。過去にはさよなら、そして未来にこんにちはと言おうよ。もう時間を無駄にするのはごめんだ。これから先、ぼくたちを待っているものはすべて手に入れてやろう」

キャシーとクリス、双子の生き残りキャリーが屋敷を出て旅立つシーンで「屋根裏部屋の花たち」は終わります。
ちなみにこの話、シリーズ物でまだ続きがあるんですけどね。キャシーとクリスが40歳くらいまで続く長いシリーズで、その間もまあ色々とあるんですけど。
シリーズ2作目以降は、後味が悪いどころじゃなく胸糞悪いまでレベルアップの、ドロッドロした話が続きますので、ごめんねさくらちゃんはもうお腹いっぱい。
ドロドロ系の昼メロがお好きな方は是非どうぞ。でも読んで胸が悪くなったとしても、責任は持ちません…。

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レビュアー: さくら
さくら
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