高野和明「幽霊人命救助隊」

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浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒涛の救助作戦。

「活動期間は、地上の時間で七週間。ノルマは百人の命だ」
「百人も?」市川が訊き返した。「私どもの命の弁償をするのなら、四人でよいのでは?」
「利息がついたのだ」神は、悪徳金融業者さながらに言った。

諸般の事情につき自ら命を絶った、4名の自殺者。
リンボに座す彼等が天国に昇天するためには、100名の自殺志願者を翻意させるミッションが必要。

4人の命に対して100名。ブラック金利どころの騒ぎじゃない積み上げっぷりですぜ神様。

悪徳金融業者(神様)の無理難題もなんのその。
目指せ天国!ツナギにゴーグル無線機と、幽霊ならではの特性も駆使して、走れ幽霊!探せ自殺志願者!叫べ幽霊!レッツ・レスキュー!

まあ、話が話なんで、出てくるのは自殺した人間か、自殺したい人間ばかり。
重いっつっちゃ果てしなく重いネタですが、高野和明の他の小説と比べれば、かなーり軽妙に書いております。まあねえ、あっち向いてもこっち向いても辛気臭いヒトばっかりなので、軽いタッチで書かないとやりきれないという気もしますしね。

さて。
自殺志願者レスキュー隊の幽霊4名が、果たしてミッションをクリアできたのか、彼等は無事に天国に行けるのか…は、どうでも良い。いや高野さんごめん。でもちょっと待って。

高野和明「幽霊人命救助隊」文春文庫版で、とても素晴しいのが巻末の解説でございます。
実のところこの本をブログで取り上げたのは、養老孟司さんの解説文をお伝えしたかったからと言っても過言じゃない。
高野さんごめん。でも仕方が無いのよ、相手が養老のおっさんなんだもの。

ちと長くなりますが一部引用。この文章を読むと、本を読みたくなる。買いたくなる。
「幽霊人命救助隊」に限らずどんな本であっても、この解説文は通ずるのではないだろうか。

買おうかどうしようか、迷ってこの解説を読んでいるなら、そういうムダなことは、さっさとやめるべきである。人生は短い。買おうか買うまいか、そんなことで迷っている暇なんかない。さっさと買って読んでしまったほうが早い。中身はべつにむずかしい話じゃない。
話がつまらなくて、損したらどうする。そういうケチなことを考えているようじゃあ、大成しませんな。ものごとは、やってみなけりゃ、なにも起こらない。宝クジは買わなきゃ、当たらない。本ぐらい買ったって、自己破産するわけではない。
じゃあ、面白いんだな。面白いか、つまらないかは、それぞれの好みにもよるに決まっている。現代人は結果がわかってないと、行動しない。結果がわかっていることしかしない、しちゃいけない、そう思い込んでいるから、人生が開けない。人生がもはや開けないと「思っている」から、結局は自殺するのである。あらかじめ面白いとわかっている本だけを、なぜ読もうとするのか。その態度が人生を狭くしてしまう。
私はこれまでにおそらく何万という桁の本を読んだはずである。そのなかで、この本はつまらない本とはいえない。でも読後につまらなかったと思うなら、だれかにプレゼントすればいい。それなら買っても損にならない。プレゼントした相手によっては、喜ばれると思う。なぜかというと——それは内容を読んでもらえばわかる。
ここまでいっても買わないなら、もう知らない。

上記の引用はほんの一部。文庫本7ページの養老節。この前後の文章もええでー。面白いでー。
全方向に目を配って、舌を巻くほど上手い。養老先生の解説文、もし機会があったらお読みくださいませ。

で、そうすると、この「幽霊人命救助隊」も購入する流れになるのだよ。私のようにな。まったくもう、養老のおっさん、上手いよなあ。

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レビュアー: さくら
さくら
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