阿刀田高「食べられた男」

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親友のS君が、ゾッとするほどの美人と結婚した。そして一ヵ月、S君の足に、最初の変化が現れた―。どこにでもいそうな人、いつでも起こりそうな出来事、そんな日常の風景が少しだけ捻れた時、静かに恐怖が忍び寄る。表題作「食べられた男」を始め、洗練された恐怖とユーモアのショートショート全41編。
(「BOOK」データベースより)

以前このブログで「脳みその研究」の紹介をした中で、阿刀田高のとあるショートショートを探していると書きました。
ちょっと艶っぽいオチの、人間のとある感情をエネルギーにして加熱する調理器具の話。

「『食べられた男』にあるよー」と早速教えてくれたのは、記事をお読みいただいたIさん。
ありがとう!ありがとうIさん!
この本「食べられた男」の中に、ありましたありました『カレー&ライス』」
いやー、久しぶりに読めて楽しかった。すごい満足。ちょいエロでイヤ~ン(*/ω\*)なオチにも、オチ後に予想されるダークな未来予想図にも満足満足。
本当にありがとうIさん。超感謝。いやあ、インターネッツって素晴しいですね!

さて、この「食べられた男」は、阿刀田高のショートショート集です。文庫本一冊にみっちり41編お買い得~。
阿刀田高は作家業初期の頃は、ショートショートをよく書かれていましたが、今ではすっかり短編の人になってしまわれました。
星新一とはまた違う、オトナの艶話的でブラックなショートショートも、また良かったんですけどね。

阿刀田高がどうしてショートショートを書くようになったか、また、どうしてショートショートから身を引いたのかの経緯については、講談社文庫「新装版 食べられた男」のあとがきに詳しいです。

あえて極論を述べれば、ショートショートというジャンルは(少なくとも日本においては)星新一で始まり星新一の死とともに終わった、と私は考えている。史的な事実として言うのではなく、その本質においてそう思わざるをえない。それほど星新一の存在は偉大で、決定的であった。

まあ確かにね、阿刀田センセーのおっしゃりたいことも分からないではありませんのですけれども。
阿刀田ショート×2は阿刀田ショート×2で、また違う味わいがあるってものですわよ。若輩者が僭越なこと申しますけどね。

Iさんに教えてもらった『カレー&ライス』について、さらに熱く艶っぽく語りたいのはやまやまなれど、ここでは星新一を深く敬仰する阿刀田高が、星新一へのオマージュとして書かれたであろう『笑顔でギャンブルを』をご紹介しましょう。
恐縮ながら、これラストまでネタバレします。予めご容赦を。

——もうぼつぼつかしら——
ホシ夫人は自宅のソファにくつろいで、夫の安否をあれこれ思いめぐらしていたが、その時玄関のブザーが鳴った。
「奥さま、こんにんちは」
ドアを開けると、思いがけず宇宙開発局の長官が笑顔で立っていた。

人類初の火星行きロケットの宇宙飛行士ホシ氏(!)が宇宙へ飛び立ってから三ヶ月。ホシ氏の妻、ホシ夫人(!)の自宅に訪れた宇宙開発局の長官。
陣中見舞いと称して現れた長官は、コーヒーを飲みながら世間話のついでのように、ひとつの賭けをもちかけました。

「ところで奥さま、妙なことをお尋ねしますが、奥さまは火星に生物がいるとお思いですか?微生物やアミーバなんかじゃなく、発達した高等生物が……」
夫人は、夫の旅先である火星について、ある程度の知識は持っていた。火星は水も空気もとぼしく、高等生物が住む可能性はゼロに近い、と聞かされていた。
「いないんじゃございませんの」
「ほう。私はいるような気がするんですが……これはおもしろい。賭けましょうか」
「賭け……ですの?」
「ええ」
「よろしいですわ」
「いくら賭けましょうか」
「いくらでも」

火星に高等生物はいるかいないか。ホシ夫人は「いない」に100万円を賭け、長官は「いる」に100万円を賭けました。

賭けが成立した瞬間、長官は真剣な面持ちに変わり。
『そろそろご主人も火星に着いた頃では…ご主人は高等生物では?

騙し討ちのようにホシ夫人に言って、約束の掛け金を要求する長官。
とても冗談とは聞こえず、戸惑うホシ夫人。

長官は夫人の戸惑う様子をなめるように見つけていたが、
「奥さま、心配はいりません。よいお知らせがあります。実は、賭けは奥さまの勝ちなんですよ」
「はあ?」
「ご主人は火星にはおられません。火星には高等生物はいません。ひょっとしたら焼けた骨屑くらいはあるかもしれませんが……おわかりですか?ここに政府からの百万円の小切手があります。どうぞ笑顔でお受取ください」

火星にいない“高等生物”のギャンブルで得た100万円っていうのは…こりゃあ、説明するのはヤボってもんですわよね?

前述の通り、今ではめっきりショートショートを書かれなくなってしまった阿刀田センセエ。
ショートショート量産時代の阿刀田高30代から40代。ちょいエロちょいブラックな“奇妙な味”は、中年差しかかり当時の年齢的な匂いも感じるところ多しです。

そして2017年現在、阿刀田高氏82歳。
いまこの時だからこそ、も一回ショートショートの執筆を復活して頂けないものでしょうかね阿刀田センセエ?
80overならではの涸れと艶っぽさと黒さが、中年層のギラギラした感じとは違った面持ちの、凄みのあるショートショートを作るような気がしなくもないのですよ。
人生ぐるっとひとまわり。再びのこのジャンルを、心よりお待ちしております。

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レビュアー: さくら
さくら
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