藤原伊織「テロリストのパラソル」

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ある土曜の朝、アル中のバーテン・島村は、新宿の公園で一日の最初のウイスキーを口にしていた。その時、公園に爆音が響き渡り、爆弾テロ事件が発生。死傷者五十人以上。島村は現場から逃げ出すが、指紋の付いたウイスキー瓶を残してしまう。テロの犠牲者の中には、二十二年も音信不通の大学時代の友人が含まれていた。島村は容疑者として追われながらも、事件の真相に迫ろうとする―。小説史上に燦然と輝く、唯一の乱歩賞&直木賞ダブル受賞作。
(「BOOK」データベースより)

そういえば最近、江戸川乱歩賞の話題を聞かないなぁと思う さくらであります。
芥川賞と直木賞は当然として、『このミステリがすごい!』とか『本屋大賞』はよく話題になったり、書店のPOPでアピールされているのに、乱歩賞はいずこ?
メディアの扱われ方ゆえか、販売戦略ゆえか…乱歩先生!いま一度ご降臨お願い致します!

という流れで、本日は乱歩賞と直木賞のW受賞作「テロリストのパラソル」です。
おお、至極まっとうな導入だ。

060618

江戸川乱歩賞なので、これはミステリのジャンルに入るかしら。どちらかといえばハードボイルドですね。
しかも大藪春彦とか北方謙三とか逢坂剛とかの、比較的ベタなTHE・ハードボイルド。

どこらへんがベタかというと、まずハードボイルドにはBarが出てこなくっちゃ。
そして、そのBarは蝶タイのバーテンのいる、正統派Barでなくっちゃ…ってあれ?早速「テロリストのパラソル」はさくら的THE・ハードボイルドの定義から逸脱している。
主人公はバー経営はしていますが、朝から晩まで生のウィスキーを飲み続けるクズちっくなアル中オヤジ。そしてBarのつまみはホットドックのみ。
バーのつまみにホットドックを出す店は、正統派Barとは到底言えない。

とはいえ、そのホットドックが、また美味しそうなんですわ。

レシピは簡単。ソーセージと千切りキャベツをバターとカレー粉&塩コショウで炒めて、オーブンで焼くだけ。味付けはケチャップとマスタード。
こう書くとあったりまえのホットドックなのに、何故かこの中ではすっごくデリシャスな感じがするのです。そしてホットドックが無性に食べたくなる。なんでしょうこのキューピー3分間クッキング感。

彼はクズちっくなアル中オヤジですが、ホットドックを作るのはお上手。
さて、じゃあ後は何がお上手なのかしら?

なんにも。
そう、なんにも。

東大在学中に学生運動をしていた主人公、とある事故で人を死なせてしまい、現場から逃走して身を隠したままおよそ20年。
流れ流れて、バーの雇われマスターへ。
新宿中央公園で楽しく昼酒くらっていたら、突然起こった爆発事故の影響で、バーを追われてホームレスの道へ。
手助けしてくれた知人のホームレスがちょっとキナ臭いことに巻き込まれたと思ったらパタパタ死んで。
昔の恋人の娘が現れたと思ったら、その娘にも惚れられて。
知り合ったばかりのヤクザは妙に主人公に肩入れして、調べごとには手を貸すわジャガーで送迎はするわ拳銃までレンタルしてくれるわの下にも置かぬもてなしっぷり。

そして主人公はというと、ひたすらに流れ流れて流されて、ラストの黒幕対決までどんぶらこっこと運ばれていくのです。

「・・・ぼくはあの闘争のさなかに気づいたんだ。ぼくは嫉妬した。もちろん彼女のこともある。だが、それだけじゃない。君がいろんな意味でぼくを圧倒していたからだ。君はのんきだった。ほんとうにのんきだった。鈍感さとはちがう。春の野原に一本だけ立つ樫の木みたいな自由なのんきさだよ。うまくいえないが、そんなふうにぼくは感じていた。だれも、なにも勝てやしないんだ。・・・」

上の台詞は、ラスト近くに、黒幕の人物が主人公に対して発した言葉。
のんきなのか、ノーテンキなのか、物事に動じないのか、感情をあらわにしないのか、当人は武田信玄の如く動かずとも周りがストーリーを動かしてくれる。
そ・れ・が、ハードボイルド。
つまり、やっぱり「テロリストのパラソル」は、ベタなTHE・ハードボイルドという結論で正しいのでした。

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レビュアー: さくら
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