若竹七海「静かな炎天」

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有能だが不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズ第4弾。苦境にあっても決してへこたれず、ユーモアを忘れない、史上最もタフな探偵の最新作。〈甘いミステリ・フェア〉〈サマーホリデー・ミステリ・フェア〉〈風邪ミステリ・フェア〉〈学者ミステリ・フェア〉〈クリスマス・ミッドナイトパーティー〉など、各回を彩るユニークなミステリの薀蓄も楽しめます。好評の「富山店長のミステリ紹介ふたたび」も収録。
(「BOOK」データベースより)

不運すぎる女探偵、葉村晶。
彼女の一番の不運は、若竹七海作品の主人公になってしまったこと。

葉村シリーズの第一作では若かった葉村さんも、シリーズ第四作では中年探偵の域に差し掛かっています。年とったのねー。そうよねー、大分時間がたったものねー。
葉村さんが年取ったぶん、読者も年を取ったということねー。

投げたブーメランが自分の元に飛んでくる痛みをこらえつつ、葉村さんったら!ついに四十肩よ四十肩!
グルコサミンとかコンドロイチンとか、そーいうのが必要になっちゃうお年頃?
彼女が加齢による肉体の衰えを感じれば感じるだけ、読んでいる私の方も加齢を自覚せずにはいられない哀しみがふりかかります。

ああ、葉村さん、あなたはいつまでも若く…せめてあなただけでも若く…。

さて。そんな葉村さんですが、ちょっとお仕事は上向き調子です。
<MURDER BEAR BOOKSHOP>の2階に構えた(間借りした)探偵事務所には、何がどうしたのかお客さんが続々と。
しかも引き受けた調査は、あっという間に片付いて納品完了サクサクと。おお、なんだかすっごく売れっ子探偵じゃない?!

ありがたい話だ。このところ不運続きの葉村晶に、ついに運が向いてきたのかもしれない。

……騙されるな!それは孔明の罠だ!
いや違う。それは若竹七海の罠だ!

不運すぎる女探偵、葉村晶。
幸運が舞い込んでくることなんて、ありゃしません。

表題作の『静かな炎天』では、不運な人生が一瞬好転したかに思えますが、それも実は裏があってこそ。
——ま、しょーがねーなー。葉村さんだもんなあ。
そうそう簡単に、彼女の不運が終わることはないということでしょう。

葉村さんの不運はまだまだ続く。

彼女に同情しきりなのは、この不運が業務上での怪我とか災難じゃあないってことですね。
多少は調査に関わってはくるものの、通常のハードボイルド探偵のように、調査の過程できったはったの災難に巻き込まれるというのとは、ちと違うような気がする。

『熱海ブライトン・ロック』も然り。
熱海で行方不明になった作家を捜索する仕事を依頼された葉村さん。その仕事がどうだかはさておいて、この短編で彼女が受けた災難は、全然仕事には関係ない。

「今の」
日高彰文ですよね、と振り向きながら、口にした。覚えているのはそこまでだ。突然、世界は暗転した。

気がつくとわたしはマリーナの桟橋にひっくり返っており、近くにはお高いビールの瓶が転がっていた。一部始終を目撃していたボートの乗員によると、西修は空き瓶を放り投げ、瓶に脳天を直撃されて倒れたわたしに見向きもせず、大急ぎで係留ロープをほどいて出航していったそうだ。

ビール…瓶!
飛んできたビール瓶が頭にあたって昏倒するってのは、全く以って捜索調査には関係ありませんよね若竹七海さん?!

あれですか?これはただ単に、葉村さんイジメをしたかっただけなんですか若竹七海さん?!

不運すぎる女探偵、葉村晶。
彼女の一番の不運は、若竹七海作品の主人公になってしまったこと。

彼女の不運は、まだまだ終わりそうにもない。読者としては終わって欲しくはないけれど、彼女のためには終わって欲しいような気もする、ああ、二律背反。

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レビュアー: さくら
さくら
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