石持浅海「扉は閉ざされたまま」

スポンサーリンク

大学の同窓会で七人の旧友が館に集まった。“あそこなら完璧な密室をつくることができる…”伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。自殺説も浮上し、犯行は成功したかにみえた。しかし、碓氷優佳だけは疑問を抱く。開かない扉を前に、息詰まる頭脳戦が始まった…。
(「BOOK」データベースより)

殺人犯に対して、こんなに応援したくなる気持ちになる小説も、そうそうない。

160617

中学生の娘が「読む本なくなった~なんかない?」と聞いてきたので、この本を貸しました。

母「スーツのメガネ男子がわんさわんさ出てくるよ」
「おおおぉぉぉぉ~!」

とはいうものの、実は「扉は閉ざされたまま」の中にはスーツメガネ男子が登場することはありません。
休日のペンション宿泊客グループの話なので、格好は皆さんカジュアル仕様。メガネは…殺された被害者はしてる位かな。

でも、登場人物がTシャツだろうとステテコ履いてようとコンタクトだろうと、読中のイメージは『スーツ姿のサラリーマンが室内でひたすら会話をし続ける』が石持浅海のセオリーってもんです。

さて。
「扉は閉ざされたまま」は、いわゆる倒叙ミステリのジャンルです。つまり、小説は犯人側の目線を中心にして描かれていきます。
犯人探しとか必要ないので、殺人はさっさとしちゃいましょう。犯人の伏見さんはプロローグでさくっと密室殺人完了。流石エリートサラリーマンは仕事が早い。

問題なのは、殺してからですよ。
密室殺人現場となったペンションの客室の扉を、伏見は、どうしても開けさせたくない。
死体を隠す?いやいや無理でしょう。逮捕を恐れて?うーん、とりあえず入浴中の事故死として偽装しているから大丈夫じゃないかなあ。
彼が扉を開けさせたくないのは、たった10時間。
たった10時間だけ、扉の向こうの死体を動かしたくない、とある目的があります。

伏見の計画は完璧でした。
大学サークル仲間と久しぶりに集まった同窓会会場のペンション内で、友人の殺害に成功し、仲間に不信感を持たれることなく10時間を乗り切るシミュレーションプランは出来ていました。

彼の計画を妨害する、碓氷優佳さえいなければ。

伏見の殺害動機とか、発見を遅らせる目的は何だとか、そういう細かいところは放っておきましょう(細かいのか?)
この本のキーパーソン、探偵役の優佳ちゃんの方が重要です。

優佳ちゃんは他のメンバーよりも年下ですが、頭のキレの良さは群を抜いています。
んもうキレッキレ。能ある鷹は爪を隠すと言いますが、優佳ちゃん全く隠しません。隠す気配すらありません。
伏見だって頭キレキレタイプな筈なのに、優佳ちゃんにかかっては赤子も同然。猫に弄ばれるネズミのごとし。

伏見の目的である、殺害後10時間を無事に経過させるために入念に練り上げたプランを、優佳ちゃんは次から次へと妨害し、発見までに想定される時間をどんどん早めて行きます。

おかげで読んでいる読者としては。

『優佳、お前、もう分かってんだろ?伏見をいたぶるマネは止せよ』
『伏見がんばれ!優佳の追求に負けるな!』
『またどうして優佳はまた余計なことを…』
『そうだ伏見、今の台詞はGoodだ。堂々をしていれば怪しまれることはない!』

すっかり伏見を応援する松岡修造気分。判官びいきになりますね。伏見、殺人犯なのに。
伏見に対する読者の目線は、生まれたてのヒヨコを見る母目線。

おそらくは全ての謎が見えている優佳ちゃんが、伏見の計画の妨害をしまくっている姿をみれば、おそらく優佳は伏見憎しなんだろうな、昔フラれた腹いせなんだろうな、って思うでしょ?
少なくともウチの娘は、そう思っていました。

だけど。ラスト付近の、犯人と探偵の、最後の対決で。

「さっき、夜這いに来たというのは半分は本気だと言ったでしょう?わたしを押し倒してください。そして口封じをしてください。はっきり言って、わたしにとっては銀縁眼鏡の新山さんよりも、伏見さんの方が大切です。わたしたちがそういう関係になったのなら、わたしは伏見さんのために口を閉ざすことができます」

えっ?!
まさかまさかの、優佳、伏見押し?!

「・・・(中略)・・・あなたの行為に対して、わたしは本気で対応しました。そしてあなたは、それを受け止めてくれた。今、この瞬間に、わたしたちは完全に対等になったんですね。伏見さん、今夜はあのときのように逃げないでください」

優佳ちゃん、あなた、愛情表現がマニアックにすぎる!!!

…伏見の目的である、10時間の時間稼ぎは果たして叶ったのか。
扉は開かれたのか。
伏見は果たして優佳を押し倒して口封じをしたのか、否か。

それは、小説を読んで頂くとして。
正直言って、結末なんて、どうでも良いっちゃーどうでも良いね。
だってどちらにしたって、伏見がこの先、手錠をかけられての生活を送ることには間違いないじゃない。
手錠をかけるのが警察なのか恋人なのかの違いだけで。

ほんっと伏見さん、色々大変だろうけど…応援してるよ。がんばれよ。

この記事が気に入ったら シェアをお願いします♪

フォローする

スポンサーリンク
レビュアー: さくら
さくら
レビュアー:さくら
ほんのむしの書評を楽しんで頂けましたら、また読みに来て頂ければ幸いです。皆様のお声がさくらの『やる気スイッチ』です!

いいね!と思ったらぽちっとな♪
以下のブログランキングに参加しています。
皆様のクリックがさくらの励みになります♪
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  
トップへ戻る