石持浅海「わたしたちが少女と呼ばれていた頃」

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新学期、横浜にある女子高の特進クラスで上杉小春は碓氷優佳という美少女に出会う。おしゃべりな小春とクールな優佳はやがて親友に―。二学期の中間試験で、東海林奈美絵が成績を急上昇させた。どうやら、夏休み中にできた彼氏に理由があるらしい。だが校則では男女交際は停学処分だ。気をもむ小春をよそに平然とする優佳。奈美絵のひと夏の恋の結末を優佳は見切ったようで…(「夏休み」)。教室のどこかで、生まれ続ける秘密。少女と大人の間を揺れ動きながら成長していくきらめきに満ちた3年間を描く青春ミステリー。
(「BOOK」データベースより)

160819

娘がはまった碓氷優佳シリーズも、この番外編で最後。多分。
我らが優佳ちゃんの、高校生時代を描いた短編集です。

とりあえずご安心ください。いくら死神優佳ちゃんと言えども「わたしたちが少女と呼ばれていた頃」では人死にがでることはありません。
通っている高校でバタバタ人が死んだら、石持浅海じゃなくて高見広春になっちゃうからね。

横浜のお嬢様進学校を舞台に、優佳ちゃんのクラスメイトを視点として“日常の謎”を描いています。北村薫チックですね。
で、それぞれの“謎”というのも、率直に言ってしまえばそんな大層な謎でもありません。まあ、一休さんのトンチ程度だと思っておいてください。この短編集では正直、謎は二の次三の次です。

じゃあ、何がこの短編集の主題なのかと言いますと。
我らが碓氷優佳ちゃん自体の“謎”を解明するとでも申しましょうか?
それとも、もう一人の娘の腹黒さを解明するとでも申せましょうか?

優佳は、わたしの愚劣な邪推など、簡単に踏み越えていた。彼女は知的活動だけで、級友の危機を見抜いて、その行く末を思っていたのだ。すごい。やっぱり優佳は、すごい。
わたしはそっと目の前の友人を見た。わたしは、これほどの人物を友人としてみられるだろうか。いや、逆だ、こんなわたしを、優佳は友だちとして見てくれるだろうか。

語り手の上杉小春(アダナは謙信。苗字が上杉だから)が高校の入学式で出逢った美少女、碓氷優佳(ちなみにアダナはうすうす。可愛い)。
この人は自分が“進学校の理系特進クラス”に属しているという事実が自らのアイデンティティになるのか、何かと言えば理系特進理系特進と、妙に選民思想が鼻につくお方です。あ、これは私の僻み以外のなにものでもない発言ですね。

頭が良い=エラい子基準の小春ちゃんからしたら、頭キレッキレの優佳ちゃんはもうマジ神扱いです。エピソード毎に『すごい。やっぱり優佳は、すごい』と毎回感嘆してます。素直なのか単純なのか。また優佳も能ある鷹が爪を出しっぱなしタイプだから拍車もかかる。
おーい、優佳ー。そんなにアッタマ良いアピールしなくても良いぞー。

頭キレッキレの優佳ちゃんと、優佳を神とも崇める小春。それと幾人かの友人とで、楽しい高校生活は進んでいきますが…。

最終話を読んで、突然。ん?んんん?
なんでそーなるの?

大学受験を終え、高校を卒業し、卒パでちょっと飲酒デビューなぞしちゃったりして。
高校3年間を振り返っていた小春の心に、ある疑惑が立ち上りました。

優佳は本当に、これまで私が思っていたような、友情に厚い心優しい人間なのだろうか?
来し方を思い起こしてみれば、優佳の行動はいつも、友人を思う故のものではなく、ただ自分が面倒なことに巻き込まれないためだけの自己中心的な措置だったのではないかと。

頭は冷静で、心は熱いだって?
違う。碓氷優佳は、そんな人間ではない。優佳は、頭は冷静で、心が冷たい人間なのだ。
—(中略)
言われなければ、自分が他人に何の関心も持っていないことにすら気づかない。イノセントに残酷な人間。それが碓氷優佳だ。
缶チューハイ一本しか飲んでいないのに、まるで泥酔しているかのように足がふらついた。
なんということだ。友人を見捨て、見捨てていることにすら気づかない人間を、わたしは三年間も親友だと思っていたのか。

ちょっと待てよ小春ちゃん。
アンタそれ、いまさら?!

これまで碓氷優佳シリーズをお読みになった皆様なら、そもそも優佳ちゃんが“他人に関心がなくイノセントに残酷な人間”だという事実はお分かりでしょう。
そういう優佳ちゃんだからこそ、やいのやいの言いながらも好きなんですよ。
小春ちゃんアンタ3年間どこに目ン玉つけてたの?

これまでの3年間、ただひたすら『すごい。やっぱり優佳は、すごい』と優佳を崇め奉っていた素直で単純な小春ちゃん。
優佳の本性を知った(というほど大層なモンでもないが)を知った途端、子供じみた180度の方向転換を図ります。

優佳は、いずれ気づくのだろうか。自分が、他人に対して何の関心も持っていないことに。冷静で、冷たい人間であることに。気づくかもしれない。一生そのままなのかもしれない。わたしにはわからない。わかっているのは、彼女が自覚できたとしても、その場に自分がいないことだけだ。

高校の切れ目が縁の切れ目、といった感じで、卒業後はもうお会いしませんわグッバイの決意が仄見える。
お前の方がよっぽど冷たくないか?しかも何その上から目線?!

「あたりは良いけど、あんたマジ腹黒いよね~」

普通だったら、上記の一言で済むようなレベルの話よ。そしたら優佳ちゃんだって

「だろ?(ニヤリ)」

の一言で終わった筈なのにね。

優佳ちゃんが腹黒いとか冷たいとかには100%同意するが、たったそれだけで高校時代の友人にポイ捨てされちゃう優佳に初めて同情。
まあ、優佳は友人が一人消えようと消えまいと気にもとめないだろうから、別に良いんだけど。
でもさあ小春ちゃん。もちっと大人になったらさ、もちっと広い心で人を見ようよね。君が君自身の腹黒さに気付ける日を、私は待っている。

ところで。
碓氷優佳シリーズを全て読了した娘に、母は告げねばならぬことがありました。
眼鏡スーツ男子萌えを書き、女子校内部事情に妙に詳しい石持浅海を、女性作家だと勘違いしている娘に。

「石持浅海ってオッサンだよ」

その瞬間、まるでハリウッド女優のように両手で顔を覆った娘。

「知りたく…なかった!」

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レビュアー: さくら
さくら
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