浅田次郎「天国までの百マイル」

スポンサーリンク

バブル崩壊で会社も金も失い、妻子とも別れたろくでなしの中年男城所安男。
心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるというサン・マルコ病院めざし、奇跡を信じて百マイルをひたすらに駆ける―
親子の切ない情愛、男女の哀しい恋模様を描く、感動の物語。
(「BOOK」データベースより)

100m

泣かせの浅田の本領発揮。
あざといまでに直球勝負で涙腺を刺激するのは『鉄道員(ぽっぽや)』と対はるレッツ・センチメンタリズム。
初読したのは20年ほど前でしたが、その時は涙ダダ漏れの情動失禁状態でした。

再読した2016年3月、さくら四十路後半。若かりし昔のように涙腺が刺激される事もなく、冷静に読み流してしまった自分にびっくり。
特に浅田次郎が大好きな長文モノローグでは「さあ泣け、ほれ泣け。これでもかこれでもか」と、涙の押し付け感が鼻につきます。
これは再読故の宿命か?
もしくは私自身の感性が鈍磨してしまったのか?
多分、後者の可能性高し、です。

ストーリー自体はどうでも良いです。私が語りたいのは女について。
「天国までの百マイル」の中で、主人公をめぐる女性はふたりいます。

ひとりは、現在の主人公を支えるフィリピンパブのホステス、マリ。
もうひとりは、かつての妻、英子。

昔この本を読んだときには、マリの方に読者としての視線が向いていた記憶があります。
ろくでなしの中年男に無償の愛を尽くし、男が立ち直ろうとしたのを見計らうようにそっと身を引く。
しかも「椿姫」よろしく悪女を演じ(それが全登場人物にバレバレなくらい下手な嘘として描くところがまたあざとい)アパートも引き払って行方知れず、煙の如く去る。

なにこの天使。マジ天使。フィリピーナの天使。
マリの存在のありえなさに憤った さくら20代。

しかし初読の後20年以上を経て、マリの存在が納得できるようになったくらいには自らが成長しました。
マリの気持ちがわかった訳じゃあないんです。
世の中には一定数の「だめんずマニア」が存在する事実を知ったという事です。
マニアはね、しょうがないよね。趣味の問題だからね。

そして、最近読み返して、自分の視線が英子に向いていることに気付きました。
現在のさくらが「妻」であり「母」である状況であるが故だと思われます。

こっちはこっちで、マジ天使。日本の天使。
英子の存在のありえなさに憤る さくら40代。

別れた妻が、かつての姑と秘かに温かな交流を図り、元夫の養育費遅延の申し出も許し、その間にも子供の生活は一心に守り、元夫のために復縁を申し出、そのために新たなオトコとの縁を切る。
チョーチョー男に都合良い展開。まるで渡辺淳一ばりの願望投影。

あのですね。
よく男女の恋愛で「男は『名前をつけて保存』女は『上書き保存』」と比較されたりしますが
「天国までの百マイル」を読むと、男が『名前をつけて保存』してほしい願望があるんだなあ、と、しみじみ感じ入ります。

かつての彼女(or妻)が今でも自分のことを忘れられずにいて、もしかしたら再び出会って“焼けぼっくいに火が”つくかもしれない。
いや、それ、ファンタジーだから。
女は上書き保存だから。

さくらに限らずおそらく多くの女性、過去の過去の恋愛を『上書き保存』で消し去ります。
データ全て消えちゃうので、過去の男がその後くすぶろうが野垂れ死のうが「ふーん、あっそう」
正直メシウマかも。

結婚→離婚なんていう、恋愛よりもさらに濃ゆい別離なんて、もし昔の夫がホームレスに転じて道端に転がっていても、手なんて差し伸べないよなあ。汚れるから。
いやこれこんなこと書いて大丈夫かな。私だけが冷酷非道なのだったらどうしようか。

もし私が一般的な女性よりも冷たい人間であったとしても。
おそらくは、心中納得する女性は多い、筈(多分)

登場人物の元妻・英子みたいに、男のファンタジー具現化されたような“THE・ドリーム”よりは、多い、筈。

冷たいさくらさんから、世の男性にアドバイスをば。
もし貴方が過去の女性を思い出し「あいつ、まだ俺のこと想ってたりするのかなぁ~」とか想像しているならば。
決して確かめようとは思わない方がいい。
消息も確かめない方がいい。ましてや復縁希望なんて、そんな地雷は踏まないほうがいい。

ドリームはドリームとしてとどめておいてね。女は上書き保存だから。

この記事が気に入ったら シェアをお願いします♪

フォローする

スポンサーリンク
レビュアー: さくら
さくら
レビュアー:さくら
ほんのむしの書評を楽しんで頂けましたら、また読みに来て頂ければ幸いです。皆様のお声がさくらの『やる気スイッチ』です!

いいね!と思ったらぽちっとな♪
以下のブログランキングに参加しています。
皆様のクリックがさくらの励みになります♪
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  
トップへ戻る