浅田次郎「プリズンホテル〈1〉夏 」

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極道小説で売れっ子になった作家・木戸孝之介は驚いた。たった一人の身内で、ヤクザの大親分でもある叔父の仲蔵が温泉リゾートホテルのオーナーになったというのだ。招待されたそのホテルはなんと任侠団体専用。人はそれを「プリズンホテル」と呼ぶ―。熱血ホテルマン、天才シェフ、心中志願の一家…不思議な宿につどう奇妙な人々がくりひろげる、笑いと涙のスペシャル・ツアーへようこそ。
(「BOOK」データベースより)

161006

皆様、本日は笑いと涙と義理人情の「プリズンホテル・ツアー」へようこそ。
本日皆様のお相手を努めさせて頂きますのは、ほんのむし観光ガイドのさくらでございます。
至らない点も多々あろうかと存じますが、どうぞよろしくお願い致します。

このバスが向かいますのは、県境の山上に建つ『奥湯元あじさいホテル』でございます。

しかしながら、地元の方々はどなたも本来の名称をお使いにはなりません。
麓の方々が言い交わす通称はプリズンホテル。なにも監獄ではございませんが、オツトメを終えられたヤクザのお客様が、シャバの湯にゆったり浸かり、プリズンの垢を落とすところから名付けられた所以でございましょうか。特に関東の大曽根一家の皆々様には、組長はじめ『一泊二食ソフト付』プランなどご利用頂いております。

それと言いますのは、『奥湯元あじさいホテル』のオーナーは、かの大親分・木戸仲蔵でございます。
とかく敬遠されがちな任侠団体の皆様にもゆるりと楽しく行楽をして頂きたいと、前社長の一家心中で宙に浮いた温泉宿を買い取って、任侠団体専用ホテルに改装した、正に任侠浪花節の人物でございましょう。
特別室『富士見の間』にご宿泊の折は、現オーナーのみならず、一家心中した前オーナーの亡霊も一家総出でご挨拶にお伺いすると申しております。新旧ともにオーナーへの心付けは不要でございますが、フィリピンから出稼ぎに来ている仲居には、何卒気前よくチップをおはずみくださいませ。

「だが、ある晩、見たんです。離れに夜食を運んだらね、木戸さんが坊ちゃんとお嬢さんの小さな骨壷を抱いてね。許してくれろ、勘弁してくれろって、さめざめと泣いてらっしゃるじゃないですか。にじり口から黙って見ておりましたら、会長はそれから骨壷のフタを開けましてね、いったい何をなさったと思います?」
それも知っているというふうに、主人の霊は頭を抱えてすすり泣いた。息をつめて聞き入る人々を見渡して、板長は続けた。
「骨を、食べてらしたんで。それも、仇討ちを誓うなんて、そんなヤクザなふうじゃなかった。ポリポリと骨をかじりながら、ひとこと、こうおっしゃったんで。オレと一緒に、アイス食おうな、って——」

本ツアー<夏>では、あの極道エンターティナー小説で人気を博した木戸孝之介先生と、その愛人の清子様も追ってご参加されます。
清子様の極上の美貌が、木戸孝之介様の殴打で腫れ上がらないことを期待いたします。
他にも、熟年離婚一歩手前のご夫婦や、懲役上がりの元ヤクザ、心中場所を探してさすらったご一家様など、多彩な顔ぶれの盛り沢山ツアーでございます。一瞬たりともツアー中に皆様を飽きさせないことでございましょう。

また、この度新たに就任致しました支配人と洋食担当のシェフは、いずれもかのクラウンホテルにて研鑽を積んで参りました超一流の仕事人でございます。
ホテルのご法度である“ゲロとボヤ”の責任をかぶる形でプリズンホテルに流されては参りましたが、さてさてそれが、彼等にとって吉と出るか凶と出るか。
その顛末は「プリズンホテル」の春夏秋冬、一年を通してじっくりとその目でご検分くださいませ。

さて、そろそろ花盛りのあじさいの向こうに、『奥湯元あじさいホテル』プリズンホテルが見えて参りました。
皆様、どうぞごゆっくりと、春夏秋冬「プリズンホテル」の第1作目、夏のプリズンホテル・ツアーをお楽しみくださいませ。
笑いあり、涙あり、浪花節あり。皆様のご期待を決してうらぎりませんこと、ほんのむしガイドの不肖さくらがお約束申し上げます。

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レビュアー: さくら
さくら
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