浅田次郎「わが心のジェニファー」

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婚約者の求めで日本にやってきた米国人青年。東京、京都、大阪、九州、北海道…。神秘のニッポンを知る旅を始めた彼を待ち受ける驚きの出来事と、感涙の結末とは!
(「BOOK」データベースより)

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浅田次郎版『YOUは何しに日本へ?』

最近“ビバ日本!ワンダフル日本!日本ってこんなに素晴しい!”というTVのニッポン礼賛番組って多くありませんか?
自国を認むるに悪いことじゃないんだろうけど、あまりにも自画自賛番組が多すぎるのは、かえって自信の無さを押し隠しているためにも感じられたりして。
日本国民一億人が揃って、自己愛性パーソナリティ障害にかかっているような気がしたりしなかったり。

さて、この小説「わが心のジェニファー」を『YOUは何しに日本へ?』のように日本礼賛モノとして読むか、
それともお気楽な、アメリカ人の“マジカル・ミステリー・ツアー”として読むかは、読む人毎のお気持ち次第。
どっちにしても、まあ、悪くはないかも。

「プロポーズの前に、日本を見てきてほしいの。休暇をとって、ひとりでゆっくりと」

ウォール街のビジネスマン『YOU』ラリーは、ステーキとハンバーグとフライドチキンを愛するパリッパリのアメリカ人。
高名な退役軍人である祖父の影響で、日本には芳しくないイメージを抱いておりました。
しかし今のカノジョは日本贔屓。『結婚には価値観の共有が必要』と、ラリーの日本嫌いを矯正するためにプロポーズの条件を出しました。
んまあ、ずいぶんと高慢ですこと。

消化しなければいけない有給休暇もあり、なんたって愛する恋人の頼みですから。
オンナにはめっきり弱いラリー青年は、彼女が望むがままにニッポンフリーツアーを開始しました。
トーキョーからはじまり、古都京都、食い倒れの大阪、別府温泉、東京地下街、そして北海道は釧路湿原。
旅の最後に見つかるものは、ニッポンの心かカノジョの愛か、はたまた?

今回の旅ではカノジョのご指定により、スマホもノートパソコンも不携帯のアナログちっくな旅行となったラリー君。
日本観光旅行のガイド役となるのは、2冊のガイドブックでした。このガイドブックがなかなかに面白い。

ひとつは彼女おすすめの、一般的なガイドブック。すばらしき日本(イッツ・スプレンディド・ジャパン)」
もうひとつは、上のガイドブックのあまりの教条的な記述に飽いたラリーが別途購入した日本無秩序旅行(ジ・アナーキー・ツアー・イン・ジャパン)」

大阪に対してふたつのガイドブックが記述した内容は以下のとおり。

「大阪はとてもフランクかつフレンドリィな都会で、全体がダウンタウンの雰囲気を持っています。かつての東京は人口の半分をサムライが占めていましたが、大阪はほとんどが商人や職人の住む町でした」
(「すばらしき日本」より)

「大阪はジョークとジャンク・フードの大都会です。足を踏み入れたとたんから、あなたは思いつく限りのユーモアを言葉や行動で表現し続けねばならず、また他人のユーモアに対しては、そのクオリティにかかわらず大笑いを返さなければなりません。そして朝から晩まで年齢も健康状態もお構いなしに、高カロリーで低蛋白質の食事を詰めこまなければなりません。その結果、大阪では過食が原因で亡くなる人が跡を絶ちませんが、そうした死はクイダオレと呼ばれて、大阪市民の名誉とされます。では、お気をつけて!」
(日本無秩序旅行」より)

そして温泉に対して記述したのはこちら。

「また、各地の温泉旅館は、日本文化の保存装置としての役割を果たしています。最近の住宅には少なくなったタタミ・マットも存分に活用されており、従業員はキモノを着ており、食事には伝統の日本料理が供されます。日本を知るには、温泉旅館を訪れることが最適です」
(「すばらしき日本」より)

「どこの家からも、半径一マイルの範囲に温泉が湧き出ているので、日本人はあまり自宅のバスやシャワーを使いません。朝っぱらから温泉に浸って仕事をせず、とうとう身上を潰してしまった資産家もいるくらいです。日本人が世界一きれい好きな国民であることはよく知られていますが、それもそもそもは温泉の福音だと考えられています」
(日本無秩序旅行」より)

ねっ?なかなか良いでしょ?特に「ジ・アナーキー・ツアー・イン・ジャパン」。東京都知事の小池さん、オリンピック開催に向けて公式ガイドブックへの採用はいかがかしら。

日本各地を旅行する中で、ラリーは様々な人と出会い、最終的には彼が考えもしなかった、自らのルーツを探る旅に変貌していくのですが。
まあ、そこらへんはともかくとして。
『YOUは何しに日本へ?』くらいお気楽に、外国人のニッポン珍道中を覗き見るってのも、またオツな読み方ってもんです。
別府温泉で混浴風呂に入ってドキドキ☆とかね。Roll up! Roll up for the Mystery Tour!

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レビュアー: さくら
さくら
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