桐野夏生「I’m sorry,mama.」

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私は、女の顔をした悪魔を一人知っているのです。その女のしたことを考えるだけで、ぞっとします。彼女の本当の名前が何というのか、今現在、何という名前を名乗っているのかは知りませんけど、もちろん彼女はまだ生存していて、人を騙し続けています。そして、へいぜんと人を殺し続けています。かつて女であった怪物たちへ、そして、これから怪物になる女たちへ捧ぐ、衝撃の問題作。
(「BOOK」データベースより)

161226

「じゃ、母性愛は」
アイ子の質問を、エミさんは笑い飛ばした。
「んなもん、幻想に決まってるさ。皆、楽になるために、自分に暗示をかけてるんだ」

いや、もう、たいへーん。
「アイムソーリーママ」に出てくる登場人物の全部が全部、んもう笑っちゃうくらい凄い人ばっかりで。
もれなく馬鹿か悪人かド底辺か変態か。ちょっとマシな部類では、某ビジネスホテルA○Aの社長を彷彿とさせるやり手の女社長くらい。それにしたって女グセの悪い夫に振り回されて、ハッピーな日常とは言えない人ですわ。

それ以外の登場人物と言えば…うーむ、昔のドブ板女郎みたいな集団売春婦OGたち、赤ちゃんプレイが大好きな年の差カップル、女装癖のある父息子、助成金目当ての里親家族、etc.etc.
特にひゃーっとなるのが、ストーリーとは全く関係ない筈の女装父子ですかね。お父さんが女装して葬式に出かけたら、そのでバッタリ出会った息子はやっぱり女装してたとか。DNA?女装ってDNAなの?

しかし筆頭は、やはり主人公のアイ子でしょう。
娼館で生まれ育ち、誰が産んだ子なのかも知らされていないアイ子。もちろん父親など知らず。
母が娼館に残していった白いズック靴が、彼女の“ママ”
当然のごとく無戸籍であったアイ子は、娼館から施設へ。その後里親の元へ。どこでも馴染めず、どこでも上手くいかず。
流れ流れて、アイ子はどのように育ったかというと、嘘ついて騙してごまかして、不審がられたらさっさと相手を殺して次の場所に向かうという、死屍累々のはぐれ雲のような怪物になりました。

エミさんが気付いたらしく、身じろぎした。アイ子を見て、恐怖で硬直しているのがわかる。アダムの顔まで掘り進んだアイ子は、さてと、死にますか、と振り向いてエミさんに言った。

『今年の汚れは今年のウチに♪』というお掃除上手なやりくちは、「悪の教典」のハスミンを連想させます。
ハスミンの方はMBA取得エリート、対してアイ子はアルファベットもおぼつかないような無教養ですが、どちらも『邪魔な存在はお片付け!』と、さくっと排除&さくっと殺害する事には変わりありません。
妙に殺害時の作業が雑という点も、共通点を感じさせます。

殺人って、学歴教養は関係ないんだねえ。

消しゴムで消さなければ、ノートはもう一度使えない。新しいノートを買って貰えないアイ子は、何度も消して使っていた。うまく消せないとノートは汚くなって、やがて破れる。そのうち、どうせ消すのなら最初から書かない方がいいと気付き、授業中もノートを取るのはやめにした。そのせいだろうか、アイ子は知識や経験を蓄積して思考する習慣を綺麗さっぱり忘れてしまったのだ。うだるように暑い真夏、洋服着たって汗になるだけだから洗濯するのが馬鹿らしいよ、と娼館のお姐さんたちもスリップ一枚だった。あれと同じじゃん。

誰を愛したことも、誰に愛されたこともないアイ子ですが“ママ”に対しては唯一、人間らしい感情で思慕の念を抱いています。
いつか白いズック靴の持ち主の“ママ”に出逢えたら、違う人生がはじまるのかもしれない。
欲望のままに、動物的に生きていたアイ子が、真人間になれるのかもしれない。

「まにんげんって、どういうことなのよ」
「わかりません」

果たしてアイ子は瞼の母に会えたのか?父はどんな男だったのか?
それは、ここでは秘しますが。
アイ子が最後にどうなったのかというのも、ここでは秘しますが。
ハッピーエンドとか、良い読後感を望む人だったら、読まないほうが良いと予め忠告しておきます。
年末の大そうじに向けて、邪魔な存在をお片付けしたい向きには、おすすめするけどね。『今年の汚れ、今年のウッチ~に♪』花王の提供でお送りいたします(嘘)

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レビュアー: さくら
さくら
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