東野圭吾「秘密」

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妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な“秘密”の生活が始まった。映画「秘密」の原作であり、98年度のベストミステリーとして話題をさらった長篇、ついに文庫化。
(「BOOK」データベースより)

160916

以前ブログに書いた北村薫「スキップ」は、これから出荷して市場に並ぶ寸前のピッチピチ17歳が、スキップして42歳のスーパー見切り品に変貌する恐怖譚。
こちらの東野圭吾「秘密」は、推定36歳の見切り品間近の野菜が、リメイクされてお惣菜コーナーの一品・11歳に変貌するお話です。いや、説明をスーパー縛りにする必要はないんだけど、なんとなく。
逆の状況とはいえ『若くなったんだから、よくね?』とは、言い難いもの也。

運命は愛する人を二度奪っていく

上記は「秘密」の文春文庫の帯に書いてあるコピーです。我が家にある「秘密」は、この帯がつけっぱなしになっております。
いま、正にいま、このブログを書く途中でamazonのリンク(この記事の下にある埋め込みカードのこと)設定をしていたら、表紙絵の下部、帯で隠れた箇所にイラストが描かれているのを発見!
しかもそのイラストには、小説のラストに関わる重要なアイテムが!

我が家の「秘密」の帯を取ったら、当然ながら同じイラストが。
ずっとずっと、臙脂色単色の表紙なのだと思い込んでおりました。
こんなところに「秘密」が隠されていたのだと、10年以上たって初めて知った私でした。東野圭吾、いや文春文庫、恐るべし。

さてさて。
「秘密」は映画にもドラマにもなりましたから、原作を読んでいない方でもストーリーはご存知な人も多いでしょう。
なので、ストーリーについては割愛!ラストについても割愛!ざっくり好きなところだけ書くのがほんのむし!

私が一番「だよね~」と思ったのは、以下の箇所でした。

「降ってからじゃ遅いのよ。うん、決めた。やっぱり長靴にする」そういうと彼女は靴箱の中から長靴を取り出した。赤いビニール製で、緑に白のラインがある。いつだったか、直子がスーパーの福引きで当ててきた商品だ。
「長靴って、それのことか」
「そうよ」
「それを履いていくのは、ちょっとまずいんじゃないか」
「どうして?」
「だって藻奈美はその長靴のこと、ダサくて履きたくないっていってたぞ」
「知ってるわよ。でもせっかくあるんだから勿体ないじゃない」
「だからだな」平介は玄関のドアをいったん閉めた。「それは直子の考えだろう?だけど世間的には直子はこの世にいなくて、着ている洋服も履いている靴も、全部藻奈美が自分の判断で選んだってことになるんだよ。そうすると、藻奈美が自分から進んでそのダサい長靴を履いて学校に行くというのは、ちょっとおかしいんじゃないか」

今年はじめ、東京に雪が降った際にもそうでした。
久々に積もった雪が溶けて、娘の登校時間は道がグシャグシャ。「長靴履いていきなよ~」との母の勧めにも「ありえない!制服で長靴なんて!」と強固に拒否。
オトナとしては(学校でも電車でも道端でも、この天候で長靴履いていて文句は誰も言わないだろうよ…)と思うのですが、娘の美意識としてはとても許しがたいチョイスであるらしいです。そんなにウチの娘お洒落番長じゃない筈なんだけどね。

その時は結局、我が娘は駅まで母のレインシューズを履いて出かけ、駅で早々にローファーに履き替えたそうです。
いーじゃん一日長靴履いてれば。どうせ校内では上履きなんだし。下校時だってまだ残雪あるだろうし…と思うのはオトナの理屈。

自分自身を思い返してみても、自分の娘の姿を見ていても、子供が持つ自分の格好へのこだわりって案外強いよな、と思う訳です。
それが「秘密」では“赤いビニール製で、緑に白のラインがある”“スーパーの福引で当ててきた”長靴。そのビジュアルは想像にかたくない。
そりゃあ、元の藻奈美だったら「ありえない!」でしょうよねえ。
直子としての“せっかくあるんだから勿体ない”の考えにも同意するところ多く、藻奈美と直子の“魂の入れ替え”が至極納得できる箇所でした。

もうひとつ、印象に残った箇所があります。
私の精神がもし、娘の身体に入り込んでしまったら…いや、言霊を信じる私は、万が一にも娘の危険は避けて言い直そう。
私がもし、今の意識のままで肉体が11歳になったら、もう一度人生をやり直せるとしたら、どんな風に生きたいか?

「後悔って?」
平介が聞くと、彼女はにっこりした。
「ほら、あなただって時々いうことがあるじゃない。若い頃にもっと勉強しておけばよかったって。同じことを、あたしだって考えないわけじゃないんだよ」

『もっと勉強しておけば良かった』と、言う人がいます。
かくいう私自身も、そう思っていたりします。学生時代の私、マジ勉強しなかったからね!夏休みの宿題は9月1日になってからやりだすタイプ、試験の前日夜中に初めて教科書を開くタイプだったからね!
面倒がらずに若き頃、もっとちゃんと勉強しておけば、今よりもっと良い人生送ってたかなーと思わないでもありません。大体、学生時代には勉強しているだけで良かったというのに、それもしないで私、何やってたんだろ?今にしてみれば、ずいぶん勿体ないことしなたと後悔しきりです。

「秘密」の直子(肉体は藻奈美)は、その後悔を繰り返すまいと、再チャレンジ人生では勉学に勤しむことになります。
過去の経験と目的意識があるから、勉強にも身が入るし、成績も上がるってもんです。成長するに従い直子は医師を志し、小説のラストでは大学病院で脳医学の研究をしています。当然の帰結と言えましょう。

すっげーな直子さーん。いや藻奈美ちゃーん。
過去の経験と目的意識があるから、なーんて先ほど私は言いましたが、実際問題、私が同じことできるかなんてわからない。多分できない方に賭ける。はらたいらに1000点。

だって、本当にそう思ってるんだったら、今からやれば良いんだものね?
学校の勉強に限らず、今からだって何の勉強でもできるものね?
こう言っては何ですが、私を例にとれば読書の時間とブログを書く時間を勉学にあてれば、結構な時間数を捻出できる筈です。趣味の時間を学習時間にすれば、勉強はできる。そして、人生は変わる?

…変わらないな、多分。
いま私が突然11歳に戻ったとしても、一念発起して勉学に勤しむようになるとは、到底思えないw
おそらくは、やり直しの人生においても私は夏休みの宿題は9月1日になってからやりだし、試験の前日夜中に初めて教科書を開くのでしょう。
そして肉体が大人になってから再び『もっと勉強しておけば良かった』と嘆くことになるのだわ。歴史は繰り返す…。

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レビュアー: さくら
さくら
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