東野圭吾「ゲームの名は誘拐」

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敏腕広告プランナー・佐久間は、クライアントの重役・葛城にプロジェクトを潰された。葛城邸に出向いた彼は、家出してきた葛城の娘と出会う。“ゲームの達人”を自称する葛城に、二人はプライドをかけた勝負を挑む。娘を人質にした狂言誘拐。携帯電話、インターネットを駆使し、身代金三億円の奪取を狙う。犯人側の視点のみで描く、鮮烈なノンストップ・ミステリー。
(「BOOK」データベースより)

えっ、えっ、ちょっと待って。
これじゃ樹理ちゃん、あんまりにも可哀想じゃない?!

と、知らず樹理という若い娘に一抹の同情を覚える「ゲームの名は誘拐」の読後感。

タイトルに誘拐の名がついているだけあって、この小説は誘拐事件を題材にしています。
とはいえですね、誘拐犯と人質との間では、監禁や暴力などの危険はありません。
家出娘が通りすがりの男と組んで、父親に仕掛ける狂言誘拐という名のゲームです。
ゲームの賞金は、三億円。

恋愛にかぎらず、おれはすべてにおいてそうだった。ゲームに見立て、それを克服することに喜びを感じてきた。スポーツは無論そうだが、勉強にしてもそうだ。成績の優劣とはゲームの勝敗にほかならなかった。—(中略)—
ゲームには些か自信があるだと?
ならば勝負しようではないか。どちらが真の達人か、はっきりさせようではないか。

誘拐犯、とここでは言うべきでしょうか。主人公の佐久間さんは敏腕の広告マン。
大手広告代理店からヘッドハンティングされた広告代理店で、数々の広告プランニングを成功させています。

しかしこの佐久間がすっげーヤな奴。エリートで小金持ちのギョーカイ人って、皆こんな?
女は同時並行で使い捨てポイ、同僚は馬鹿にして蹴落とすべき存在、クライアントは広告のことをまるで解ってないバカ、オレ最高。オレ最強。

そんな佐久間さん、クライアントの自動車メーカーに自信作を『企画が薄っぺらい』と駄目出し、なおかつプロジェクトから外されてプライド粉砕。
たかーーーく伸びた鼻をへし折られ、駄目出しをしたクライアント副社長が恨めしくて仕方がありません。

そこで逆恨みの佐久間氏、副社長の自宅までおしかけた。そしたら家の外では娘が家出の真っ最中。
「わたし本当の娘じゃないの!もう家に帰りたくない!」

一人で生きていく為の資金が欲しい娘。
恨み骨髄の副社長に一泡ふかせたい佐久間。
利害の一致した二人が手を組んで、さあ、これからどうゲームの駒を進めようか。

前述の通り、主人公の佐久間は禄でもない男なので、読者としては是非ともこの狂言誘拐が不首尾に終って頂きたいところです。
しかしながら、この小説に出てくる人物はどいつもこいつも、揃って性格が悪く禄でもない人間ばかりしか登場してきません。
ですから読んでいる側としては、いつの間にか「成功しようとしまいとどっちでもいいよ」という投げやりな気持ちに。
ラストのどんでん返し(があるのよ)につきましても、さらに登場人物全員の性格の悪さと性根のクズっぷりに磨きがかかるだけの脱力感。
いや、もう、好きにやってろと。
樹理ちゃんがあんまりにも可哀相じゃないか。

「いや、パーフェクトだ」おれはオーケーサインを作った。「手紙は持ってるな」
「うん、大丈夫」
彼女には手紙を持たせてある。そこにパソコンで書かれた文面は次のようなものだ。
『葛城勝俊様へ
 身代金はたしかに頂いた。そこで約束通り、葛城樹理を返還する。
 —(中略)— 楽しいゲームだった。以上をもって完了とする。今後こちらから連絡することはない。貴兄をゲーム相手に選ぶことも一切ないと約束しておく。誘拐者より』
「じゃあ、いよいよお別れだな」
「うん。元気でね」
「君のほうこそ、がんばって」
我々は握手をした。樹理はその手を見つめながら車を降りた。ありがとう、さようなら——

個人的に時代を感じて面白かった点は、佐久間が副社長とやりとりをする手段に関してです。
身代金の準備状況などの報告は、外車愛好家のウェブサイトに設置してあるBBS(掲示板)への書き込みによって行え、と佐久間が指示するのですね。
2000年はじめ頃には個人の趣味系サイトで、管理人や仲間との交流ができるBBSページを設置しているサイトが多かったものです。SNSが普及する以前ですし、ブログのように各記事にコメント欄をつける機能もありませんでした(筈)から。

佐久間側からの連絡手段としては、イラン人から飛ばしケータイを買って、今は亡きhotmailからメールを送る。
娘はケータイ電話は所有してはいるものの『どうせ電源切ってるし、公衆電話から電話かければ良いじゃん』と持参せず…お嬢ちゃん、今は街中に公衆電話がものすごーく少なくなっているのよお。公衆電話探すの、大変よ。

ちょっと昔の“最先端”なツールが出てくる小説は、ついつい本筋よりも枝葉に目がいってしまうのが困りモノです。
東野圭吾さん、ごめんなさい。

でも貴方が悪いのよ。登場する人物全てに共感ができないんだもの。
あれじゃ樹理ちゃんが、あんまりにも可哀相じゃない。

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レビュアー: さくら
さくら
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