有川浩「ラブコメ今昔」

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「自衛隊員の皆さんに恋愛や結婚の経験談を語ってもらいたいんです」。二等陸佐・今村和久の前に現れたのは、隊内紙の記者の元気娘・矢部千尋二等陸尉。訊けば、夫婦の馴れ初めを、コラムに掲載したいというのだが!?「みっともない」と逃げる今村、ねばる千尋。一歩もひかない攻防戦の顛末は―!?様々な思いが交錯する、自衛隊員の結婚を綴った表題作を含む、十人十色の恋模様6編を収録した、国を守る男女の本気印恋愛百景。
(「BOOK」データベースより)

「クジラの彼」に続く有川式裸足で逃げ出せきゅんきゅん系自衛隊ラブコメシリーズ第二弾。

第二弾も変わりなくベタ甘のドきゅんきゅん、直球ストレートでブン投げてきます。甘いよ~。寝る前には歯ァ磨けよ、のヤマザキシベリアパンだよ~。

第一弾となった『クジラの彼』で開き直ったのが功を奏したか、今ではかなりこっぱずかしい胸キュンを書いても「まあ有川だからな」と許してもらえることが多くなりました。お心の広い読者様に感謝します。カミングアウトしておいてよかった……!
(単行本版「ラブコメ今昔」あとがきより)

しかしながら「クジラの彼」に対して第二弾の「ラブコメ今昔」は、ベッタベタの甘さの中にちょっと隠し味のビターテイスト。
甘い、だけじゃない。すっごい甘いけど、甘いだけじゃない。
それは、自衛隊という物語の舞台がそうさせる、甘さだけですまされない『国を守る』人たちの恋愛ストーリーだからです。

自衛隊ラブコメシリーズ(なんてシリーズ名称だったのね)の執筆に際しては、自衛隊の方々にかなり食い込んで取材していた模様です。
小説のストーリや登場人物にも、殆どの場合実在のモデルがいるらしく、有川浩の取材を受けた自衛隊各処のインタビューイは、ほぼ絨毯爆撃的にネタにしたと「あとがき」で作者が…ってことは、この、このベタ甘が実在するってことか…っ!自衛隊すげえ…っ!

そして、その取材中に、有川さんが何度も何度も聞いたこと。
自衛隊のお仕事には、いつも“生命の危険”がついてまわります。
例えば収録作『秘め事』においても。

『秘め事』の主人公、陸上自衛隊UH60JAのパイロットである手島くんは、ちょっとした経緯から上官のお嬢さんと知り合い、そのままお付き合いをすることになります。

上司の娘とのナイショの交際。ちょっと言葉は悪いですが「男は上淫を好み、女は下淫を好む」の俗説通り、交際相手が上司の娘ってのはまあ色々と、通常の男女交際よりもスパイスが多めに振りかかる味わいがあります。
周囲に対して秘密というのも、またスリリングなお楽しみ。

そのまま甘いスリルを楽しんでいるだけだったら、この話は単なる普通のベタ甘ロマンスでしたが。

何で、俺はこんなものを見る羽目に陥ってるんだろう。

格納庫に作られた斎場で、白い菊の中に掲げられているのは黒縁の額に引き伸ばされた宮崎の写真だった。普通なら制服を着てきりっとした写真が選ばれることが多いのだが、細君の希望で変えられたという。
あの人らしい写真にしてください。
そして細君が選んだのは、いつものパイロットスーツで少し髪を崩し、朗らかに笑っている写真だった。

有川浩の自衛隊取材エピソード曰く。自衛隊のパイロットが訓練中に亡くなる事故というものは非常に多いそうです。一般人の私達でも、たま~に新聞記事で自衛隊機の事故を読むことがないわけじゃありませんが、どうやら新聞に載らない事故は「あたりまえのように」発生しているらしい。
『秘め事』の中でも、手島くんのパイロット仲間である宮崎さんが、エンジントラブルによる事故で殉職してしまいました。

地上に何より愛した家族を残して。
葬儀を見守りながら水田が涙をこらえて食い縛った歯の間から呟いた。

手島。手島、俺はな。
俺は、自分の娘だけには、こんな思いをさせたくない。
絶対にだ。

吐き出す相手がたまたま隣にいた手島だった、それだけだろう。
それでもそれは、太い釘になって手島を貫いた。

いや、ちょっと、ゴメン待ってて、ちょっと涙を拭くから(そっ)
甘々ラブラブで緩みきっていた頭の上に、重たい錘がドーンと落っこちてきたような気分よ。

自衛隊員だって、恋をする。自衛隊員に恋をする、人もいる。
でもその恋には、非・自衛隊員とは違い、厳然たるリスクをはらんでいる。
ベッタベタに甘い巨大チョコレートパフェのトッピングに、カカオ100%のカカオマスが入っていたような苦味。

さて、その後の手島くんとお嬢さんがどうなったのかというのは…あえて秘しますが、THE・青春!中村雅俊的な結末と申しておきましょう。
しかしどうして有川浩が描くオッサンってこんなにかっちょ良いのかしらね。萌えるわ~。

「ラブコメ今昔」の中には『秘め事』以外も、ブルーインパルスの奥さんの話とか、TVドラマ撮影の話とか、色々他にも語りたいストーリーはありますが。
いずれの話も、第二弾は「クジラ」に比べて隠し味にちょっとビターテイスト。

甘い、だけじゃない。すっごい甘いけど、甘いだけじゃない。
甘さと苦さを両方噛み締める、有川式国防レンアイです。

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レビュアー: さくら
さくら
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