早見和真「イノセント・デイズ」

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田中幸乃、30歳。元恋人の家に放火して妻と1歳の双子を殺めた罪で、彼女は死刑を宣告された。凶行の背景に何があったのか。産科医、義姉、中学時代の親友、元恋人の友人、刑務官ら彼女の人生に関わった人々の追想から浮かび上がる世論の虚妄、そしてあまりにも哀しい真実。幼なじみの弁護士たちが再審を求めて奔走するが、彼女は…筆舌に尽くせぬ孤独を描き抜いた慟哭の長篇ミステリー。日本推理作家協会賞受賞。
(「BOOK」データベースより)

「主文、被告人を——」

「覚悟のない十七歳の母のもと——」
「養父からの激しい暴力にさらされて——」
「中学時代には強盗致傷事件を——」
「罪なき過去の交際相手を——」
「その計画性と深い殺意を考えれば——」
「反省の様子はほとんど見られず——」
「証拠の信頼性は極めて高く——」

「死刑に処する——」

「イノセント・デイズ」は、放火殺人の罪を犯した死刑囚、田中幸乃が、死刑執行当日の朝を迎えるシーンからはじまります。
で、上記の台詞は、裁判長の判決主文。この小説の章タイトルにもなってます。

さて。
私はこの下で、「イノセント・デイズ」のネタバレ上等の三行要約をします。

『田中幸乃は放火犯として捕まりましたが、本当は彼女は放火犯ではありませんでした。
 でも彼女は死にたかったので、無実の罪を受け入れて逮捕されました。
 そして、首尾よく死刑執行されて死ねました。めでたしめでたし

警察、無能すぎねーかーーーーー?!

無能なのは何も警察だけではありません。
「イノセント・デイズ」は主人公の田中幸乃側からの視点での記述は殆どなく、章ごとに登場する彼女の関係者の話を積み上げて、周りから“死刑囚・田中幸乃の人生”を固めて行ってます。
周囲が語る田中幸乃の人物像からは、彼女が前述の判決主文から想像されるような人間ではないことが明白。つーか、幸乃ちゃん、これまで何か悪いことしてたことあるの?

登場人物達のエピソードは、その殆どが『誰にも明かせない秘密だけど、実は…』と隠蔽している気配もないので、ちょっと関係者の聞き込みをすれば容易にわかりそうなものばかり。
放火に至っては、何故にして彼女が逮捕されることとなったのかすらわからない。近所に居ただけよ?しかもグースカ寝てるよ、この人?!
警察も、検察も、やっつけ仕事はなはだしいですなあ。
メディアも、日頃の節操ないマスゴミ取材の勢いはどうした?頼むぜセンテンススプリング。

とはいえ、各所の無能さがあってこそ、田中幸乃が念願の死刑執行に至れましたので、彼女としては警察グッジョブ、検察グッジョブ、メディアグッジョブ、めでたしめでたしであります。

では何故、田中幸乃は死にたかったのか。

「人はだれからも必要とされないと死ぬんだとさ」

承認欲求の強い彼女は、他人から必要とされることに飢えておりました。

子供時分のいくつかのエピソードも『あなたが必要なの』の言葉でころっとほだされて、悪いほうに不利益なほうに転がっていきます。
長じてからも『俺にはお前が必要なんだよ』DVサイマーに共依存。ダメンズ養成ギプスですね。
まあ正直言ってしまえば、近くにいると至極便利な存在です。必要だのひとこと言えば、かいがいしく面倒はみてくれるし貢いではくれるし邪魔にはならないし、イザとなったら自分の罪をひっかぶってもくれる。
ああ~、田中幸乃のような存在が、私にも欲しい~。

私の感想を小ズルいとお思いでしょうか。
「イノセント・デイズ」の登場人物達も、似たりよったりですよ。
幼なじみの慎一くんは、幸乃を助けたいと色々やりはするものの、結局、幸乃に対しては桜の押し花あげるくらいがせいぜいですし。
幸乃以外の人に対しては、ってーのは、ここで書くことは差し控えますけどね。

ちなみに、今手元にある新潮文庫版の「イノセント・デイズ」の帯には、『読後、あまりの衝撃で3日ほど寝込みました…』と書かれています。
帯文を書いた人に言おう。多分、それ、夏風邪。

田中幸乃を都合よく使った周囲の人間もWINだし、死刑になれた田中幸乃もWIN。火事で死んだ母子3人を除いては、皆WIN-WINのハッピーエンドじゃないか。
読後感の悪さは否めませんが、悪寒がするなら夏風邪だ。お布団入って、おやすみなさい。

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レビュアー: さくら
さくら
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