宮部みゆき「地下街の雨」

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麻子は同じ職場で働いていた男と婚約をした。しかし挙式二週間前に突如破談になった。麻子は会社を辞め、ウエイトレスとして再び勤めはじめた。その店に「あの女」がやって来た…。この表題作「地下街の雨」はじめ「決して見えない」「ムクロバラ」「さよなら、キリハラさん」など七つの短篇。どの作品も都会の片隅で夢を信じて生きる人たちを描く、愛と幻想のストーリー。
(「BOOK」データベースより)

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「ずっと地下街にいると、雨が降りだしても、ずっと降っていても、全然気がつかないでしょ?それが、ある時、なんの気なしに隣の人を見てみると、濡れた傘を持ってる。ああ、雨なんだなって、その時初めてわかるの。それまでは、地上はいいお天気に決まってるって、思い込んでる。あたしの頭の上に雨が降ってるわけがない、なんてね」
おめでたいわね、と、彼女は言った。
「裏切られた時の気分と、よく似てるわ」

かつて私がデパート勤務をしていた時、外で雨が降り出すと館内BGMが『雨に唄えば』に変わりました。
それを合図に、お客様の購入商品を入れる紙袋にビニールをかぶせるのですね。
確か雨があがった際のBGMもあった筈ですが、そっちは忘れてしまいました。

そういえば、よく言われる“デパートあるある”では、上記のBGMの話以外にも『万引き客が入店した際の隠語放送』とか『クレーマー客が入店した際の隠語放送』とかが言い交わされておりますが、そういうネタはデパート勤務時代には全く教えてもらっていませんね。
あれは都市伝説なのかなあ。それとも私が知らなかっただけで、デパートの社員さん達だけが知っているネタだったのかしら。

閑話休題。宮部みゆきの「地下街の雨」は、表題作を含む7編の短編集です。
収められている短編は、ミステリ・ロマンス・ホラー・SF(?)と、なかなかに多彩。玉石混合…いや、玉玉混合と言っておきましょうか。
単行本の初版は1994年。「火車」のちょっと後くらいに出された本ですね。
最近の宮部みゆきはながーいながーい長編もしくは連作短編が多くて、こういう“ひとまとめ”の短編集がないのがちょっと残念。長編は長編で良いけれど、短編集って、長編とはまた違う楽しみがありますよねえ?

表題作の「地下街の雨」は、女性の心情を描いてしっとり系の、表題作“らしい”短編です。
でも私は結構「混線」という一編も好きだったりします。

あなたの電話も、ときどき混線しますでしょう?あれは、全部が全部、本物の混線ではないんですよ。聞こえる声の中には、助けを求める絶望的な叫びも混じっているんです。罰を受けている人たちの。ね。
耳を澄まして、注意をはらって聞いていれば、きっと聞こえるはずです。

舞台はまだ携帯電話が普及していない日本。女性の一人暮らしの家に毎晩かかってくる卑猥なイタズラ電話。
そういう悪さをしていると、電話の神様が怒っちゃいます。

だって日本には八百万の神さまがいらっしゃいますしね。お米のひとつぶひとつぶにも7人の神さまがいるならば、八百万どころの騒ぎじゃない。
世の中の全ての物体や事柄に神が宿っているならば、固定電話にだって神さまがいて不思議じゃないです。
でも電話の特許をグラハム・ベルさんが出したのは1876年。まだ140年しかたっていません。森羅万象からすれば若い若い。
だから電話の精も、まだちびっこちゃんなんですよ。

真っ黒な服を着た、小さくて華奢で、はっとするほどきれいな顔立ちの女の子。ここで黒い服を着ているのは黒電話モチーフなんでしょうか。
この電話の精、自分の縄張りを荒らされるのを厭います。イタズラ電話なんて言語道断。
「アタシを使ってなんてコトしてるのよっ!」

だからねえ。イタズラ電話の犯人に電話の精が下す制裁は、恐ろしいですよ。
詳しくは明かせません、例えて言うならトコロテン?説明し難いなあ。
泉昌之の「狂った肛門」を読んだことがある人は想像がつきやすいような気がしますが、そもそもそんな漫画を読んだ人を探すほうが大変な気がします。
なので、電話の精の自浄作用の手段は、実際に読んでお確かめください。最後に出てくるちっちゃな白い手が、かわいーよ。

この本の時代から20年以上たった現代では、既に固定電話よりも携帯電話、さらにはスマホの方があたりまえになりました。
固定電話の美少女ちゃんも、ちょっとはオトナになったかしら?
スマホちゃんは妹なのかしら。弟なのかしら。まだ赤ちゃんのような気がしますが、スマホちゃんは美少女というより、残念ながらジョブズ似の気がしてならない。あー残念だ。

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レビュアー: さくら
さくら
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