宮部みゆき「ソロモンの偽証」

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クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か。自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行”を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった―。一つの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意。それに抗し、死の真相を求める生徒達を描く、現代ミステリーの最高峰。
(「BOOK」データベースより)

160813

長い。長すぎる。
ハードカバー3巻合計2,178ページ。読みきるにも体力が必要です。
これから「ソロモンの偽証」をお読みになる方にご忠告。読む前にはしっかり睡眠をとって、ご飯をたっぷり食べて、オリンピックに挑むアスリートの気持ちでページを開くことをおすすめします。
読書はスポーツだ。

にしても宮部センセイ、こりゃいくらなんでも長すぎやしませんかい?
こう言ってはなんだが、所詮はひとつの殺人事件の、ひとつの中学生夏休みの課外活動だ。
大河歴史小説じゃあるまいし、主題とページ分量のバランスが悪すぎる。
エピソードとサイドストーリーを全て書けば説明がつくって考えは、上映時間2時間の尺に押し込める為に涙を飲んで編集する映画マンからすれば怠慢と見てとれましょう。
五・七・五で世界を表現する俳句の先生に学んで頂きたいものだわ、全く。

…と、読後にヒットポイントが大幅に削られて、疲労感甚だしいさくらのボヤきでした。
ひらたく言えば八つ当たりですね。宮部みゆきさんごめんなさい。

軽々しくヒトサマにおすすめできないほどのページ分量ではありますが、それにも負けず読み始めようとするアスリートの皆様には、走り終えて後悔をする恐れはないことだけお伝えしておきましょう。
マラソンランナーが走る42.195キロは、ただ単調なだけでなく、行く道も見える景色も、他のランナーとの駆け引きだって、ある。

はじまりは冬休みの12月24日。クリスマスイブの夜。
おしまいは夏休みの8月20日。
舞台は中学校。

その中学校で、一人の生徒が死んだ。
当初は自殺として処理された筈が、彼をイジメていた首謀者がその死に関わっているのではないかとの噂が広まり始めます。
殺人を糾弾する告発状がテレビ番組に送られたことから、メディアの取材が過熱し、中学校全体で燃え上がる、噂と、疑惑と、悪意の炎。

その炎はイジメ首謀者の自宅に飛び火し、焼け落ちた家屋で一人の老女が死亡する。
さらに、その炎は車の形をとって、ひとりの女子生徒を跳ね飛ばす。

「もう、たくさんよ」
そうだ。もっとも言いたかった言葉はこれだ。これだった。

死んだ生徒の元クラス委員 藤野涼子が、学校内裁判を開くことを提案します。
死んだ生徒は果たして自殺だったのか、事故だったのか、それとも殺人なのか。その犯人は、果たしてイジメ首謀者の大本なのか。

心を決めて、良子は跳んだ。
「あたしたちで真相をつかもうよ」
ふわりと目眩がした。口を半開きにしたみんなの顔が、ぐるりと揺れた。
「調べようよ、みんなで」

もちろん、実際の事件を中学生が本当に裁判にかけられる訳ではありません。あくまでも夏休みの課外活動としての模擬裁判。
だけど学校側としては、それは諸方面で都合が悪いと思われるのは必至。当然のことながら中止すべく圧力がかかります。
学校内活動としての模擬裁判を、如何に学校側に認めさせるか。そしてド素人の中学生が、実際の事件をどうやって調べるか。
幾人かの大人の協力者はいながらも、基本的には自分たちで動き、調べ、悩む。
お遊びの裁判をするんじゃなくて、マジな裁判をする。だって事件はお遊びじゃなくて、マジだから。

話は変わりまして、この「ソロモンの偽証」が起こった時代は、バブル崩壊の前夜です。
当時の世情が、この事件全体に大きく影響しています。地上げ、株の高騰、消費こそ是の風潮。
ですがねえ。当時の風俗を経験した者としてひとつだけ納得しかねるのは、被告・大本の元カノ恵子ちゃん。
不良少女の彼女が着ている制服のスカートの丈が『床に届いてしまいそうな』…って、バブル崩壊前夜の時代、既にしてスカート丈は短くなっていたのではないかい?
少なくとも私が高校生だった(ちなみに さくら高校3年生の夏に光ゲンジがデビュー。わぁびっくり)時には、もうスカートは短いほうがトレンドだったよ。同じ東京都でも渋谷区と墨田区では流行に時差があるってことか?

閑話休題。
事件と裁判の行方、そして結末については、おそらくハードカバーの第Ⅱ部まで(文庫本だったら多分3巻まで)で検討がつくと思います。
キーマンの謎めいた行動と言動が、かなりあからさまに描かれているので。そもそもタイトルからして「ソロモンの偽証」だし。

だから「ソロモンの偽証」に『衝撃の結末!』とか『びっくりポンの大どんでんがえし!』を期待する向きには物足りないかもしれない。この小説は謎解きがテーマじゃないんだよ。

じゃあ、何がテーマなのかって?
そりゃあ、何だろうねえ。強いて言えば“ひと夏の経験”かな。

振り向いて、彼が涼子を見た。一瞬だけ目が合った。その目は何も語っていなかった。新しいことは何も。
謝っていた。労っていた。そして喜んでいた。ホラ、言ったとおりだろ?藤野さんの勝ちだよ。
だけど、あんたも負けはしなかったと、涼子は心の中で言った。
—(中略)—
涼子は目を閉じた。深く息をして、二度と味わうことのないこの法廷の空気を、胸いっぱいに吸い込んだ。
そして吐き出した。裁判は終わったのだ。
もう、夏も終わる。

大人になっちゃってから口に出すのも気恥ずかしい思春期ってヤツに、飲み込まれる者もいる。波にさらわれて戻ってこれなかった者もいる。
だけど、それに闘いを挑んで、波を乗り越えていく者もいる。
「ソロモンの偽証」は、幾人かの中学生に襲い掛かったビッグウェーブと、それを乗り越えた冬から夏の、お話。

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レビュアー: さくら
さくら
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