宮部みゆき「おそろし 三島屋変調百物語事始」

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17歳のおちかは、ある事件を境に、ぴたりと他人に心を閉ざした。ふさぎ込む日々を、叔父夫婦が江戸で営む袋物屋「三島屋」に身を寄せ、黙々と働くことでやり過ごしている。ある日、叔父の伊兵衛はおちかに、これから訪ねてくるという客の応対を任せると告げ、出かけてしまう。客と会ったおちかは、次第にその話に引き込まれていき、いつしか次々に訪れる客のふしぎ話は、おちかの心を溶かし始める。三島屋百物語、ここに開幕!
(角川文庫巻末紹介より)

おそろし 三島屋変調百物語事始

この9月から、我が家で購読している毎日新聞の朝刊で新しい新聞連載が始まりまして。

宮部みゆきの「黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続」 
今回ご紹介する“三島屋変調百物語”シリーズ第6作目でございます。

私はこのシリーズ、この「おそろし」と第2作の「あんじゅう」までは読んでおりましたが、3作目以降は読んだ記憶が定かにございません。
なーんとなく読み過ごしているうちに時は立ち、いつの間にやらもう6作目ですか。

で、久しぶりの三島屋シリーズ。新聞連載でシリーズ続き物をやるってのもなかなか剛毅だなと思いつつ朝刊を広げてみると…。

おや?百物語の聞き手が、おちかちゃんから変わってる?
あれれ?おちかちゃんって、もう三島屋に居ないの?
あらまあ!おちかちゃんお嫁に行ったんですか!そりゃあ目出度い!良かったねえおちかちゃん~!

と、転校していった小学校の同級生の消息を聞いたような気分でございます。
この「おそろし」では、おちかちゃんも辛い思いを忘れられずに苦しんでいたので、晴れてお嫁に行ったと聞くのは誠に嬉しい限りです。
あれかねえ、お相手はやっぱり、あの錠前屋の孫息子かねえ。うっうっ良かったねえおちかちゃん、幸せにおなりよぉ~(手を振る)

おちかちゃんの消息を聞いたところで、久しぶりに読み返してみようかな。百物語の事始。

「わたしはただ、お話を聞いただけです」
「だが、考えてごらん。なぜ松田屋さんがおまえを選んだのか」
悲しみは相通じると、一昨日、伊兵衛にそう言われたばかりだった。
——お嬢さんは優しい方だ。
藤吉の、温かな声音が耳元に蘇る。
——こんな話などするべきではなかった。
狼狽して案じるときには、痩せた顔からさらに色が抜けていた。
「おちか」
呼ばれて、おちかは背を伸ばした。
「おまえもいつか、そうできると良いね」
「叔父さん……」
「おまえにも、誰かにすっかり心の内を吐き出して、晴れ晴れと解き放たれるときが来るといい。きっとそのときが来るはずだが、いつ来るのかはわからない。そしてその役割は、ただ事情を知っているというだけの、私やお民では果たすことができないのだろう。おまえが誰かを選び、その誰かが、おまえの心の底に凝った悲しみをほぐしてくれる」

お江戸は神田、三島町の袋物問屋に身を寄せている主人公のおちかちゃん。
奉公人と一緒に働いてはいますが、本当は三島屋主人の姪っ子ちゃん。

ちょっといろいろと過去のいきさつがありまして、実家を離れて三島屋に身を寄せております。
何が彼女に起きたのかってのは、この本の中途まで読めばすぐに分かる話なので、ここでは割愛。
過去に起こった事件により、実家に居られなくなり(心情的に)とはいえ華のお江戸でお嬢さん暮らしをすることも出来ず、お嬢さんと奉公人の宙ぶらりんな立場で鬱屈しています。

三島屋さんの2階には、主人の碁道楽に使う「黒白の間」があります、
ほら、碁石が白黒だからね。オシャンティーな名付けね。

そこで語られる“百物語”の聞き手に選ばれたのが、おちかちゃん。
これは主人の道楽というよりも、おちかの心の傷を癒すための荒療治の狙いが(いや、本当は主人の道楽なのかな)

百物語の物語を百聞けば、おちかの凍てついた心は溶かされるのでしょうか?
友達100人、できるかな?

“百物語”というからには、語られる題材はちとオカルトめいたものが揃っています。
すっごい怖い、わけじゃない。ちとオカルト。ちと不思議。ちょっとだけ、怖い。

「安藤坂の屋敷は、今もちゃんとございます」と、おたかは言った。「土蔵には、あなたによく似合う着物がたくさんしまってございます。あなたもあの家によくお似合いです。あの美しい庭も、あなたを気に入ることでございましょうよ、おちかさん」
おいでなさいましな。
おたかはおちかの耳元で囁いた。睦言のような甘やかな響きだ。
「あたしと一緒においでなさいまし。そしてあの屋敷で暮らすんです。何も怖いことなんかございません。すっかり申し上げましたでしょう?

第二話『凶宅』で語られる不思議なお屋敷の話は、その後「おそろし 三島屋変調百物語事始」のラストまで引きずります。
というより、三島屋シリーズ全体を通して引っ張りそうな予感がヒシヒシしておりますが。

なかなかね、『凶宅』から話題がリターンする第五話『家鳴り』が良いんですよ。突然ファンタジックな感じになってね。
おちかが心を閉ざす所以となった事件の当事者が、いきなり場所も時間も時空も超えて飛んできたりしてね。

「おそろし」で登場した主要人物と、その関係者(生者死者問わず)が一同に介して、おちかと一緒に物の怪に相対して戦う……

そうだ!これはプリキュアオールスターズだ!

この蜜柑は、想いの塊だ。この温もりは、心の温もりだ。
おちかがふたつ目の蜜柑の方へ踏み出すと、さらなる蜜柑が転がってきて止まり、転がってきて止まり、先へ先へと列をつくり始めた。みるみるうちに、丸く愛らしい点々のつながった、蜜柑の道しるべができあがった。
あたしを案じ、あたしを呼んでくれている人たちが、この蜜柑を転がしている。
「行きましょう!」
おちかはおたかに笑顔を向けると、しっかりと手を握り合って駆け出した。

『みんなの心がひとつになれば、敵だって怖くない!』とか、プリキュア映画のクライマックスでリーダーが叫ぶような、アレ、アレですね。
もしくはドラゴンボールの『オラに元気玉を分けてくれ!』みたいな。

いや茶化してるわけじゃなくてね。なかなかね、良いんですよ。
おちかちゃんもそのおかげで、過去の事件との心の折り合いがつけられるようになりましたしね。
娘と一緒に映画館でミラクルライト(プリキュア応援アイテム)振ってた母としては、安藤坂の屋敷でおちかちゃんにミラクルライト振りたい気分でしたよ。

そのおちかちゃんが嫁に行ったと聞くのは『ふたりはプリキュア』のキュアブラック(なぎさ)とキュアホワイト(ほのか)が嫁入りしたと聞くような気持ちです。
あな嬉しや懐かしや。明るい未来を知った上で、改めて三島屋シリーズを読んでいこう。あと5作読んで、毎日新聞の連載中に追いつくんだ。
プリキュアシリーズを観返すかどうかは、分からないけどね。

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レビュアー: さくら
さくら
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