坂木司「和菓子のアン」

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デパ地下の和菓子店「みつ屋」で働き始めた梅本杏子(通称アンちゃん)は、ちょっぴり(?)太めの十八歳。プロフェッショナルだけど個性的すぎる店長や同僚に囲まれる日々の中、歴史と遊び心に満ちた和菓子の奥深い魅力に目覚めていく。謎めいたお客さんたちの言動に秘められた意外な真相とは?読めば思わず和菓子屋さんに走りたくなる、美味しいお仕事ミステリー。
(「BOOK」データベースより)

161024

100%の娯楽小説が読みたいなあ、って時があります。
考えさせられたり、ハラハラしたり、切なくなったりするのはご勘弁。クスクス笑ってアハハと笑って、のーんびりと本の世界に浸かりたいような時。

熱めの温泉も良いけれど、ぬるま湯で半身浴も時にはアリってことで。
「和菓子のアン」は、そんなのーんびり気分に丁度良しのお話です。

私、梅本京子。十八歳。身長百五十センチ。体重五十七キログラム。小学校の頃のあだ名は「コロちゃん」。才能も彼氏も身長もないくせに、贅肉だけは売るほどある。
……買う?

主人公の梅本さんは、高校を卒業してそのままフリーター道を歩み始めました。
大学に行くのも「ピンとこない」かといって就職するのも「ピンとこない」

「ピンとこないのはあたしもおんなじだよ。だからそれを考える時間として、大学はあるんじゃないの」
うん、それはわかる。うちのお母さんが私に進学してほしいって言ったのも、多分同じ理由だ。でもね、大学ってお金かかるんだよ?私はのほほんと育ったけど、お父さんが毎日会社に行くところやお母さんがパートで働いているところを見てきてる。そう考えたら、せめてバイトでもしながら「ピンとくる何か」を探した方がいいと思ったんだ。

のほほんとしているようで、梅本さん割とまっとうな考え方をしています。
昨今の大学全入時代に、結構なハイリスクの人生選択をしているような気もしますが、そーだよね。どの家庭も「ピンとこない」子供のために高い学費払っている状況自体がおかしいっちゃーおかしいものね。
高卒フリーターの是非は置いておくとして、彼女のまっとうな考え方というのは、この本全体を通して良い感じの風を通しています。

で、とりあえず入り込んだデパートの和菓子売り場。デパ地下お菓子売り場の中でも、独立ブースを持った比較的高級系の和菓子屋さんです。鶴屋吉信とか叶匠寿庵あたりがイメージでしょうか。
で、そこでつけられたあだ名が『アンちゃん』危うく定着しそうになった元々のあだ名は『あんこちゃん』
ちょっと(?)ぽっちゃりのふくふく系で、和菓子がとっても大好きなアンちゃんが、働きながら和菓子のあれこれに触れて成長するお仕事紹介系ストーリーです。

なおかつ、一緒に働く上司や同僚の面々も、『いかにも上品そうな見かけの女性店長の中身はおっさん』から『マダムに人気のイケメン店員の中身は乙女』またまた『可愛い系女子大生バイトの過去は元ヤン』と、ちょいと歯ざわりの違うおかきやあられなども、色々取り揃えられておりますですよ。

「和菓子のアン」では、短編ごとに和菓子の種類や名前の由来が登場して、それを読むだけでも「へーふーんほー」の楽しみはありますが、もうひとつのお楽しみは、デパートの裏側探訪です。
明かりがピッカピカに点いて綺麗に飾り付けられたデパートも、いざ裏側に入ると薄暗くって素っ気無いバックスペースでして。
店員さんのビニール製透明カバンとか、煙草のけむりモウモウの休憩室とか、一時期デパート勤務をしていた私としてもちょっと懐かしい小ネタが沢山出てきます。

トイレの隠語を『遠方』って呼んだりね。この小説の中では出てきませんでしたが、私が通っていたデパートでは食事休憩のことを『キザ』って呼んでいました。『なんとか・きざえもん』って人が昔々の食堂料理長だったのが由来だとかなんだとか。

和菓子のあれこれも楽し、デパートのあれこれも楽し。
アンちゃんの賢くてまっとうな働きっぷりも、また楽し。

上司や同僚にはまだ色々と秘密がありそうですが、それはそれで次作のお楽しみと致しましょう。
急がないよ、和菓子食べながらのんびりと待ちましょう。

だってこれは『アン・シリーズ』
赤毛のアンだったらシリーズ10冊ありますからね。和菓子のアンちゃんも、のんびり10冊楽しませてくれるでしょ?

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レビュアー: さくら
さくら
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