井上夢人「魔法使いの弟子たち」

スポンサーリンク

山梨県内で発生した致死率百パーセント近い新興感染症。生還者のウィルスから有効なワクチンが作られ拡大を防ぐが、発生当初の“竜脳炎”感染者で意識が戻ったのは、三名だけだった。病院内での隔離生活を続ける彼ら三名は、「後遺症」として不思議な能力を身につけていることに気づき始める。壮大なる井上ワールド、驚愕の終末―。
「BOOK」データベースより)

山梨県竜王市の竜王大学病院を起源として流行した感染症だから、竜脳炎。
WHOの正式名称はドラゴンウィルス脳炎(dragonviral encephalitis-ドラゴンヴァイラル インセファライティス。言い辛い)

だから、病原体のウィルスは、ドラゴンウィルス。

かっちょ良え。

いかす名前の名に恥じず、その威力はハンパない。なんと致死率ほぼ100%です。まるで「生存者ゼロ」の世界…こっちは本当にちゃんとウィルスですけど。
そして、初期感染者の生き残りには、ある『後遺症』がありました。

「実は」と梅澤医師が五人に向き直った。「ここにおられる三人——興津さん、仲屋さん。落合さんは、いずれも竜脳炎を克服されると同時に、ある種の能力を獲得されたのです。私たちは、一応、その獲得した能力を、竜脳炎の後遺症と呼んだりもしていますが、通常の病気が引き起こす後遺症と、三人のそれはまったく性格が違っています。興津さんの場合は、若返りという形で後遺症が現れたのですが、落合めぐみさんの場合は、これも信じられないような、驚くべき能力を獲得することになりました」

上記で言及された興津さん。若返りのレベルが凄すぎる。93歳の認知症患者が、およそ30代頭くらいのピッチピチに変貌しました。ホントはもう一個能力があるんだけど、それは割愛。

落合めぐみさんの『驚くべき能力』も、これまた凄い。簡単に言えばテレキネシス(念力)ですが、スプーン曲げるどころの話じゃない。鉛筆をちょうちょ結びにすることだって、巨大水槽の“水だけ”を浮かび上がられることもできます。
多分、ね。きっとその気になれば、地球も割れるぜ、このヒト。

主人公の仲屋くん。彼が得た後遺症は…透視?いや、物を透かして見るのではなく、人や物の残存記憶を視ることができます。訓練が進む内には、時間を遡って好きな一定の時期に焦点を当てることも可能に。
さらには、過去だけでなく未来の記憶でさえも!

未来を透視する——。
京介の能力は、占いの範疇を遙かに超えている。検証など、まったく行っていないが、京介の見た未来は、間違いなく見たままに発現するだろう。過去の透視に間違いがないように、未来の透視の信頼性にも疑う余地はない。占いは<当たるも八卦>だが、京介の透視に外れはない。
だからこその透視野力の現実が、京介の気持ちを沈ませた。

しかしこの小説「魔法使いの弟子たち」は、彼等の超能力が主題となった物語なのかというと、それもまた違います。
実はしばらく後に、3人に共通する、ある能力が明らかになって行くのです。

この能力、人類最強。
彼等3人、世界に敵なし。

彼等が得た史上最強の能力は何だ、ってーのはさておいて。
「魔法使いの弟子たち」のストーリーでは、ひとつだけ謎な点があるのですよ。

感染初期には致死率ほぼ100%だった竜脳炎の生き残り4名は、その内ひとりを媒体として感染した人たちなんですね。未だ意識不明の木幡耕三さん。
初期感染者だけで372人が死に、第二次パンデミックでは日本の人口の15%が失われるというん恐ろしいウィルスにかかっても生きのびた4名。その4名が木幡耕三に何らかの関わりを持っているとするならば、そりゃ木幡さんに何か“生きのびる要因”があったと考えてもおかしくはないのじゃないでしょうか?

「木幡に秘密が?!」と期待して読み進めていた私でしたが、結局のところ、彼は大きな役割を果たすこともなく、途中でさっさと死んじゃいます。
あれー?どうしてー?3人が生き残ったのって、ただの偶然ー?!

ちなみに木幡さんは、ドラゴンウィルスの発生には大きく関わってますが、感染後については別に関係なかったみたい。ちょっと肩すかし。

さて。

先ほど申し上げた「人類最強の能力」によって、3人は自らの意図ではなく、一般社会からどんどん追い込まれて行きます。
世界に敵なしではあっても、それすなわち、世界に味方ありとはいかないんだな。

そうこうしている間に、一旦は落ち着いていたドラゴンウィルスが再び活動を開始し始めます。
今度の流行はさらに巨大。竜王市から広がり、山梨県から主要都市へ、日本全国に拡大し、さらに海を超えグローバル・パンデミック。

政治家や官僚、企業の役員たちの相次ぐ死亡により国の機能はマヒし、世界中の国々が、なだれ込むように日本の惨状に続く事態。
この先、日本は、世界は、どうなるの?

「じゃあ、言うよ。俺だって気になった。この先、人類の運命がどうなるのか、気になって仕方がなかった。だから、何度も透視をやった。世界中のいろんなところの未来を見に行った。数え切れないほど見てみたんだ。めぐみちゃんが勝てない相手は運命だよ。運命には勝てない」
「やっぱり……未来はないってこと?」

人類に未来はないのかどうか、は、京介の“後遺症”をどう活用するかにかかっています。
どう活用するのかは、秘密。いや本当にどう活用するのかというのは、実際に読んでも分からないのだけれど。

でも、京介が“後遺症”を活用することは、ちゃんと分かっています。ラストのもっと前、およそ320ページほど前に。

京介は、頷きながら手に持っていた草を川に投げた。
未来は、変えられるのだ。

京介が以前に透視した内容は、人類の危機において京介が“後遺症”を活用しない限り、ありえない未来。
どう活用するのかは、秘密。

この記事が気に入ったら シェアをお願いします♪

フォローする

スポンサーリンク
レビュアー: さくら
さくら
レビュアー:さくら
ほんのむしの書評を楽しんで頂けましたら、また読みに来て頂ければ幸いです。皆様のお声がさくらの『やる気スイッチ』です!

いいね!と思ったらぽちっとな♪
以下のブログランキングに参加しています。
皆様のクリックがさくらの励みになります♪
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  
トップへ戻る