五十嵐貴久「リターン」

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高尾で発見された手足と顔がない死体、それは、10年前ストーカー・リカに拉致された本間だった。警察官を殺し、雲隠れしていたリカを追い続けてきたコールドケース捜査班の尚美は、同僚の孝子と共に捜査に加わる。捜査が難航する中、孝子と結婚の約束をした恋人・捜査一課の奥山から連絡が途絶えた。彼の自宅に向かった二人が発見したのは…。
(「BOOK」データベースより)

161121

ワクワクのリカちゃん電話、10年ぶりの復活でございます。

「リカ」のホラーサスペンス大賞受賞より10年。続編を待ち望む読者に『ホラーをやりたかった訳じゃない』とじらしてじらして10年。
ようやっと忘れた頃にかえってきたよ我らがリカちゃん。
もーう、五十嵐さんったら、吉原の花魁だってこんなにじらしはしないぜ?

さて。
リアルの年月でも10年がたち、作中の世界でも10年がたちました。
「リカ」のラストでダルマ男にされてしまった本間さん、あれから元気にしていたかしら?

「どこに隠れていたのかは不明だが、この十年、リカは本間と共に暮らしていた。手も足もない本間とだ。目もなく、舌も耳もない本間とどんなコミュニケーションを取っていたかはわからないが、とにかく奇妙な同棲生活を送っていた。十年が経った。十年だ」
十年。長すぎる年月だ。
「そして本間隆雄が死んだ」

えっ。本間さん、生きてたんですか?!
引用の通り、両腕両足だけでなく目、耳、、鼻、舌も削ぎ落とされてリカちゃんにお持ち帰りされてしまった本間さん、ずいぶん長生き。正直、とっくのとうに死んでいるものとばかり思ってましたよ。
リカちゃんの介護能力に脱帽です。すげーよリカ。

ちなみに人間の嗅覚には「嗅覚疲労」なる性質があるそうです。いわゆる『鼻が慣れる』って奴ですね。
だから本間さんも、リカちゃんの特徴である『魚の腐ったような強烈な腐臭』にも、10年たてばだいぶ慣れていたのではないでしょうか。慣れていたことを祈ります。だって、死ぬまでクサいなんて、嫌じゃないですか。

10年の献身的な介護もむなしく、お食事を喉に詰まらせて本間さんはお亡くなりになってしまわれました。うーむリカちゃん最大の不覚。
で、邪魔な死体はさっさと近所の山に不法投棄して、新たな出逢いを求めて出会い系サイトの海に船を漕ぎ出すリカちゃんです。

雑な捨て方したもんだから、死体は直ちに発見。
10年ぶりの本間さんリターンに、警視庁は色めきたって…。

こう言ってはなんですけどね。
私はね、続編「リターン」には、大いなる不満がありますよ。

だってリカちゃん殆ど出てこないんだもの!
ラストに出てきても、何だか普通の人みたいなんだもの!
なんだかもの哀しい気がするんだもの!
拳銃の弾をたった12発くらい撃ち込まれただけで、あっさり死んじゃうんだもの!

10年という歳月によって、私の中のリカちゃんが大きな幻影と化していたのは事実。中学生の甘酸っぱい初恋が美化されているのと同じでしょう。
だから「リターン」のリカが、『悪魔の毒々モンスター』みたいな超B級ナンセンスな化け物でなかったとしても、そりゃ私の勝手な夢想に過ぎなかったのは分かる。

だが、しかしだね五十嵐くん?!
あのリカちゃんが、“あの”リカちゃんが、女刑事の眼球を麻酔無しで抉り出すくらいで満足するなんて、あまりにも手ぬるくございませんか?!
しかも拳銃で撃たれた(12発)くらいで死ぬなんて、あまりにも軟弱じゃありませんか?!

メスが近づいてきた。右だ。右目を狙っている。メスがぼやける。焦点が合わない。目がかすむ。お願い、やめて。誰か。この女を止めて。

しかしまぁ考えてみれば、映画「サンゲリア」の目玉突き刺しシーンよりもエグい「リターン」の眼球くりぬきシーンが、リカちゃんの中では『ちょっとしたエピソード』程度にしか感じられないという読者の過剰な期待感こそが、作者五十嵐貴久氏の、そしてリカの不幸だ。
ごめんよ五十嵐くん。ごめんよリカ。
僕の心の中で、君が大きくなりすぎてしまったんだ。まるで15歳の初恋のように。

愛していると伝えよう。彼は受け入れてくれる。わたしたちは愛し合える。愛とは、そういうことを言うのだ。

だから「リターン」の「リターン」で、リカちゃんの華麗なる復活。リターン→リターンすればぐるっとまわって360度。ほうら、何度でも楽しめる。
大丈夫、リカならきっと出来る。たった12発の弾丸に負けちゃ駄目。人間やる気よ。リアリティとか信憑性なんて、そんなのクソくらえだわ。

待っていると伝えよう。リカは受け入れてくれる。わたしたちは楽しめる。リターンとは、そういうことを言うのだ。

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レビュアー: さくら
さくら
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