マルグリット・デュラス「愛人-ラマン」

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18歳でわたしは年老いた―。あの青年と出会ったのは、靄にけむる暑い光のなか、メコン河の渡し船のうえだった。すべてが、死ぬほどの欲情と悦楽の物語が、そのときからはじまった…。仏領インドシナを舞台に、15歳のときの、金持の中国人青年との最初の性愛経験を語った自伝的作品。センセーションをまきおこし、フランスで150万部のベストセラー。J・J・アノー監督による映画化。
(「BOOK」データベースより)

161023

昔、私が子供の頃には、時折テレビで映画「エマニエル夫人」が放映されていたものです。
「エマニエル夫人」をよもやご存知でない方もいるかしら?70年代に一世を風靡した桃色映画。『ふっふふっふふふっふっ、えまにゅえ~る♪』(これじゃ何だかわからんな)の主題歌はきっと、現在40オーバーの方々は皆ハミングできるはず。
ゴールデンタイムのお茶の間に堂々とエロ映画を流すという昭和のおおらかさは、今ではちょっと想像すらできないですね。
当時はテレビも一家に1台。放映当日に家族の不在を祈った昔が懐かしい。

で、「愛人-ラマン」ですが。
こっちは「エマニエル夫人」よりおよそ20年後に公開されたフランス映画。時代が変わってもフランス映画はやっぱりジュテームモナムール=エロの祭典ですね!
さすがにお茶の間タイムにテレビ放映されることはありませんでしたが、女性向け桃色映画としてブームになり、世の女性達がこぞって映画館に馳せ参じたものです。かくいう私も。香港俳優のレオン・カーフェイが超カッコ良かったよ。尻が。

最近、久しぶりに映画「愛人-ラマン」を観て『そういえば原作読んだことなかったな』と、今さらになって思い至りました。

男はおぞましい愛のなかにいる。

書籍の解説文によると、この本はもともと写真集の出版を企画したことが元で生まれた作品だそうです。
デュラスの幼少期から現代(その時点で)に至るまでの写真と、デュラスの監督した映画の静止画とスチール写真を集めて、デュラス本人が写真のコメントを書くという、まあ、言ってみればカネのかからない最近の動画サイトまとめ番組みたいなもの。

膨大な写真を前に、デュラスが来し方のあれこれを思い浮かべるにつれ、掘り起こされた過去の記憶。
ベトナムに暮らしていた少女期に、中国男の愛人『の・ようなもの(by森田芳光)』であった過去を主軸に据えて、大幅に企画変更された自伝が、この「愛人-ラマン」です。

先ほどの出版経緯の関係上「愛人-ラマン」では、デュラスの幼少期と若き日の写真が巻頭に掲載されています。
“ショロンの愛人”とは全く関係ない時代の家族写真が載っているのは、そもそも本の企画が写真付き自伝であったからでしょう。
内容についても、“ショロンの愛人”との交流は、書籍タイトルで冠している割にはページ数でも重要度合いでも、そう多くはなく、どちらかと言えばデュラスの母と兄達との関係性に多く割り振られています。
詐欺まがいで悪い土地を買わされた母と、DV気質の長兄、若草物語のベス的な次兄との生活と、その状況下で「金のため」に愛人生活を送るデュラスですが、実際のところ“わたし”が愛人から金銭を得ていたのかどうかは判然としません。いや状況的に金銭のやりとりが無かった筈はないし、それを思わせる記述もあるんですが、むしろ快楽に対する積極性は“わたし”の方が高い。
ぶっちゃけ、中国男はチ○○(伏字)ついてりゃー良し、金オマケ。

男は娘をじっと見つめる。両の眼を閉じて、それでも娘をじっと見つめている。娘の顔の匂いを呼吸する。娘を呼吸する、眼を閉じて娘の息づかいを、娘から発してくるあの熱い空気を呼吸する。男にはこの身体の限界線がしだいに定かにはは見分けられなくなる。この身体はほかの女たちの身体とはちがう、有限ではない、部屋のなかでさらに大きくなってゆく、これはまだ定まったかたちをもたない、たえずつくられつつある、いま眼にしているここにある、というだけでなく、ほかのところにもある、視野の範囲をはるかに越えて、戯れのほうへ、死のほうへとひろがってゆく、この身体はしなやかだ、この身体はまるで年齢を積んだ女の身体のように、まるごと悦楽のなかへと旅立つ、この身体には悪意がなく、恐ろしいほどの知力を備えている。

「愛人-ラマン」は、老年期のデュラスが少女期の自分を回想した自伝なので、熱情からは一歩引いた俯瞰的視線で綴られています。
性交時の描写も上に引用した通りですので、原作を読んでエロ性を感じるところは少ないでしょう。それは映画でも同じなんだけど。

美しくはあるが、エロくはない。愛ではあるが、片思い。
そこらへんが「エマニエル夫人」とはちょっと違うところ。
もし「愛人-ラマン」がお茶の間に映ったとしても、桃色小学生が果たして喜んだであろうかは疑問…かな?

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レビュアー: さくら
さくら
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