スティーヴン・キング「ペット・セマタリー」

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都会の競争社会を嫌ってメイン州の美しく小さな町に越してきた、若い夫婦と二人の子どもの一家。だが、家の前の道路は大型トラックがわがもの顔に走り抜け、輪禍にあう犬や猫のために〈ペットの共同墓地〉があった。しかも、その奥の山中にはおぞましくも…。「あまりの恐ろしさに発表が見あわせられた」とも言われた話題作。
(「BOOK」データベースより)

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この小説が映画化された時の邦題名は「ペット・セメタリー」でした。
ここで登場する“ペットの霊園”の名称は、英語では“Pet Semetery”なので「ペット・セメタリー」が本来は正しい。
ですが、この霊園は地元の子供たちが作った勝手墓場なので、スペルミスして“Pet Sematery”となっている。プーさんのティガーTiggrがTigerのスペルミス由来であるのと同理由ですね。

そのため、小説の題名も「ペット・セマタリー」となっております。
以上、誤入力じゃないんだよの言い訳、終わり。

“Pet Sematery”は単なる子供たちのペットの墓場ですが、その奥をずうっと入った先には、アメリカ先住民ミクマク族の秘密の埋葬地があります。
そこにペットを埋葬すると。
土の中から、死者が還ってくる。

「いままでに、だれか人間をあそこに埋めた人ってのはいますか?」

日本では、遺体はほぼ100%火葬になるので、マイケル・ジャクソンのスリラーとか映画のゾンビみたいに『死体が墓から甦ってくる!』という恐怖が、いまいち実感として掴みがたいところがありますね。
このホラー的要素も、日本人には恐怖感が遠い山火事のように思える。
しかしながら、この小説の本当の怖さは、日本であろうとアメリカであろうと、古今東西変わりない恐怖。

愛する家族を失う怖さ。
そして、一度知った誘惑からはもう逃れられないという、恐怖です。

主人公ルイスがはじめて秘密の埋葬地に埋めたのは、飼い猫のチャーチ。
隣人ジェドの“恩返し”により、バンゴアの新参者ルイスは甦りの魔法を手に入れました。
ドラゴンクエストのザオリク(生き返り呪文)みたいだね!いやザオリク便利。生還率100%。
チャーチと仲良しの娘エリーも、過去の心傷で“死”にセンシティブな妻レイチェルも、これならみんなハッピー☆

でもね。
墓から甦った生き物、まったくもって完全に、同じではないんです。

とまれ、ハンラッティはよみがえった。だがレスターは、二週間後にはまたそいつを射殺したよ。えらく性悪になってたんだ。性根が腐ってたとでも言うかな。しかし、わしの知るかぎりでは、そんなふうに変わったのはあの牛だけだった。たいがいの動物は、見たところ、ただ……ちょっぴりばかになって……ちょっぴりのろまになって……ちょっぴり……」
「ちょっぴり死んだみたいに見える?」

生還率は100%だけど、ちょっぴり、違う。ちょっぴり、臭い。
そしてちょっぴりの確立で、その存在は、邪悪な何かに変貌する。

甦ってきた飼い猫チャーチが生前とは違う性質になった事実で、ミクマク族の埋葬地には不穏なものを感じていた筈のルイス。
きっと、もう二度“Pet Sematery”には近付くまいと思っていたことでしょう。
息子ゲージさえ、トラックに撥ねられて死ななければ。

その手が柩の蓋の溝をさぐりあて、そこに指をすべりこませた。一呼吸ののち——それを逡巡と呼ぶのは適切であるまい——おもむろに彼は、息子の柩の蓋をひらいた。

愛する息子が死んだ。妻はそのショックで、精神のバランスをくずしはじめている。娘エリーも、家庭のゴタゴタから悪い影響を受けている。
その状況を、起死回生一発で打開することが自分に出来るとしたら。
息子をこの手に取り戻すことが自分に出来るとしたら。
家族がもう一度心から笑える日を、自分が得ることができるとしたら。

——その誘惑に勝てる自信が、あなたにはあります?

「いいもの持ってきてあげたよ、マミー!」彼は黄色い声で叫んだ。「いいもの持ってきてあげたよ、マミー!いいもの持ってきてあげたよ、いいもの持ってきてあげたよ、マミー!」

ルイスが息子の墓を暴き(このシーン凄いです)息子の死体を抱えて山奥に入っていった後、息子ゲージが果たしてどんな“何か”になって還ってきたのか。

それは皆さんも、なーんとなく予想がつくでしょ?
そうしたら、ルイスがその後、どうしたのかもなーんとなく予測ができるんじゃないかしら。

だって、一度知ってしまった誘惑を、手放すことはとってもとっても難しいから。
例え悪い結果が待っているとわかっていても、同じことを繰り返してしまうから。
最終ページでルイスの肩に手を置いた、その冷たい手の持ち主の名は、秘密です。

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レビュアー: さくら
さくら
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