アガサ・クリスティー「火曜クラブ」

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甥のレイモンドを筆頭に、前警視総監や画家などさまざまな職業の人々がミス・マープルの家に集っていた。一人の提案で各自が真相を知っている昔の事件を語り、その解決を推理しあうという“火曜クラブ”ができたが…静かな目立たない田舎の老婦人ミス・マープルが初めて驚異の推理力を披露した短篇13篇を収録。
(「BOOK」データベースより)

161222

ポアロ派かマープル派か?と聞かれたら、一も二もなくマープル派です。
というより、エルキュール・ポアロが嫌いなんですけど。なにあいつ。あのベルギー人。あのヒゲオヤジ。
世の中ではポアロの認知度が圧倒的に高く、有名作品もポアロの方が多いのが悔しいわ。おいしいとこだけさらってく小男め!くーっ。

それに比べてマープルさん。オールド・ミスの身上イメージとは反して、イジワル婆さんの香りのしない温和な老婦人。
クリスティー自身がミス・マープルについて評した文章があるので、ちょっと引用しましょう。

ミス・マープルはわたし自身の祖母に、どこか似ているおころがある。祖母もやはり桜色の頬をした色白の老婦人で、世の中からまったくひきこもったむかし風のくらしをしていたくせに、人間の邪悪さというものを底の底まで知りぬいているような人だった。

桜色の頬に雪のような白髪を結い上げ、安楽椅子で編み物をしながらおだやかに微笑むミス・マープルが、初めて登場したのがこの「火曜クラブ」です。
キュートなおばあちゃんのようなふりをしつつ、なかなかどうして。田舎の老婦人はあなどれませんことよ。

「昨年こちらにまいったときのことですが、われわれ仲間で迷宮入り事件というやつを時をきめて論じあうことにしたのです—(中略)—めいめい自分だけが解答を知っている取っておきの迷宮入り事件を、かわるがわる話したんですな——推理力の訓練といったねらいですよ——いったいだれが真相に一番近い推論をくらすかという興味からね」
「それで?」
「じつを言いますとね、われわれとしてはマープルさんも仲間入りをしているなんてことはほとんど念頭に置いていなかったんですよ。むろん、いんぎんな態度はとりましたがね——ああいういいお年よりの気持ちをそこないたくなかったものですから。ところが、ゆかいなことになりましてね。あのおばあさんはなんと、毎回われわれの鼻をあかしてしまったのですよ!」

火曜日に設立されたから「火曜クラブ」
そもそもが飲みっ話の余興なので、舞台には緊迫した雰囲気はありません。
なので読んでいる方もゆったりと構えていられます。

読者のゆったり気分には、ミス・マープルの人間性に由来する処も多し。同じように『会食のテーブルで』『日々の生活を参考にして』『年の功で謎解き』をする安楽椅子女性探偵である「ママは何でも知っている」“ブロンクスのママ”のような姑心も無く、あくまでも控えめな物言いなので、周囲の人がやりこめられる心配もなし。

「こんなへんぴな場所にばかり暮してきたおばあさんだから、とりたてておもしろい経験なんか、したことがないだろうとお思いでしょうにね」

だがしかし。本当はミス・マープルさん。いえジェーン伯母さま。実は安楽椅子に収まって編み物してるばかりではなく、結構色々なところに出かけるアクティブシニアです。
他の長編小説では、趣味のバード・ウォッチングと称して双眼鏡で市井の人々を覗き見る出歯亀精神も明かされたりします。
近所の老婦人仲間と井戸端会議に精を出したりして、実は元気なおばあちゃん。年寄りだって舐めてたら、ケガするぜw

アクティブばあちゃんマープルさんの活躍は、その後のいくつかの長編小説で発揮されるのを待つことにして。
まずは初見の「火曜クラブ」から、お上品な猫を被ってるミス・マープルをご覧頂くのが、さくらの仲間マープル派を増やす一助になるものかと。

作者クリスティーも後ろ盾にせんと、「火曜クラブ」について書いたひとことを引用。

この『十三の事件』は、ミス・マープルを愛する人々にとっては、彼女の真髄を知るに足る一冊ではないかと思う。

まずはここから。「火曜クラブ」から。
世のミステリ愛好家の終わりなき戦い“ポアロvsマープル”にミス・マープルが勝利する日を夢見て。友よ、今こそ共に起ちあがらん!

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レビュアー: さくら
さくら
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