ダーチャ・マライーニ「ひつじのドリー」

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イタリアを代表する作家・詩人・劇作家、ダーチャ・マライーニによる、子どもから読める短篇集。運命なんてはねつけろ!クローン問題をうったえるために国連にいくおばあさんひつじ、サーカス団から追い出されたのっぽの娘スピル、つかまってしまった親友をさがす犬のテレマコ、毛皮にされた母親を助けだすきつねの子トゥトゥ…風変わりな登場人物たちに巻き起こる魅惑の冒険譚10篇。
(「BOOK」データベースより)

まるで、夢のようなお話です。

夢と言っても『信じれば夢は叶う。ドリームズ・カム・トゥルー』の方じゃなくって、まるで夢のように、しっちゃかめっちゃかな、奇想天外な、お話です。

むかしあるところに、王家のキッチンの出身が自慢の、おしゃれで、とてもハンサムなガラスの鍋ぶたがいた。

おしゃれでとてもハンサムな……鍋の、フタ?

破産した王国のキッチンから追い出されたイケメン鍋ぶたが、ステンレス鍋の奥様に悪態をついたり、磁器のティーカップに色目を使って口説き始めたり、いたします。
他の短編でも、キャベツに羽が生えて空を飛んで旅に出たり、靴の中に住む小人がイノシシと命がけの戦争をしたり。

ね?うたたねした時の、不思議な夢を見るようでしょう?

「ひつじのドリー」の原書はイタリアの小学校で教材に使われているらしいのですね。
そこで日本でも“子どもから読める本”として平易な文章と漢字ルビを多用し、読みやすいおとぎ話の体をとっています。

だがしかし。その内容は、なかなかにダーク。

だってほら。羊のドリーと聞いたら、まず何を思い浮かべます?
世界初のクローン羊“ドリー”を連想する方も多いのでは。
その認識は正しい。表題作の「ひつじのドリー」は、クローン羊“ドリー”が、オリジナルの座を奪い合って姉妹(?)ゲンカ。その内にどんどんクローン羊が増えてきて大混乱、哲学者の羊が国連に、クローン禁止法を訴えるスピーチをしに乗り込むような物語です。

One child, one teacher, one pen and one book can change the world!オー!マララー!

表題作以外のお話でも、現代の社会現象が何がしか反映された内容が多いです。児童虐待、モラルハラスメント、動物実験、戦争…。

「足や目は何百もあるんだよ」とサン・ペードロが言った・「どうやってママのを見つけるんだい?」
「においでわかるの」ときつねの女の子が答えた。
「それならやってごらん。うまく見つけられたら、おみやげにベルトをあげるよ」
そう言うとサン・ペードロは若いトゥトゥをきつねたちが殺される場所につれて行った。そこできつねたちがハンマーで頭をなぐられて殺されるのだ。それから機械で皮をはがされ、目と足をとりのぞいて、毛皮になるのを待つ。襟巻き用に顔はとっておくこともある。でもその顔のとんがった、すべすべした目はガラスのにせもの。本物の目は、命がなくなると、くもってしまうから。それらは売られて、牛たちの飼料になる。

とはいえ、この本を読んでいる間は、風刺だの教訓だの余計なことは考えずに、奇想天外な夢の世界に思いっきり飛び込んでしまう方が良いのかもしれません。
教育的な感想文は、ま、ページを閉じてからゆっくり考えても遅くはないからさ。

原書ではどうかわかりませんが、少なくとも日本での発売では、出版社も同様の意向が感じ取れます。
「ひつじのドリー」ハードカバーの帯には、大きく『運命なんてはねつけろ!』と書いてありまして。いーですねこの感じ。アグレッシブで。
これが『現代のイソップ』とか『大人のための寓話』とか謳っていたら、なんだか鼻につくイヤらしさを感じるような気がする。あ、個人的な感想ですけど。

風変わりな登場人物(人物?)たちに巻き起こる、魅惑の冒険譚10篇。
クローン羊と、革靴の夫婦と、羽の生えたキャベツと、コートの裏地と、イケメン鍋ぶたとその他もろもろ。楽しい不思議な夢の世界で、あなたが眠りにつくのを待ってます。

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レビュアー: さくら
さくら
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