中村のん「社長、その服装では説得力ゼロです」

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人は意外なほど、自分の姿が見えていない。お客に向かってトレンドを語る部長は、時代遅れのジャケット姿。勘違いした「勝負服」で、パワーを半減させている上司。しなやかな黒髪を捨て、パサパサの茶髪になりたがる若者たち―。第一線のスタイリストが、大人の身だしなみの常識、非常識に切り込む。すり寄るショップ店員への対処法、全身姿見の効用、靴を買うときの心得は。「似合う」の仕組みから分かる一冊。
(「BOOK」データベースより)

syatyosono

この本がビジネス書のジャンルに入ったのはタイトルの勝利という気がしないでもない。

実際のところでは『社長!』という呼びかけから想像されるような“勝てるビジネスマンのファッション指南”という内容は薄めです。あ、別に全くない訳じゃないですが。
フリースタイリストという著者中村のんさんの仕事上、登場するのはいわゆるギョーカイ的な話が多めです。いや多分ね、著者自身は広く一般的な話をしているつもりなんだろうけど、なにせ日常過ごす場所がソッチ方面ですから。
新橋のサラリーマンとは職場環境も生活スタイルも、ファッションの基準も違うよなあという気がしないでもありません。人間、立ち位置によって見える景色は違う。

とはいえ、それが『じゃあこの本は役に立たないね』ではありません。
なかなかに含蓄のあることを綴ってらっしゃいますよこの方。『人間見た目が大事』を基本的に肯定し、じゃあなんで、なんのために『見た目』が必要なのか?を書いています。

例えばひとつのエピソード。

とある男性ファッション雑誌の若い編集者が、メンズスーツのデザイナーにインタビューに行った時のこと。
インタビューのテーマは『スーツのスタイリッシュな着こなし』だったらしいのですが、若き編集者が着ていた服は首が伸びきったTシャツにダボパン。
すごく暑い日でもありましたし、編集者という仕事上ではスーツ着用が必須ではありません。

でも、デザイナーは彼の姿を見た途端「すっかり話す気が失せた」そうです。

「もちろん、僕がする話は、最終的には読者に向けてのものだとわかってる。でも、質問するのは彼だから、とりあえず僕は目の前にいる彼に向けて話さなければならない—(中略)—なにも完璧な着こなしのスーツ姿、まして、僕の作ったスーツを着てこいと言いたいわけじゃない。せめて、きれいなシャツでも着て来てくれれば成り行きは変わったと思う。こういう場に、こういう格好をして行ったら、相手はどういう気持ちになるものか、ファッションに関わってる人間がそんなことも読めないようじゃしょうがない」

ファッション雑誌、デザイナー、編集者、インタビュー…と、舞台設定は若干特殊なれど、上のエピソードが言わんとする事にはうなづける処が多いでしょう?
“ファッションに関わっている人間”じゃても、同じ事が言える。さらには、服装だけの話じゃなくてもね。

ビジネスにもギョーカイにも関わりなく、一般的なファッション関係の話を書いている箇所も多いです。
個人的に至極納得できて笑えたのが、『ナチュラルストッキングを拒む女たち』の章。
半透明な肌色ストッキングを穿く女性と穿かない女性。それぞれのファッション方向性の違いから、女性の生きかたの違いをさぐる章です。

社会人になったから、子供を生んだからをきっかけに、何の疑いもなくストッキングに脚を入れることができる人が、ちょっと羨ましい。さなぎが蝶になるように、少女から大人の女へと、すんなり移行していけてる、そんな風に見えるから。
「たかがストッキング」に反発する性格は、他のあらゆる部分でもちょっとした「闘い」を生むことになり、それが「女としての人生」を、生きづらいものにしていると、どこかで感じてもいるからだ。
ストッキングを穿く人生、穿かない人生。向こうが透けるほど薄い、爪で引っ掻くだけでピッと破れる布一枚が、女の立ち位置を微妙に変える。

ちなみに著者中村のんさんには双子の息子さんがいらっしゃるのですが、その子がまだ幼稚園児の頃。
登園中にかたっぽの息子さんが、お母さん(著者)の顔を見上げて

「ママも、みんなのお母さんみたいに、こんど、とうめいのくつしたはいて」

男というものは例え幼稚園児であっても、肌色ストッキングに魅力を感じている。
世の男性の肌色ストッキング信仰の根源を見たり。ああ男たちよ、三つ子の魂百までも!

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レビュアー: さくら
さくら
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