夏樹静子「椅子が怖い」

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「夏樹静子のお葬式を出しましょう」―苦しみ抜き、疲れ果て、不治の恐怖に脅かされた闘病の果てに、医者はこう言った。時には死までを思い浮かべた鋭い腰の疼痛は、実は抑制された内なる魂の叫びだった。そして著者もいまだに信じられないという、劇的な結末が訪れる。3年間の地獄の責め苦は、指一本触れられずに完治した。感動の腰痛闘病記。
(「BOOK」データベースより)

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2016年3月22日。
今朝、新聞を開いたら、夏樹静子さんの訃報がありました。

2016年3月19日、心不全のため福岡市内で死去。77歳没。

新聞の訃報をきっかけに、夏樹静子の著作をとりあげようかと思いましたが、生憎いま自宅に夏樹静子の本が一冊もないのです。
そこで、うろ覚えではありますが、確か一番最近に読んだ(はずの)夏樹静子本。
ミステリでもサスペンスでもなく、夏樹静子のリアルサスペンス。腰痛放浪記。

この本を読むと、こころとからだはつながってるんだなぁ、としみじみ思います。
夏樹静子が3年間、原因不明の腰痛に苦しめられた闘病記。
前半は彼女の腰痛の苦しみがこれでもか、これでもかと綴られています。マジ、読んでるだけで痛い、痛いよママン。

数年間、色々な医者・整体etcを訪ね歩いた後、実は彼女の腰痛の原因は肉体的なことが理由ではなく、執筆のストレスに由来する精神的なものが理由であったと判明します。
医師が提示した治療法は「夏樹静子のお葬式」
彼女が作家であり続ける限り、執筆のストレス⇒腰痛は治まらない。そこで“作家・夏樹静子”を殺してしまおうと。

夏樹静子本人としたら、自分が執筆にストレスを感じているとはつゆとも思わない。
小説を書くことに対して、自分では喜びを感じている(つもり)
医師が提示した治療法に対しては、最初はひどく反発します。
その後医師の交流と、断食療法などの他治療を経過することによって“作家・夏樹静子”との決別に至ることにはなるのですが・・・。

いま調べてみたのですが、彼女が腰痛に苦しめられていたのは1993年~だったらしいのですね。
その当時は「心療内科」という口あたり柔らかな診療科目名も存在せず、こころの病を持った人が行くのは「精神科」でした。
いまでも精神科は存在しますけど、20世紀中には「精神科」というとどうしても暗いイメージがつきまとっていましたよね。

「心身症」という言葉も、私が生まれて初めて聞いたのは1982年の日航機墜落事故でした。
「精神科」も「精神病」も「心身症」も「鬱病」も、その昔はどこか遠くの、誰か知らない人の話として認知されていたような気がします。
いまも昔も、人のこころってそうそう変わってるはずはないのですけどね。それだけ恥ずべきもの、隠さなくてはならないものとされていたのでしょうね。

そんな時代に「あなたの腰痛の原因はこころの病です」と断定されたら、そりゃあ反論もしたくなるだろうな。
腰痛以外には執筆のストレスを感じていない訳なのだから。

夏樹静子は結局、その診断を受入れ「夏樹静子のお葬式」ではなく「夏樹静子の入院」として、1年間の休筆を行ないます。
ストレッサーを排除するという目的では、お葬式としてばっさり“作家・夏樹静子”と決別する方が有効だったのだろうとは思いますが
治療観点で言えば、葬式であっても入院であっても、彼女自身がストレッサーと、自らのストレスを自覚する事が快方の道筋であったと思うので、どっちでも良かったのかしら。
それとも、休筆を経ても腰痛が解消しなかった場合には、改めて「夏樹静子のお葬式」を提案していたのかしら。

休筆の後、夏樹静子は作家として復帰し、いくつかの作品も書いてらしたようです。
私は拝読したことがなく、近年の著作については存じません。
どちらかといえば最近では、裁判員裁判の関係でのお仕事が多かったようではありますけど。

今回の訃報を受け、休筆から復帰した後の作品も、これから読んでみようと思うさくらでありました。
日本の女流ミステリ作家の大御所に敬意を表し、日本のミステリいちファンとして心からご冥福をお祈りします。
合掌。

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レビュアー: さくら
さくら
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