酒井順子「携帯の無い青春」

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黒電話の前で、「彼」からの電話を待つ。そんな、今の若者には信じられないであろう、青春時代の思い出を持つ「バブル」世代。女子大生ブーム、ワンレン、ディスコ、竹の子族、カフェバー、アメカジ、ぶりっ子など、振り返ると、あの頃は、恥ずかしかった…。でも、「良い青春時代だった」とも、思えるのです。イタくもしみじみするエッセイ。
(「BOOK」データベースより)

そういえば、今の親世代は自分の子供に「全くもう!いつまでも長電話して!」と怒ることってないんだろうなあ。
キャッチホンが世に普及したのは、昭和の女の子たちが毎夜自宅の電話を占領していたためというのが大きな要因ではなかろうか。

せっかくオプション料金払って導入したキャッチホンだというのに、当の長電話女子たちはキャッチの『プルル…プルル…』も無視して電話を続けていて、他の兄弟への電話が受けられなくて翌日に大ゲンカ、というのは、私 さくらの高校生時代の思い出です。
今じゃスマホが1人1台、受話器の奪い合いになることもありません。
親の視線を気にしつつ、恋バナで声をひそめる必要もありません。
そもそも、今の女子高生は電話をしない(ソースは我が娘)LINEがあれば、それで良し。

時代の流れを感じつつ“携帯がなかった青春”に思いを馳せようか。
酒井順子がご案内役で、行ってみようかバブル期ツアー。

——とはいえ、この本の出版は2007年。ちょうど10年たった今では既にタイトルの“携帯”ですらガラパゴス化しているという事態。
風俗(特殊な意味合いではなく、一般的な)をネタに本を出すのって、発売した時点から古びていく運命にあるのがおっそろしいですね。

そして今、改めて思うのは、「やっぱりあの時代に、携帯電話が無くてよかった」ということなのでした。家にいて、誰かから電話がかかってくるのを、ただ「待つ」時間。あの時間だけは、浮かれた時代の中でも常に透明さを保ち続けていたのであり、その透明さは、携帯時代の若者にはわかり得ないもの。あの時間のことを考えるだけでも、「良い青春時代であった」と、少し思えてくるのでした。

2007年当時に青春時代を迎えていた、いま20代後半あたりの男女は。
「やっぱりあの時代に、スマートフォンが無くてよかった」と、いつか思う日が来るのか。

酒井順子曰く「ほとんど肉体的な快感に近い『懐かしい』という感覚」を味わうには、たったの10年ぽっちじゃ駄目かしら。

「携帯の無い青春」では、酒井順子が小学生から大学卒業、昭和40年代から昭和の終わりあたりまでの、正に自身の青春時代に流行った風俗を採り上げて書き綴っています。
いやー。各章のタイトルを見るだけで、酒井さんのちょい後輩年代としては「ほとんど肉体的な快感に近い『懐かしい』という感覚」を覚えますわ。

「ピンクレディー」「ユーミン」「竹の子族」「ドリフと欽ちゃん」「口裂け女」「アメカジ」「YMO」「ワンレン」「角川映画」「ペンパル」「ディスコ」あーあーあー!ちょっとそこの4,50代の皆さん!読みたくなるでしょ?そして自身の思い出を語りたくなるでしょ?
肌身に彫り込まれた刺青を見せ合うような懐かしさの交歓。当時のアイタタタな思い出も含めて。確かにそれは、ほぼ肉体的な快感に近い。

で、中でも女子限定で語りたくなるのが「オリーブ」の章ですよ。

雑誌に載っても大丈夫な校則で、かつ都会的でお洒落な学校というと、青山学院とか慶応女子校とか成城学園といったところが常連校でしたが、その手の学校の少女達の都会的なお洒落ライフは、読者の少女達にとっては実に刺激的なものでした。それまでの少女雑誌は、たとえば—(中略)—しかし「オリーブ」においては、実在の女子高生のお洒落な生活を、読者は実感することができたのです。

上記のようなことを言って『私は一般庶民ですので都会的なお洒落ライフなんぞとてもとても』みたいなイメージに偽装してますけど、騙されちゃ駄目よー!酒井順子は、高校生当時オリーブにコラムを書いていた“マーガレット酒井”さんですからねー。
通っていた高校は、本文中に出てくる学校名にはあえて除外の立教女学院高等学校。キミ、キミ自体が都会的でオシャンティーだって。

ですが、雑誌「オリーブ」の近くにいようと遠くにいようと、リアルな生活が都会的かつオシャンティーであろうとなかろうと、かなりな範囲の同年代女子の心に「オリーブ」的ガーリーが染み付けられたことは、わかります。

オリーブという雑誌の、役割。それは、「ガーリー」という概念を、世の中に認識させたことでしょう。ひな菊の花束、ガラスの小瓶、刺繍のハンカチ、シルクのリボン……。オリーブの洗礼を受けた私達は、既に少女ではなくなった今も、どこかでガーリーさに対する愛着を抱きながら、生活を送っているのです。

いまでもついアニエス.bに心惹かれてしまう私も、オリーブ的センスが染み付いてます。さすがにもう買わないけど。でもほんとは欲しいけど。
肌身に彫り込まれた刺青のように、染み付いた思い出。

ちょっとそこの4、50代の皆さんよ。特にかつてのオリーブ少女さんよ。
この本読んで、そして自身の思い出を語り合ってみないかい?
「携帯の無い青春」によって呼び起こされる懐かしさ、確かにそれは、当時のアイタタタな過ちも含めて、ほぼ肉体的な快感に近い。

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レビュアー: さくら
さくら
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